第22話 風紀乱れ男子、拘束される 2 亜南視点
「ふぅ~、あっぶねー。ここまでくれば……」
「何が危ないの? 安川くん」
「何って、
「はい、空上です。陽斗が何かあったのかな?」
「そ、それはその……」
◇◇
夏休み登校日。陽斗とはいつも通り一緒に登校せず、教室の中でも特に構わずに過ごしてきた。いつも顔を合わせているし、せめて学校くらいは自由にさせてあげるという優しい気持ち。
それなのに気付いたら教室に姿が無くて、カバンだけが残ってた。ウチの予定では放課後までは泳がせといて、帰りの買い物で荷物を持たせるつもりだったのに、神隠しにでもあったのかって感じで教室に姿が無い。
いくらバカでもカバンだけ残して帰るとかはあり得ないので、近くの女子に話を聞くと、
「え? 分かんない」
「誰かに会いに行ったんじゃないの? 知らないけど~」
「……あ、そうなんだ」
――などなど、相変わらずの塩対応。
陽斗にはとことん甘い顔を見せてるくせに、ウチには本当にそういう感じでムカつく。
アレの為にどれだけ努力してるか知らないくせに、本当に使えない。
それはともかく、陽斗とたまにつるんでる男子の姿も見えないことに気づいたので、多分一緒なんだろうなと思ってちょっと安心。
行動範囲が女子に限定してるアレだけど、動くところなんてそう多くない。ということで、体育館近くの廊下を探せばいそうな感じがするから来てみた。
そこにいたのは陽斗じゃなくて、いかにもついさっき悪さをしてきた顔の男子が息を切らせているのが見える。陽斗の友達にはバイト中に何か言われた気がしたけど、よく覚えてない。
それはそうと、慌ててきた様子を見てすぐに理解。
「はい、その答えは?」
「ダ、ダチを売りました……」
「陽斗を? ふーん……何で?」
「陽斗はその、女子にちょっかいを出しまくって風紀を乱してるらしく、風紀委員長が探してたみたいで……だからあの」
風紀委員長?
今までまともに仕事してきてない風紀が何で急に。
先生達がそんなにうるさくない登校日を狙って男子を確保とか、生意気すぎるんだけど。
「見返りは何かな?」
「えっ?」
「安川くんは友達の陽斗を売ったんでしょ? 見返りがないと売らないはずだよね?」
「……は、はい。それは――」
陽斗の友達でもある彼によれば、ウチにフラれたショックが抜けきれず、しかもウチと恋仲ということを知って悔しさが募り――何とかしてやりたい気持ちがあった。
そんな傷心な彼に声をかけて来たのが、風紀委員長を名乗るあの女。運動部女子にしてたまにしか仕事しない風紀委員長とか、面倒な相手すぎ。
安川くんには友達を売る見返りに、誰か紹介してあげるとかいう騙し話。陽斗の友達って感じで怒る気にもならない。
詳しいことを聞いたし、佐紀ちゃんを誘って乗り込むことにする。
「待ってろよ、陽斗! 風紀委員ハーレムとか、絶対させないし!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます