第21話 風紀乱れ男子、拘束される 1

 夏休み期間中、受験に関係あろうと無かろうと必ず登校しなければならない日がある。無い高校もあるようだが、うちの学校はあるようでかなり面倒くさい。


 いつものように亜南とは別行動で登校。

 教室でも話すことなく無難な一日が終わる――そう思えたのに。


「陽斗。たまには一緒に帰ろうぜ。いいか?」

「珍しいな。いいぞ」


 バイトでやや気まずいことになったが、りつは気にしてもいないようで、俺に声をかけてきた。


 どうせ家に帰るだけなので、亜南を気にすることなく廊下に出る。

 廊下に出て適当に歩きながら話を始めようとしたところで、が起きた。


「それにしても、マジで久しぶりだよなー」

「すまん、陽斗!」

「あ、あぁ、俺も……」


 俺が話しかけてすぐ、律が頭を下げて謝ってきた。

 よく分からないものの、俺も亜南のことがあったので頭を下げることにした。


「…………」

「……」


 お互いが沈黙した次の瞬間、俺の両肩が誰かに掴まれた。


「へっ? な、何だ?」


 右肩、左肩を気にすると、そこには二人の女子が立っていた。

 どっちも見たことが無い女子で何故か厳しい顔で俺を睨んでいる。


 俺の正面にいたはずの律はいなくなり、奴に代わって女子たちが背後にいる。何なんだこれは。


すめらぎ陽斗はると……だな?」

「君らは……?」

「口答えするな! 皇!」

「――って言われてもな」


 どうやら俺を逃がすまいとしているらしく、かなり力が込められている。


「悪いが、このままあんたを連れて行く。話はそこでしか認めない」

「黙って前に進め!」

「……よく分からないけど、歩けばいいんだよな?」


 二人の女子は強い口調のままで崩さず、俺の肩を掴んだまま前へ促した。

 顔はよく見えないし、二人とも低音ボイスなこともあって従う以外に選択肢が無さそうだった。


 全く身に覚えがないが仕方ない。


 変な姿勢のままでしばらく廊下を歩かされていくと、指導室と書かれた部屋に着いた。


「えっ? 指導室……?」

「入れ」

「早くしろ、皇!」


 どうやら怒られる展開になりそうなので、素直に言うことを聞くことにする。


「失礼しま~……」


 身動きを封じられたまま部屋に入ると、数人の腕組み女子が俺を出迎えた。

 いかにもな机が中央にあって、高そうなソファが壁際に置いている。


 恐ろしくて顔を見れないが、一番偉そうな女子の顔を見てみると……。


「あ、いらっしゃい! 待ってたよ、皇くん」

「へ? その声……いや、その顔は――待田さん!?」

「はい。あ、ゆかりです。ゆかりって呼び捨てでお願いしますね!」


 よく分からない部屋に腕章らしきものをした数人の女子、その女子たちの真ん中に君臨して堂々と座っているということは、まさか。


「ゆ、ゆかりさんは、風紀委員?」

「呼び捨てでって言いましたよ? はい、もう一度」

「……ゆかりは風紀委員長?」

「ですです。驚きました?」


 驚きよりも未だに拘束されてる状態に戸惑い気味なんだが。


「驚いた。けど、そろそろ離してもらえると嬉しいかなーと」

「そうもいかないんですよ。そういうわけなので、色々と調べさせてもらいますね!」

「――えっ」

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