第12話 SIDE 月夜1

「・・・ありがとう。○○○○○。さて、虹輝。待ってなさいよ。」


そういう月夜の周りには男女ともに10人ほどが転がっていた。全員が黒のマントに赤の刺繍をしていた。








〜〜〜〜〜2週間前〜〜〜〜〜






私は現在ひっじょーに機嫌が悪い。全ては目の前で私の機嫌を取ろうとしているこの糞野郎(父親)のせいだ。




「おい、「あ”、なに。」いえ、そろそろ許していただけないかと。」




「許すね〜。突然虹輝と別れさせられ、友達との別れもなく学校やめさせられ、こんなところに連れてこられて、私は吸血鬼でお父さんが虹輝のお義父さんと虹輝を見張るために虹輝の家の隣に越してきて、私が虹輝に恋心を抱いたからそれを利用してさらに虹輝のお義父さんに接近していったこと。そしていま虹輝は復讐神とかいった奴に異世界に転移させられて私がいたあの世界に危害が起こることはないと判断したから虹輝を助ける事なくこの世界に越してきたっていうことを、”ゆ・る・す・と・お・も・う”?」


そう私は3日ほど前、お父さんを張り倒したあと起き上がってきたお父さんにこう説明された。


〈月夜、いいか落ち着いて聞いてくれ。虹輝君は今この世界にいない。〉


《はあ。お父さん何いってんの?》


〈虹輝君は復讐神イヴェルという奴にそいつ自身の逆恨みによってティーガーデンという異世界に転移、いや追放された。〉


《ホントなのそれ?嘘でしょ。虹輝、そんなやつの恨みなんか買ってないよ。》


〈ああ、知っている。監視対象として彼の性格は知っていた。恨みは彼ではなく、英二さんだ。〉


《チョット待って。なに監視対象?何で虹輝の事監視してるの?》


〈それに関しては後で説明する。話が進まないから。〉


《不満だけどわかった。》


〈さて、英二さんはイーリスという人と結婚して虹輝君を授かった。私が虹輝君たちを監視していたのはこのイーリスさんが関わっていたからで、イーリスさんは実は神界の虹の女神なんだ。〉


《・・・お父さん、頭大丈夫?》


〈・・・大丈夫だし、真実を告げている。何で関わったのかはしらないが、虹輝君は間違いなく二人の子で、いうなれば半神なんだ。〉


《阪神?虹輝は野球に興味なかったよ。》


〈そのはんしんじゃない。半分神というわけだ。人間と神様のハーフ。〉


《・・・えーーーーーー。虹輝ってたしかに本気になったら頭もいいし、運動神経も抜群だし、目の色も若干虹色っぽいけど。・・・はっ!》


〈おい、どうした。〉


《ということは私と虹輝の間に赤ちゃんが生まれたら神様のクォーター。やーん。普通の子でも可愛いんでしょうけど、神様のクォーターなんてきっと虹輝に似てものすごくかっこよくて、可愛くて、優しいよ!こうしちゃいられない。》


私はそういうとさっと立った。


〈ちょ、どこにいくんだ。月夜。〉


《決まっているじゃない。虹輝のところよ。行って、押し倒して、既成事実を作って、赤ちゃん作って、虹輝と家族になるんだから。・・・赤ちゃんは何人がいいかな?やっぱ二人?いや三人?まず最初は一人?ヤダ虹輝。まだ最初って〜。》


〈おい、どういくんだ?〉


《・・・・・・・・・・・・・・あ!》


〈やっぱり知らないか。まあ知ってたらおかしいが。〉


《お父さん。》


〈ん、なんだ?〉


《今までありがとうございました。お体に気をつけてください。〈おい。〉最後のお願いです。〈聞け。〉私を虹輝のもとに連れて行ってください。》


〈はあーーー。お前の気持ちはよーくわかった。〉


《お父さん。ありが〈だがだめだ。〉え、な、な、なんで?》


〈まず、おまえは最初にいったように吸血鬼だ。しかも王族だ。王位継承権第3位。ツキヨ=ブラン=ホオヅキだ。ちなみに俺は王様だ。〉


《嘘でしょ!お父さんが王様なんて、この国、よく破綻しなかったわね。》


〈どういうことだ!〉


《お父さん家で何やってた?普段、家でゴロゴロして、家事は時々虹輝に手伝ってもらって、役所の書類を娘に出しに行かせて、三者面談や授業参観のときくたびれた服で来て、それでよく王様なんてできるね。》


〈・・・・・すみません。本当にすみません。〉


《で、私が王女だからって何で虹輝に会えないの。》


〈次に俺たち吸血鬼は普段神や聖獣の依頼で仕事を得ている。そんな俺らが神が関わっている出来事に迂闊に手を出すわけには行かない。〉


《”は、なにそれ”。》


〈しょうがないだろ。俺たちは偵察能力、攻撃能力が高いいわば潜入部隊のようなものだ。潜入部隊が派手に動いちゃだめだろ。〉


《・・・・・わかんないけどわかった。》


〈で、最後だ。お前は王女で王位継承権の第1位と第2位はふたりとも男だ。つまりお前はこの国を継ぐ可能性はない。〉


《だから?》


〈お前は他の国に嫁ぐんだ。〉


《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お父さん何いってんの。》


〈お前は他の国の王子に嫁いで、子供を産んで、そこで王妃として暮らすんだ。〉


《お父さんさ、私が虹輝のこと好きなの知っているよねぇ。なのに、なのに、何でこんなことできるの!》


私は泣きそうだった。虹輝のための純血をどこの誰かも知らぬやつに汚されるなんて。


〈・・・それが王族っていうもんだ。虹輝くんのことは諦めろ。これから先は花嫁修業のことだけ考えろ。〉


フツフツ。フツフツ。私の中で何かが吹き上がってきた。両手の拳の周りに紅い閃光が飛び散っていた。


〈ッ!〉


お父さんが異変を感じて振り返った。そのお父さんの顎を思いっきり殴り飛ばしてやった。


ドカン。


倒れ込んだお父さんに馬乗りになって私は両頬を殴り続けた。


バキッ!バキッ!バキッ!ボキッ!ボキッ!


〈まて、《ボキッ!》ぎゃ。や、やめ《バキッ!》ぎゃぁ。クッ。【バインド】。〉


突然私の身体が縛り上げられた。


《いやっ。解いてよっ。》


〈ふぃばりゃくそうしてひょ(しばらくそうしてろ)。〉




これが3日前の出来事だった。






そしてその後魔法が自然に解けた私は部屋に入れられ食事とお花摘みと睡眠とお風呂はさせてもらえたがそれ以外は何もさせてもらえなく、軟禁状態にあった。そして今、この屑男(お父さん)が私に謝りに来ているというわけだ。




ギロッ。




「「「「「「ビクッ」」」」」」




この部屋にいる衛兵さんが、視線を向けたら固まった。はてなんでだろう。




「あー、その、今日俺がここに来たのはな、理由があってなんだが。」




「”あ”。私に謝る以外に何があるの。」


自分でもびっくりするくらい重い声だった。




するとお父さんは、額から水滴を垂らしつつ


「つ、月夜に合わせたい人がいてね。言語が地球と違うから全言語理解というスキルを覚えてもらうよ。」




「どういうこと?スキルって?」




「とりあえずこの紙を破いてくれるか。」




私はよくわからない紙を思いっきり引きちぎった。


「それで?」




『ツキヨ=ブラン=ホオヅキに全言語理解 強 を付与しました。』




「え、何。お父さん何したの。」




「だからスキルを追加させただけだよ。おい、そこの衛兵、呼んできてくれ。」




「は。ただいまスリクソル様を呼ばせていただきます。」


そういうと衛兵は足早に去っていった。


って、え。私何で言葉がわかるの。




「これがスキルの力だ。これで月夜はすべての言語がわかる。まぁ、全てと言ってもこの吸血鬼の国、ブラン国の言葉だけだからな。そのためにスキルは全言語理解 中 にさせてもらった。」




あれ、私が持っているのは強だけど


「ちなみに他のはどういう効果なの。」




「えーと、確か弱が一つの地域だけ。強が神界以外のすべての異世界。超が神界も含めたすべての異世界だな。」




ていうことは、この紙、間違えられて持ってきたんじゃないの。




「まぁ、超なんてもんはあるのは神界だけだし、強に至っても我が国では5つしか所持していないからな。」


うん、言わないことにしよう。




ピタッ。


「ただいま、スリクソル様をお連れしました。」




キランっ。


「やあ、マイハニー。長い間、不浄の下等民族がひしめきあう地で任務ご苦労さま。これからはこの僕が、君を肉体的にも精神的にもきれいにしてア・ゲ・ル。」


そう言ってこのへんなやつはバッチリウインクをしてきた。




「月夜、この人がお前の婚約者だよ。」




・・・・・・・・・・・・はあ!何でこんなやつと。


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