第53話 学院
「私が提案したいのは、お前たちが、私の推薦で学院に入らないか、ということだ」
「は、はぁ?」
僕は学院入りたくないよ。せっかく始まった楽しい領地経営生活いきなりぶち壊してくるなんて、前世の社畜同然だよ。
「いや、君たちに悪い話ではないはずだぞ?」
十分悪いって。学院の二年間をどう返してくれるかだよ。
「まず、カイム。君はこのままあの村の領主であるためには、まず爵位を得なければならない。爵位がないと、領主なんてすぐ変わるぞ」
「それが学院と関係あるんですか?」
「学院を卒業すれば、卒業資格とともに、男爵だが、爵位が得られる」
「マジすか…」
「まぁ、100人入学して、卒業できるのは5人くらいだが。残りは、耐えられなくて自主退学だな」
オゥ。
「で、ソリド。君は、第六王子という地位は嫌なんだろう?」
「はい!面倒くさいんで。すぐにでも、自立したいです!」
地位を返上したいのか、まぁ、しがらみも凄そうだしな。
「なら、この国の爵位を手に入れ、名誉を上げればこちらで自立できる」
「はい!学院行きます!!」
即決。そんなに自立したいんだ…。
「で、ヴァルト。お前も、養子だが王族の地位は嫌なんだろう?」
「はい!王族なのか、没落貴族の息子なのかはっきりしなくて、従者の対応が面倒くさいので、俺も早く自立したいです!」
没落貴族さんでしたか…。まぁ、事情は聞かないでおこう。悲しい話だよね。
「なら、ソリド同様、うちの国に来ればいい」
「はい!!学院行きます!!」
「あの、絶対二年通わないといけないんですか?」
一か月くらいだったら、行ってもいいかな?
「ん?卒業の目安は二年だが、最短は一か月で卒業できるぞ」
「い、行きます!!」
目指せ、一週間卒業!!多分無理だけど。
「決まりだな。お前らは、確認はとらなくていいか?」
「はい!!見放されているんで!!」
三人の声が、ぴったり重なった。そろったったよ、そろっちゃったよ。
「じゃあ、決まりだ。お前は、メイドに一か月戻らないことを伝えておけ。試験は、明日やるぞ」
「試験勉強してないんですけど…?」
「今夜頑張れ!」
ドーズさんが僕とソリドの肩をバシッ!たたくと、去っていった。
「帰る?」
「うん…」
とりあえず、僕たちは、僕が泊まる客間に向かう。
机の上には、ご丁寧に試験用の参考本が山のように積んである。
一冊を手に取り、ペラペラめくってみると、家で五歳の時に勉強したことがズラーっとまとまっていた。
「これは、簡単だな」
ソリドがそういうと、ヴァルト君もうん、うん、とうなずいた。
僕は、ちょっと、ホントにちょっとね、心配だから触書魔術でも使おうかな。
前に、開発した触っただけで全部覚えられる神魔術!
全部で五十冊くらい。積まれた本の背を撫でるようにしてすべて触っておく。
多分、容量的にオーバーしそうだから、頭痛がする。
そのうち記憶魔術で、整頓しといてくれると思う。
「ん?何してんだ?」
背を撫でまわしているのは、さすがに奇行だから、ソリドはやべぇやつだ…って言いそうな顔で見てくる。
「昔勉強したなぁって思ったやつ以外を見つけようと思って。でも無いみたい」
流石に問題集は数冊あって、一回もやったことなかったけど、パターンも全部記憶済み。安心だよ。
「ふーん、俺も数冊見直しておこうかなぁ?」
ベッドにどさりと寝っ転がったソリドは、そのまま寝息を立て始めた。
勉強するんじゃないのかよ。
僕とヴァルト君は顔を合わせて、ふきだして笑ってしまった。
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