第52話 提案
「今日は集まってくれてありがとう。今は、身分を気にせず楽しんでくれ」
立食パーティーは、ドーズさんの三秒あいさつで始まった。
「楽しめって言われても…」
完全に浮いてる僕。身長せいぜい120㎝、小柄で細身。
「帰りたい…」
「帰るな、帰るな」
僕の肩をたたきながらそう言ったのは、ソリドだ。
「助けてぇ…」
同じく、低身長、細身であるソリドと僕は一緒に行動することにした。
やっぱり、目立ってる。僕は穏便に生活したいんだよ。
「俺の友達も来てるから、そっち行こ?」
友達っていうと、同年代かな?
「うん!」
例の友達くんは、高身長細身、尖った小さい耳、圧倒的イケメン。十歳くらい年が離れてそうだ。
「こんにちは、カイム・セルトファディアです」
「お前がカイムか!俺は、ヴァルトリディエ・シュタイナー。まぁ、いろいろあって、アイリス家に引き取られてる養子で、ソリドの友達兼お兄ちゃんってわけだ。年齢は十五だ。ヴァルトと呼んでくれ」
やっぱり年上。
「は、はぁ」
最近、出会いが多すぎて頭ぱんぱんになりそう。
「とりあえず、各国の王様に挨拶に行こうぜ?」
「そうですね!」
「探知使うか?」
ソリドが、王様を見つけやすそうに探知系魔術を使おうとしたが、ヴァルト君が止める。
「多分、魔術検知に引っかかるな。バレるといろいろまずい」
「うっすーく広げるのは?」
僕が提案すると、ヴァルト君が悩む素振りを見せる。
「できるか?」
「まぁ、それくらいなら」
繊細な魔術操作は、ア●クサに任せればいいし。
どうやら、ソリドとヴァルト君は、戦闘系魔術が得意なんだと。
「どの王様からいく?」
「攻略対象みたいに言うなよ、あっ、何でもない」
ソリド君?何か、言いかけましたよね?まぁ、気にしないであげよう。
「んま、とりあえず、リシエル王からだな」
パーティー会場真ん中の、大テーブルを囲んで話す、大人たち。
ドーズさんと仲良く話しているのは…。
「オゥ、マイパパーン…」
なんで、こうなるかな…?
「災難だったな…」
僕、多分事情ソリドに話してないよね。しかも、今言ったのヴァルト君だよ?
「何で、知ってんだよ…」
「うーん、王族の情報網かな?」
何で疑問形なんだよ。
「ど、どうする?」
「突撃じゃい!!」
うおっ、僕とソリドの細い腕を強引に引っ張り出してドーズさんのもとに走るヴァルト君。
「お話し中、すいません」
「お、すまない、セルトファディア侯爵」
「いえ、若者を優先せねばなりませんよ」
「助かる」
マイパパーンがこっちをルックしてくる。
怖ぇー。目が合ったし。ひゃー。
「ご、ご無沙汰しております」
「フン」
な、何か無いのかよ!?そういうと、ドーズさんのもとを離れていった。
「お初にお目にかかります、リシエル王」
ソリドが、貴族の恭しい礼をすると、ヴァルト君がソリドを紹介する。
ヴァルト君は、何回か面識があるようだ。
「もっと、気楽にしてくれ。私のことはドーズと呼ぶんだ!」
面倒くせぇ…。
「で、俺たちを呼んだのはなぜです?ドーズさん」
ヴァルト君が、そう目線も変わらないドーズさんに歩み寄って、挑発するような表情で語りかける。
「そう慌てるでないぞ、ヴァルト。少し提案があるだけだ」
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