第34話 閑話:とあるマッチングな出来事
俺と亜南の仲がクラスのみんなに強制拡散されていたその日。
単なる友人に格下げした安川が、とあるマッチングを果たしていたらしい。と言っても、それを仕掛けたのは亜南らしく本人曰く、
「や、ウチって恋の救世主だし」
「はあ? お前がか? 初耳だぞ」
「それはそうだし。だって陽斗って、自分ばかり大好きな野郎で他人の恋とか全然興味も関心も無いじゃん!」
「……いや、それはそうだろ」
「ウチはウチで、誰かさんがかき乱した恋路を別の形で成立させたに過ぎないし? 全然大したことしてないもんね」
――などなど、大したことしてないと言いながらも、亜南はかなりのドヤ顔を俺に見せつけた。
それはともかく、安川を振ったことにほんの少しだけ気にしていた亜南が彼の相手に選んだのは。
「オ、オレでいいんすか?」
「はい〜全然大丈夫です! 無害だし何でも言うこと聞いてくれるって彼女から聞いてますので」
「オレはあいつと違うんで、何でも聞きますよ!」
「はい、じゃあ――放課後は毎日、一人だけで個室に来てくださいね!」
「うひょー!!」
安川はかつて亜南に告り、見事に玉砕を果たした。そんな安川は俺と違い、素直な男子。
従順な男子を希望していた裏風紀な待田さんに対し、亜南自ら推薦をしてあげたのだとか。
俺としても亜南と姫野にしめられた待田さんとその取り巻き女子たちがどうなったのか気にはしていた。
だが亜南の話を聞く限り、二人とも上手くいきそうでホッとした。
「――へえー。安川が彼女とね。俺が知らないだけで、実は他にも世話してるのか?」
「エっヘン! こう見えて優秀だし! 褒めて褒めて!」
普段は油断も隙もないこいつが、珍しく俺に自分の頭を差し出してくる。頭を勢いよく下げたことで、角度的に亜南の胸元が俺を含め近くの女子たちにも見えているが、阿南は気づいてもいない。
頭を撫でてほしいということなのだろうが、このままうかつに手を近づけると、教室から追放されかねない。
亜南に手なんか近づけたら、今まで味方だった女子全てから嫌われるだけでなく、敵と認定されてしまうおそれがある。
なので俺は、亜南の頭を撫でることなくチャイムが鳴るまで視線を外して放置した。
「へたれ野郎め。にゃろう……覚えとけよ」
何か呟いていたが、とりあえず女子や男子を敵に回すことなく放課後を迎えられるようで安心だ。
幸先のいい状態で放課後の勝負を迎えられる。
胸に気を取られずに済んだ――はずだったのに。
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