第25話 蹴りのち、気持ちスイッチ
「うぐぐぐ……も、もうやめ……やめろって!!」
「陽斗ごときが何生意気言ってんの? さっきまでハーレム満喫してたくせにさ」
「だから、ハーレムじゃないって言って……ひっひぃぃ……も、マジでやめて」
「気持ちいいくせに! 我慢なんかしないで出せばよくない? 出さなくてもサイズ大きく出来るだろ? ねえ?」
何たる事態、何たる屈辱感。
しかも亜南が今やっている行為は、俺だけでなくよりにもよって――。
「え、嘘……。何でそんな行為が出来るわけ? 仮にもあなた、陽斗君の幼馴染なんじゃないの? ちょっとどころじゃなくて、陽斗君が可愛そう……」
亜南に取り押さえられるまで、俺をどうにかしてやろうとしていた待田さんでさえ、亜南がしている行為に口を押さえて絶句中だ。
「汚らわしい行為の光景をどうして見なくちゃいけないの……」
「本当にね……」
などなど、俺を押さえつけていた女子たちからも悲鳴ならぬクレームの嵐が飛び交っている。
待田さん率いる風紀委員の女子たちは、姫野によって拘束されている状態。そんな状態なのに、どういうわけか亜南はわざと見せつけるようにして行為に及んでいる。
「そ、そろそろまずいことになるんだけど~……いい加減力を抜いて解放してくれ」
「はぁ? まずいことにってことはさ、ある意味快感状態に突入しそうってことだろ? 正直に言え!」
こいつ、俺が全く動けないことをいいことに。
「そ、そのとおりだ。だから不公平感を無くすために俺の足だけでも解放しろ!」
「あーはいはい、要するに陽斗はウチの箇所を思いきり蹴りたいと。そういうこと?」
「そんなこと言って無いだろ……足だけでそんなの――」
「とか何とかほざいてる陽斗はもうすぐ爆発する件~! というか、別に陽斗の下手な足蹴りなんかで気持ち良くなんかなりませんけど?」
くそぅ、こいつめ。
こんな一方的に俺の股間を足蹴りしておいて挑発するなんて、何て奴だ。
亜南は俺の体を二人掛けのソファに縛っている。俺が動かせるのは顔だけで、現時点では足もひもで縛られている状態だ。
そんな状態の中、亜南は動けない俺の足と自分の足をぶつけてきた――かと思えば、奴は足蹴りを開始。
足蹴りだけでは満足できなかったらしく、今では俺の股間をめがけて蹴りまくるという、いわゆる【電気あんま】略して【電マ】という"遊び"を仕掛けてきた。
「うっうむむむぅ……」
そして今、まさに俺は非常にまずい状態にあり、悪いことをした待田さんたちも思わず同情と憐みの目を向けている――という時間が流れまくりだ。
「仕方ないなぁ。佐紀ちゃん、その子たちに"約束"を取りつけて帰しちゃっていいよ!」
「うん、分かった。そっちはこのまま?」
「んーもう少しで陽斗のスイッチ入りそうだし、楽しもうかなぁと」
「……見届けようか?」
「それもいいかも。佐紀ちゃんにも手を出そうとしてた奴だし、お仕置きしようよ!」
姫野と亜南が何やら悪い話をしている。
しかし俺の全身は動かせないし、両足も解放されるか微妙になってきた。
姫野と亜南の話が終わると、姫野によって待田さんたちは一斉に部屋から出ていく。その間、俺は何も出来ないまま放置された。
だが、
「ほい、お待たせ。陽斗はこのままが嫌なんだっけ?」
「ふ、不公平にも程が――」
「……じゃあ解放してあげるけど、条件次第だなぁ」
「な、何でも聞く!」
おそらく今は夕方でもうすぐ下校時間。
それなのに体が動かせないうえに、亜南のエンドレスでピンポイントな急所蹴りを喰らうのはあまりにも理不尽すぎる。
条件がついてもいいから、せめてこいつにも俺が喰らったエンドレスな蹴りを喰らわせてやりたい。
「条件はさ、簡単なんだけど~女遊びがすぎる陽斗に約束が出来るかどうかなんだよね」
「するする!! 出来るっての!」
「……じゃあ、やらせてあげてもいいかな。でもどうしようかな?」
「は、早く自由に! トイレに行きたいんだよ!!」
トイレはもちろん嘘だが、亜南を足蹴りにするつもりもない。だが全身が自由になれば暴れることが可能だ。隙を突いて俺の全力でこいつを押さえつける……予定。
「……まぁいいか。じゃあ陽斗。解放して少しでも妙な真似をしたら、帰さないからね?」
「うんうん、何もしないって!」
「じゃ、ひもを緩めてあげよう」
よし、これなら――。
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