第117話 変身! それっぽい雰囲気

〜エルフ〜


一昔前の取り調べ室みたいな部屋で、机の上に置かれている画鋲を見つめる3人。


「なにこれ…」


「これはヤベェぞ。」


「具体的には…?」


「ケルベロスを逃がさない最終兵器。」


そう言う事じゃ無くて、効果を教えてほしいって事だよ!


目から光が失われた女神様をマッサージしてる最中に皿洗いを終えたチャラ男が近づき、

手に持っていたルービックキューブ程の大きさの箱を、これの存在忘れてたわ!と渡してきた。


その中身が謎の画鋲。


「どんな、効果…」


「刺した相手をその空間に固定するアイテム。

どんな方法でも転移できないし、この場にいるリースに刺したら現世に戻らない。神でも無理。」


神の力まで無効化とか、この画鋲めっちゃ強いな。


「じゃあ、次ケルベロス来た時に仕留める?

出てきた場所によるけど、被害大きすぎないかな?」


「たしかに…」


今はタイマー動いてるし、

門の近くに転移する私を狙ってくれれば、自衛隊さん達を避難させるだけで済むんだけど…


最悪のパターンは、襲撃に対応してる間に他の場所に現れる事。

もう被害は考えるまでも無くヤバイよね。


「そうだ、この際だし装備も増やしとくか!」


「そういえば、リースちゃんはどんな効果の装備を着てるの?」


「殴り聖女。」


「…それだけじゃ、わからんのだが。」


あー、確かに装備決めの時にそんなテーマ言ってたな。

確か、回復系に補正が掛かる装備だったはず。


「簡単に言うと、タンクとヒーラーの割合が6対4ぐらいの装備だ。」


「少し分かりずらいけど、まぁわかったよ…

その装備なら、加える装備は攻撃手段になりうる奴がいいかな?」


追加する装備か〜、

確かに攻撃手段が、メイスしか無いのはちょっとなぁ。魔法はあるけど、弓とか銃とかの遠距離に対応できる手段があればいいかも。


「遠距離…」


「お!遠距離か。

チャラ男!いい感じの装備ある?」


「もちろん、だけど深刻な問題があってな…」


チャラ男の顔を見る限り、ヤバい問題なのは間違いない。


例えば、

弾1発を撃つのに魔力を大量に消費するとか、当てるのに練習が必須とか、そもそも強力すぎて使えないとか

考えればいろんな可能性がある。


「どんな…?」


「聖女セットに見た目的に合いそうなのがねぇ…」


そこかよ!


「そこかよ!」


気が合うね女神様。


「見た目は重要だぞ。

想像してみろ、聖女が弓を持って敵を射る姿を。」


私が守護者モードで弓を射ってる姿…

似合わな!


「リースは気づいたようだな、壊滅的に似合わないんだよ。」


わかったよチャラ男。

あの服装なら、杖を持って背後に魔法陣を出して魔法を撃つ方が似合う。


「やっぱり、魔法…?」


「そうだなぁ…あっ!」


何かを思い出したチャラ男が、アイテムBOXに手を入れて何か探してる。


「あった、

これなら見た目よし

遠距離…まぁよし

実用性よし

はい完璧!」


取り出したのは赤青黄色の3つの丸い水晶。

その水晶を触ると、私の周りを不規則に飛び始めた。


「飛んできた瓦礫を自動で弾いてくれて、近くにいる敵も自動で攻撃!

もうめっちゃ強い装備だ。」


自動で攻撃!

もう響きからして強い。


「リースも気に入ったみたいだし、決定で。」


これを使うのワクワクする。

エルフボディが気に入ったのか、私も見た目好きだしカッコいいなって。


「新しい装備は決まったから、時間動かして大丈夫かな?」


「おっけー…」


水晶が飛んでるの可愛い。


「襲撃は9時から始まるから頑張ろうね。

私達が全力でサポートするから!」


「うん、頑張る…」


体が透明になり始めた、現世に帰るのだ。



「待て、返す前に遠距離装備はどうした?」

「……」

「ロリ女神、お前忘れてたろ?」

「…ごめん。」


ーーーーーー


ガサガサ


んぅ?


おかしいな。

朝起きた時は抱かれてると思ったんだけど、今は心地良い圧迫感と暖かさを感じない。


「あかにぇ…」


噛んだ…

現世の私は寝起きだから仕方ない。


「ごめんなさい、起こしてしまいましたね。」


朱音さんは着替えてる途中だった。


「なに、してるの…?」


「訓練、みたいですよ。」


「こんなに、早く…?」


絶対に嘘だ。

朱音さんが私を見ない、隠したい事があるはず。


(リース、エルフだってバラしたの目の前の子だろ?

いっその事さ、守護者って事を教えて協力して貰えば?)


流石に守護者をバラすのはちょっとなぁ…

リスクが大き過ぎない?


(エルフって事を受け入れてくれたんだろ?

なら守護者も大丈夫だって。)


本当か?

嫌われたら怨むから、私の称号に神殺しが追加されるからな!


(フッ、リースに神殺しはできねぇよ。

少なくとも上位神はな。)


ムカつく…


やべ、チャラ男のせいで朱音さんの準備が終わりかけてる。

どうやってバラそう、やっぱり守護者の格好に着替るが1番かな。


「朱音…」


「な、なんでしょうか。」


「こっちみて…」


私を見つめた。


「そのまま…いくよ?」


「なにを、わかりました。」


チャラ男、頼んだ。


足元に魔法陣が展開され、少しずつ上に上がってくる。

魔法陣が通ったところから守護者の衣装へと、ゆっくり変わっていく。


いや、こんな演出なかっただろ。


(変身!って感じの雰囲気が出るだろ?)


それっぽい雰囲気だしたかったのか…


胸の辺りまで衣装が変わった時には、目が点で口が半開きになってた。


「完成、守護者…」


「……」


あれ?反応がない。


「あかね〜…」


顔の前で手を振っても全く反応しない。


(リース、その子気絶してるぞ。)


え?

…本当だ。


守護者カミングアウトの衝撃は、かなり強かったみたいです。

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