第7話 モテ期減少現象
姫野が男の娘だったのは残念だったようなそうじゃないような。
それはともかく、学校で何とも言えない異変が起き始めた。
他のクラスの女子に声をかける時、大体昼休みにかける時が多い。
ということで、いつものように見知った女子に声をかけた。
「ごめんね、
「えっ……」
1年の時から気になっていた女子は数人いた。今しがた断られたのもその中の一人だ。そして別の女子も……。
「んー……遠慮しとく」
「ええっ? な、何で?」
「だって、陽斗にはもういるじゃん」
もういる……まさか亜南のことを言ってるんじゃないよな。クラスも違うし、さすがに亜南とのことをそう見ているのは無いだろうけど。
違うクラスの女子とは2年に上がっても結構親しい関係を築いていたこともあり、呼び捨てされることも普通で、もう少しで彼女に出来そうな子が何人かいた。
それなのに――
「偶然なんだけど見たんだー」
「な、何を?」
「ホテル通りで細身のギャルといるところ。遊んでたっしょ?」
「いや、あれはただの知り合い――」
「――言い訳とかどうでもよくて、そういうの好きじゃないっていうか……今ウワサになってるし、陽斗と一緒にどこかいくのは無いかなーと」
そんなバカな。男の娘と一緒に歩いていただけでホテルに入っても何にもしていないし、亜南にヘッドロック喰らっただけなのに。
姫野に出会ってからモテ期が減少したとかおかしいだろ。彼が男の娘なのだと知らないせいもあるかもだとはいえ、誤解が変なウワサになってるなんてあり得ない。
「そこのぼっち男子。頭を抱えたままぼけっと突っ立ってるのは通行の邪魔! 歩くかどけるかにしてくれるー?」
あまりのショックに思わず頭を抱えていたら、通りがかった女子に怒られた。
かと思えば、そこに立っているのは腰に手を置いてドヤってる亜南だった。
「……何だ、お前かよ」
「廊下のど真ん中で真面目に邪魔。どいてくれないとぶつけるけど?」
「亜南ごときに体当たりされても痛くも痒くもないし、気にしない」
体型的にも亜南に負けるほどやわじゃないので、言うことを聞く必要は無い。そもそも昼休み時間に廊下で立ち止まっても問題は無いはずだ。
「いっ……たっ!?」
どうせ亜南程度の力。そう思っていたら、腰の辺りに鈍い衝撃を感じた。いくら油断してるといってもこんな痛い目に遭うわけがないのに。
「女子だからって舐めてると痛い目に遭うって理解出来た?」
「姫野……か?」
「悪いね、あんたとウワサになったみたいだ」
亜南だと思っていたら、俺にぶつかって来たのはどこからどう見てもギャルにしか見えない姫野だった。やはり亜南と姫野は普段からつるんでいたわけか。
「……だろうね」
「女子にモテなくなった感想はー?」
「嬉しそうだな、亜南」
「そんなことないし? まぁでも、いい気になってた罰ってことなんじゃないの?」
こいつ……密かに様子を見ていたな。
「罰か。それを言うなら姫野も罰くらってんじゃねえの? ウワサになってるわけだし」
「オレは気にしてないから。あんたとウワサになっても影響ないし」
「……」
学校でも男の娘をしてるってことは、男の娘とウワサになってる――わけないか。でもホテルの件はシャレにならないな。
「で、どうするつもり? このままだと陽斗の評判ガタ落ちー! 夏休み前に可哀想に……確か、上手くいきそうな女子もいるんじゃなかった?」
「おま……何で亜南が知ってるんだよ?」
「そこは女子ネットワークを使って!」
「……友達いないくせに」
「バーカ! ウチのコミュ力、舐めんなよ?」
姫野がいるせいか亜南の態度がでかい気がする。どうやら俺よりも姫野の腕っぷしが強そうだし、力でどうにか出来そうに無い相手だ。
「どうもこうも亜南に関係ねーし。今すぐどいてやるから好きに動け」
「へぇ? そういうこと言うんだ? でもいいのかな?」
「は?」
「陽斗の家の鍵は今、誰の手にあるでしょうか?」
ああ、ちくしょう。
「くっ卑怯な奴め……」
だから嫌だったんだ。亜南に家の鍵なんか預けたら、主導権を握られてしまうのは明らかだった。
「とりあえず、ウワサと女子への対応は後でどうにかするとして、今日さ、ウチの家に来ない?」
「無いな。それこそ無い」
「じゃあ夜まで外でうろうろしてれば?」
ほらな、こういうことを言いやがる。
「鍵、返せよ!」
「嫌でーす! そういう態度取るんなら返しませーん」
鍵を返してくれないうえに亜南の家に行かなければならないとか、地獄だろ。どうせ悪趣味な動画を延々と見せて来るに決まってる。
しかも追い打ちをかけるように、
「あ、どうでもいいけど、今日はオレの家ダメだから」
姫野に断られた。
「……頼るつもりは無いからいいけど」
ウワサになってるのに頼ったら沼だろそれは。
「で、どうする? 陽斗に選択権なんて無いけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます