第56話 魔法を使える者達がいた

〜エルフ〜


「おーい」


zzz


「おーい、リースたん」


「んぅ?」


「起きた、現実で寝てるのに此処でも寝ちゃうなんて可愛いのぉ。」


神様が何か言いながら肩ゆすられて起こされた、だけど目の前の女神様の寝顔が綺麗すぎて思わず見惚れてたから何言ってるか殆ど聞きとれなかった。


あ、女神様も起きた。

目の色は時間で変わるのかな、今はエメラルドみたいな色。


「おはよ…」


「おはよう…リース。」


「儂は無視?」


「軍ちゃんは帰ったのか?あ、猫耳取れてる!」


猫耳が取れて嬉しそう。


「ヤッター!」


語尾ににゃんが付かなくなったのが嬉しいのか、それとも猫耳じゃなくなったのが嬉しいのかわからないけど。


「軍服は帰ったぞ。それと罰じゃが無しになった、儂の管理してる世界で問題が起きてしまってな、起きてからリースたん忙しくなるぞ。」


問題なら起きてたはずだけど、襲撃の事だよね?


「全くの無関係ではないがそれではない、魅了野郎じゃ。」


「うわ…」


「奴の能力が格段に上がったんじゃ、今ならリースたんの指1本分くらいの強さがある。どうやって手に入れたかは不明じゃがな。」


「ふーん…」


指1本分ってわかりやすいような、わかりずらいような…

指1本で倒せるって事なのか、指1本分のスペックって事なのか、というか指1本分のスペックってなんなんだろ、やばい頭がこんがらがってきた。


「それで、精神汚染耐性を持つアクセサリーをリースたんがお世話になってる家の家族全員に与える必要がある、護衛の人達にも渡さねば面倒な事になるからの。」


「ん…」


もしかしなくても今の状況ってかなり悪いのでは?


「悪いぞ、これ以上悪化すると魅了された人は自分で考えなくなるからゾンビ映画みたいになるぞ。」


「流石にそうなったら僕らの力使ってもペナルティ受けないんじゃないか?リースの保護だけしてればいいと思うんだけど。」


「ダメじゃぞロリ女神。リースたんは優しいから絶対に見捨てないぞ。」


「……うん。」


「間が空いてたぞ。」


私はできるだけ助けたいけどエルフボディは白仁家の皆んな以外はどうでもいいみたい。


「まぁ、儂の協力者にも連絡してあるし儂らでサポートするから安心するのじゃ。」


「うん…」


今までもどうにかなってきたし今回もなんとかなるでしょ!


「良い返事じゃ、なら早速アクセサリー作るぞ!」


「え…?」


「あー、でもアクセサリー使うのは勿体無い気がするのぉ…付箋でいいか、粘着力上げた付箋。」


あっ…

またあの不味い奴飲みながら魔力込めなくちゃいけないのか…


「さぁ!リースたんこっちに来るんじゃ、魔力を込めるんじゃ。」


「…………」


ぐすん…



護國友美もりくにともみ


昨日は少しだけハプニングはありつつもいつも通りの平和な日だった。

今日も楽しく平和に思っていました。


「時間か…」


いつもの様に早起きし今日のスケジュールを確認する。

今日は上司からの連絡が無かった、時間にはうるさい人だし問題でも起きたのだろうか。


ブーブー


「!」


同盟者であるブラックから連絡だ。


「はい、護國です。」


『これからメールで送る場所に避難したまえ、詳しい説明は後ほど行う。』


「は?」


『急げ、全てを失うぞ。』


これは私の人生で1番の戦いの始まりになるかもしれません、家族は勿論ですが白仁家の皆さんそれにリース様の為にも直ぐに行動に移さなければ!


『なんてな、今すぐじゃなくていい。』


おい!どういう事だ、いくら同盟者だとしても許さない、長年の親友だったらボロクソ言ってる所だ恩があるから言わないけど。


「ちょっと、ビックリさせないでください。貴方が言うと本当になっちゃいますから。」


『何言ってる、急ぎじゃないだけで避難は本当だぞ。』


「え?」



ー怒り爆発中少しお待ちくださいー



『落ち着いたかね?』


「誰のせいですか、誰の。」


真面目なら最初からふざけないでほしい、いや冷静になって考えたら私もかなり悪いな。


『説明したいんだが…いいかね?』


「あ、はいどうぞ。」


ブラックさんの説明を要約するとこうだ。

英雄派が昨日の夜から急激に勢力を拡大、守護者派から鞍替えなども起こり日本の上層部が荒れているらしく、その争いに巻き込まれない様に避難が必要との事。

権力争いなど興味はなく詳しい事も説明してくれたが全てを理解できたかは怪しい。


『わかったかね?』


ただ1つだけ気になる事がある。


「なぜ白仁家の皆さんも避難しないといけないんでしょうか?」


権力争いだけなら私だけで良いはずなのだ、魔法使いになった朱音様ならともかく全員連れて行かなければならないなんて事はないはず。

朱音様を呼び出す為に白仁家の皆さんを人質にする事も考えられるがそれこそ他の権力者に付け入る隙を与えるだろうし。


『守護者が指名手配された。』


今のブラックさんの声は地声ではない変化がない機械音声に近いのだけど少しだけ低くなった気がする。


『それは私の一声を無視して行われたもの、君は私が普通の人ではない事は知っているはずーー』


普通の人は多分権力的な意味だろう、ブラックさんに取っては一国の首相ぐらいなら普通の人扱いなんだろう。


『私は違和感を覚えた、過去に私の指示を無視した者は居たが今回は違う。魔法が絡んでいるのだから。』


「魔法が?」


『魅了魔法と呼ばれる。過去に存在した偉人の中には限定的だが魔法を使える者達がいたーー』


え、昔から魔法が存在していたの?


『魅了魔法は練度にもよるが人を奴隷化する事もできる、それ程まで危険な魔法だ。』


「まさか、その魅了が……」


『君の想像通りだ、解決するまで私の言う場所に避難してくれるね?』


「もちろんです。」

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