第67話 目的
「えーっと、ジャスパー子爵閣下は、米菓を作りたい、ということですか?」
「………………………ああ」
何今の間!?怖いんだけど!
「あぁ、ではウチの最高傑作、お米パンケーキ召し上がりますか?」
「………………………いただこう」
「分かりました!使用人に頼んでくるので、お待ちください」
僕は立ち上がると、子爵に礼をしてから部屋を出た。
違う!違う!あの人味方によっては傲慢だけど!
ただのお菓子好きだったよ!!
”予想外でしたね”
ふっくらとしたお腹は、農民から搾取した金や食べ物からできてるんじゃない!
お菓子だよ、あれ!目も怖いと思ったけど…お菓子が無いか探ってるだけだよ、あれ!
じゃあ、ピーノが言ってた「何かと野次を飛ばす方」って何!?
悪そうな人ではなさそうだけど!
「あ、ピーノ?」
メイド服の裾がちらっと見えたが、どうやら当たりのようだ。
「カイム様?会談はもう終わりですか?」
「ううん、ジャスパー子爵閣下にお米パンケーキを作ってほしいんだけど」
「え?」
「まぁまぁ、理由はともかく、作ってほしいなぁ」
「分かりました。普通のパンケーキはどうしましょう?」
「どうして?」
「だってパンケーキはカイム様考案のお菓子ですよ?子爵閣下が知るわけないでしょう」
「あ…そうだった」
僕がこの世界に来て、来て?から、数か月たったころに、ピーノにお願いした記憶が甦る。
「じゃあ、普通のパンケーキとお米パンケーキを2人前お願いするね!」
「かしこまりました。出来次第、すぐにお持ちしますね」
「うん、頼んだ!僕は会談に戻るね」
ピーノと別れると、小走りで会談室に戻った。
「お待たせしました」
「良い。パンケーキとはなんだ?」
「あ、僕が考えた円形のお菓子です。小麦粉や卵、薄力粉、それと重曹などを使って作るスイーツですよ」
「重曹って、掃除に使うモノではないか?そんなもの、口にして大丈夫なのか」
「はい!もちろん大丈夫ですよ。僕が一から食べられるように綺麗に作ってるので。市販のものでは真似しないでくださいね。そんなことすると、多分死にますよ」
知らんけど。でも、死なれては困るなぁ。毒殺したとかって思われそうだし。
「ほ、本当か…。そうだ、交易の話に戻ろう」
あ、交易の話をするためにここに居るんだった。
「その、綺麗な重曹を買わせてはもらえないだろうか?」
「いいですけど…」
「そのかわり、こちらからは今までにない、開発途中の菓子を出させてもらう。どうだ?」
「喜んで!えっと…、試食させていただけるってことですよね…?」
「ああ。私も一応パティシエとシェフの資格を持っているんだ。それと管理栄養士もな。だから、いつでも健康的な菓子なども提供できる」
あ、説明サンキュ。
「それは嬉しいです。ウチの村、中年の方は健康のためにお菓子やお酒も一切のまないって方多いですし…。大変な農作業の休憩に、なったらいいなといつも考えていました」
本当だからね。嘘じゃないし。本当だもん。
「では、決定、でいいか?」
「はい!」
未知なるお菓子を僕は手に入れた。
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