第11話 光の先
「ここはどこだ?」
俺は突然光の中に包まれたと思ったら、真っ白い空間にいた。あの復讐神と似た雰囲気だが圧倒的に違うのは空気の質感だった。あいつの空間の空気は20年間くらいずっと締め切っているのかっていうくらい淀んでいたが、ここは空気清浄機で浄化されたかのような空気の綺麗さだ。
『こんにちは。』
俺、またどこかに飛ばされるのか?もう勘弁なんだが。
『もしも〜し。こんにちは〜。聞こえてます〜。あいつと同じ存在にされるの心外なんですが〜。』
なんかさっきから変な声が聞こえるんだが。俺はゆっくりと後ろを振り返った。・・・これで何度目だろうか。
『あ、ようやく気づいてくれましたね〜。』
と、長身の女の人がこちらを見て言った。その女の人は現代の日本の街を通ったら100人いて110人振り返りそうな美女だった。
『そんな事言われたら照れますね〜。』
「え、ひょっとして俺心の声ダダ漏れだったのか?というか貴方は誰だ?」
『私はウォータードラゴンの化身でありダンジョンマスターのオケアノスと申します。私を開放してくださってありがとうございます。あと私は心の声が軽く聞こえるのです。』
ドラゴンの化身。......な”!も、もしかして自分を倒した俺を恨んで殺すとか...。
『まぁ。失礼な。私は貴方にお礼を申し上げたくてここに招待したのですわ。それに貴方は私を倒したと言いましたが、大きな間違いですよ。』
そ、そうか。殺されるわけではないんだな。
「というか倒したわけじゃないってどういうことだ?貴方は確かに俺が宝玉を破壊して殺したと思うのだが。」
『そうですね〜。少し長くなりますが。まず、あのときの私は意識が殆どなかったんですよ。貴方が復讐神と呼ぶ糞野郎に貴方を確実に殺すために操られかけていたんですよ。私としては操られるのは憤慨だったので、できるだけ抵抗したんです。疑問に思いませんでしたか?一応ドラゴンの私が爪の攻撃と水のブレスだけしか使えないというところに。あいつは私を操って私の寿命を縮める代わりにありとあらゆる能力を上げたんです。しかし、私が抵抗したので2種類の攻撃と攻撃力を上げるくらいしかできなかったんです。そしてあの身体はもう傀儡となっていてもうすぐ死んでしまうので私の魂とダンジョンマスターとしての権限だけをこの空間に移したというわけです。なのであのときの私の身体は通常の100分の1くらいの強さだったんです。なので貴方は本来の私を倒したのではなく、偽物を倒したというわけなのですよ〜。まぁそれでもワイバーンと同じくらいですが。』
ど、どうりで。俺なんかが倒せるわけがないんだよなぁ〜。はぁ。
『ま、まぁ。それでもダンジョンボスを倒したのです。ダンジョン初突破のご褒美を上げましょう。』
「ご褒美って?」
『ダンジョンを攻略したものにはそのダンジョンからプレゼントやご褒美が与えられるのですよ。そして今まで突破されてないダンジョンだと初突破者となるのです。』
「つまりここって、誰も攻略できていなかったのか?」
『そうですよ〜。本当ならここはLv10にいった者が更に難関を乗り越え私のもとにたどり着くんですけど、その難関が難しかったのか全員死んじゃったんですよ。』
「ちなみにどんな難関だったんだ?」
俺は少し怖かったが聞いてみた。
『え〜、例えば水の中に棲んでいるシーサーペントを倒すとかこの空間の中にある一つの鍵を見つけ出すとかですね。』
うん。俺には無理だったな。そう考えるといまボスを倒したのは良かったな。...死にそうになったが。
『さて、ご褒美の内容です。えーと、まず貴方のステータスが見やすいように末尾が0となります。』
ん?
『そして、今の装備じゃ心もとないでしょうから、このアクアマリンが含まれた刀を授けます。この剣は貴方が使いやすいように刀となっています。そしてアクアマリンが含まれているので水の魔法が使いやすくなります。』
刀か。嬉しいな。切れ味はいいのかな?
『・・・貴方は本当に刀にしか興味がないのですか?ん、んん。コホン。え〜、では次に貴方は天水流を使うのですね。』
「あ、ああ。そうですが何で貴方がそのことを知っているんですか?」
『元々、天水流はこの世界の流派の一つだったのです。今から遡るほど500万年くらい前。私自身も良く知りませんが、天水流は使い手を選ぶ流派だそうで、そして精霊魔法を持つものが天水流の本当の力を引き出せるそうです。』
どういうことだ?天水流は俺の父親が使っていた剣法で父親もこの世界と関係はないと思う。それに本当の力ってなんだ?
『私もこれ以上は知らないのですよ。ただ、女神イーリス様に天水流に使い手が現れたら、今の話をして、この剣と水の精霊魔法を授けなさいと言われたまでで。というわけで剣がこれで、精霊魔法も授けますね。【宿る水の魔法よ、新たな存在に置き換わり、新たに術師の力となりなさい】はい、これで完璧です。』
完璧と言われても...。結局、ご褒美はステータス値が見やすくなっただけなのか。
『そ、そ、そんなわけないじゃないですか。わ、わしゃしはもっとすごいものを用意しているのですよ。』
噛んだな、今。もっとすごいものか。なんだろうな。
『そ、それはですね〜。・・・・・・・・・・・。』
「やっぱなにもないじゃん!」
『く!見破られましたか。仕方がありませんね。そこまでいうなら私の処女を捧げましょう。本来ならこの程度で手に入るものではないんですよ。』
何いってんだこいつ。
「いや、いりません。」
『そうですか〜。いりませんか〜。・・・え、いらない?』
「はい。俺好きな人いるので。」
『はあぁぁぁ〜!ふざけないでよ。私がこのセリフいうのどんだけ恥ずかしかったと思ってるのよ。そもそも、強くて、美女で、巨乳の処女がいらないなんて!あ、もしかして貴方いわゆる幼女趣味ね!なるほどね。』
「いいえ。俺は断じて幼女趣味というわけではありません。ただ単に俺は好きな人がいるのに他の人に目移りしたくないんです。」
『そ、そんな〜。それじゃ私が貴方にあげられるものなんてなんにもないじゃない。』
「あー。じゃあ欲しいもの言ってもいいですか。」
『ふん。いいわよ。私の身体以上のものがあるのなら言ってみなさいよ。』
若干涙ぐんでるような気がするが。置いといて。
「じゃあ、元の世界へ帰る方法はどうでしょう。」
『無理ね』
「う。じゃあ次は、言語を理解したいです。」
『その機能、元々貴方の異世界人という称号に含まれていますよ。』
「うーん。じゃあ一緒に旅してくれる動物がほしい。」
俺は半ばやけくそ気味に言った。これでだめだったらどうしよう。
『え、そんなものでいいんですか?ならこの卵を与えます。この卵は貴方と旅をしていくうちに貴方を支える事ができるよう学習していきます。そして、生まれるときは貴方にとって大切なパートナーとなるものが生まれるでしょう。』
「例えばどんなものが生まれるんだ?」
『そうですね〜。例えば商人だとしたら、うまく行けばカーバンクルという運に恵まれる魔物が産まれたことがあります。他にも、親が赤ちゃんと一緒のベッドで温めていたら猫型の魔物が産まれ、その子と一生を歩んだそうですよ。』
「・・・俺が望んだ魔物が産まれるんですか?」
『完全にそうなるわけでわありませんが・・・なにかほしい魔物があるのですか?』
「いいえ。ただ移動に困るような魔物や旅をするうえで危険が加えられるような魔物だと大変なので。」
『ああ、そういうことなら大丈夫ですよ。心配なら頻繁に声をかけてあげてください。そうすると、貴方が望むものが産まれる確率があがりますよ。』
そう言って、オケアノスさんは卵を渡してきた。その卵はピンク色で表面に緑の波模様があった。
「ありがとうございます。大事に育てますね。」
『ええ。それとそれだけではつりあわないので、できるだけ望んだ魔物が産まれるように運をあげておきますね。外に出たらダンジョンではありません。本当のこの世界です。なにか外においてませんか?』
「いいえ。ありません。」
ようやくか。ここから本当の旅が始まるのか。
『では、貴方の旅が成功することを祈っていますね。』
【送還】
「ああ。ありがとうございます。」
俺は来たときと同様の白い光に包まれていった。しかし、来たときよりも不安は感じなかった。それは、パートナーができたからか、旅が始まったからか。
俺は送還されていった。
『・・・貴方にとって大切な人がこの世界に来そうですよ。』
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「さて虹輝、待っていなさい。」
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