第1話 駄々っ子な栗太


『ピー、ピー』と電話が鳴っている。鳴っていることはわかるが目が開けられないでいた。栗太は分かっている、けど開けられないから今日はもう遅刻が決まったことを知らせる電話の音でもある。

20分後、起きた時にはもう遅かった。20件以上の着信が来ている、そのほとんどがマネージャーAからのものであった。内容を聞いてみると『栗太くん、急ぎです。グールパーの朝番組もう間に合わないよ、お願い出て』や『栗太くん、お願い現場の人、カンカンに怒ってるから、せめてメールでも良いから知らせて』とマネージャーAからの急ぎの電話に俺はバーカと心の底から思った。

そして俺はマネージャーAに電話をした。

『プルルー、カチャ。Aですが』

栗太は面倒臭そうに言う。

『もしもしー、Aさんですか。俺、栗太だけどその朝番組もう出ないから、だって最初から言ったよね、朝は苦手だって』

『いや、でも。栗太くんの仕事は今はどんな番組にも出ることが大事だから、分かって欲しいんだよ。事務所でも話したよね』

俺はマネージャーAさんの言ってることも分かってた。だけど、嫌な仕事はしたくなかった。

だから言ってしまった。

『あー、もう。仕事一旦休みます。俺このままじゃ駄々っ子のままなんで、自分鍛え直してきます。それまで仕事一切しないです。Aさんには悪いですけど、仕事休みます』

こんなふうに言った俺にAさんは、『分かったよ、僕もこのままだと君のイメージが悪くなる一方だから仕事セーブして一旦どこかで休んできな。それまでこっちでなんとかしとくから』

Aさんのことを神だと思った。

それから俺は俳優仲間である橋部よるの家に入り浸るようになった。彼はドラマ『悲しい日』からの繋がりでよく遊ぶ友人でもあった。

橋部よるは俺を快く迎えてくれた。

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