第24話 救世主と放置プレイ
「さぁて、と……陽斗君、そろそろいいかなあ?」
「な、何がでしょう?」
「もちろん、もっと激しく先の方に進める身体検査だよ。それさえ済めば、あんな変な女なんか目じゃない……」
非常によく分からないけど、待田さんの目が完全にイって――ではなく、居座ってるじゃないか。
しかし悲しいことに、全身隈なく押さえつけられている俺に一切の反撃なんて出来るはずも無く、どうにも出来そうにない。
「わーわーわー!! 待田さん! じゃなくて、ゆかりさん!! 駄目だって! こんな学校の中でやることじゃないって!」
「声なんかあげちゃうんだ? 可愛いね、陽斗君は」
「ふふっ」
「お子様、ですね。クスッ」
待田さんの言葉に呼応するようにして、俺を押さえつける女子たちからも笑いが漏れている。
何たる辱め、何たる俺の弱さ。
こうなったら何もかも受け入れて身を委ねてから対策を考えるしか――
――と、そこに。
ドンッ、とした大きい音と同時に部屋のドアが勢いよく開いた。俺は女子たちに羽交い締めにされていて見えないものの、明らかに空気が変わった気がする。
「ふーん? 誰か知らないけど、風紀委員の部屋を蹴りで開けるなんて頭おかしいんじゃないの?」
ああぁ、待田さんがダーク化してる。
「それは悪かったな。でも、これくらいのドアなら楽勝なんでね」
この声は姫野か?
まさかの救世主が男の娘の姫野だとは意外過ぎる。
「どこのクラスの誰? 陽斗君と私の邪魔をするつもりなら……潰すけど?」
「あはは、こわっ。悪いけど自分はどこのクラスでもないし、そいつのことは好きにすればいいんじゃないか?」
いやいや、待て待て。
助けに来たんじゃないのか?
「ただドアを蹴破りに来ただけとか、意味不明だね。それとも、どこの誰とも分からない君が私の相手をしてくれるのかな?」
「いいや。あんた、すでに封じられてるよ」
「はぁ? 何を――え!? くっ、うっううっ……! な、何で、いつの間にこんな……」
何が何だか分からないうちに、目の前にいた待田さんは偉そうな椅子にひもか何かで縛られている。ついでに言うと、俺を押さえつけていた女子たちは姫野の素早い動きで同じく拘束されていた。
「へ? 一体何が起きたんだ? ――って、はあああ!?」
女子たちからの羽交い締めが解消され、自由になれた――かと思いきや、何故か俺の体は部屋にある二人掛けのソファに寝かされ、ひもでぐるぐる巻きにされている。
見事に天井しか見えず、右も左も確認出来ない姿勢だ。
姫野の顔が近くにあったので顔を見ると、さぁね。といったポーズで知らん顔。待田さん率いる他の女子たちの姿は見えないが、動きを封じられたままなのか静かだ。
助けられたのに別のやり方でこんな真似をする奴は――
「まさかだけど、すぐ近くにいるんだよな? 亜南!」
「…………いるけど、それが何?」
「何って……いや、救世主が何でまたこんな真似をするんだよ!」
「や、何かズルいし。だって今まで風紀委員の女子とハーレムしてたんでしょ? それなのに無条件で助けろとか、あり得なくない?」
何言ってんだこいつ。
どう見てもハーレムじゃなかったし、自由を奪われていただろ。
「あり得なくねー! お前の方があり得ねーだろ。こんな、俺を縛ってどうするつもりなんだよ!!」
姫野を連れて来てくれたのを評価してやろうと思っていたのに、こいつは。
「どうもしないけど?」
「はっ?」
「縛ったからって何かしてくれると思ったら甘いんだよ。陽斗はね、甘いの!」
これはまさか、一番タチの悪い放置プレイなのでは。
「ふふふーん。どうしてやろうかな?」
「おい、やめろ!」
「ご希望をどうぞ? 見せつけてやろうよ! そこのヤバい女子たちにさ」
「お前がヤバいだろ!」
期待した俺がバカだった。素直に助けに来てくれるなんて今後は一切思ってもいけないし、口に出しても駄目だ。
「んふふー。陽斗にもダメージを与えつつ~部屋にいる女子たちにも見せつける~。うん、どれがいいかなっ」
亜南の楽しそうな歌声がデスボイスに聞こえるのは、気のせいだろうか。
放置プレイから一転して何を始められるのか、すでに頭が痛い。
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