第51話 首都

 僕が目覚めると、もうすでに馬車の中にいた。

「ここは…?」

 首都に向かってないよね、向かってないよね?

「お、起きたか!」

 OH、ドーズさんかよ…。

「半日経っても目覚めそうにないのでな、もう首都に向かっているぞ」

「ですよねー」


 首都は、三年と半年くらいぶりだな。

「どうだ?首都は行ったことがあるか?」

「はい、三年前に。五歳の儀式で訪れました」

 背中痛い…。

「そうか、で、服がしわになっているがどうするんだ?」


 ま、マジですか…。

 僕これしか服持ってきてないよ…?ピーノいる?いたら持ってきてよ…。

 あ、風魔術と炎魔術の混合魔術でアイロン代わりにしちゃおうか。

 ア●クサ、作れる?

 ”もちろんですが。もう発動できますよ?”

 ありがとう。範囲は、この服とシルクハット全体で。

 ”了解しました……完了”


 僕の体中が、ぽわっと暖かくなると、服のしわが自然に伸びて、きれいになった。

「ほぅ、なんだその魔術は?」

「即興でつくった簡単な複合魔術ですが…。風と炎の魔術で、アイロン代わりにしました」

「私にもかけてくれ」

 僕は魔力を空気中に流して、ドーズさんの服にアイロンをかけた。


「おおお!!元々しわは無かったが、シャキッとしたなぁ!!」

 喜んでもらえてなにより。殺されたくないから、素直に従わないと。

「お、着いたようだ」

 僕の王様のイメージって、面倒くさい感じなんだよね。

 ”不敬ですが?”

 わかってるけどさ。


 王様が下りると、何十人ものの従者が頭を下げて迎える。

「おかえりなさいませ」

「あぁ、ただいま。今日は客人がいるから、一番いい客間を用意してやれ」

 豪華なローブを脱いで、侍女長に渡した王様は、僕を手招きする。

「こんにちは、カイム・セルトファディアです。お邪魔します」

「いらっしゃいませ、カイム様」

 

 執事が、僕を案内してくれた。

 広れぇ!!やべぇ!!でけぇ!!

「私はここで失礼します」

 執事さんは、仕事に戻っていく。


「あ、今日のパーティーは、王立学院の方もいらっしゃるそうですよ」

 後ろの馬車に乗ってきたピーノが、夕食について話してくれた。

「王立学院?」

 僕はベッドに腰掛けて、ピーノの入れてくれた紅茶をすする。

「世界三大難関学院の一角、リシエル王国の学院です」


 世界三大難関学院というのは、世界中の貴族学院の中から、毎年選ばれる入学、卒業ともに難関な学院トップ3のことだ。

 王立学院は、首都アリズ唯一の貴族学院で、二年間通う貴族のための学校。


 何歳からでも通うことができるが、基本は、15、16歳くらいに入学する。

 家で、一通りの教育を受けてから行く、大学みたいなものらしい。


「僕には、まだ関係ない話だね」

 学校行くつもりはさらさらないし。

「でも、行かないと、今後の領地経営に支障が出るかもしれませんよ?」

「なんで?」


 領地経営に支障が出るって、どんな事?

 ”領地がうばわれます”

 オーノー


「やばいじゃん!!」

「何も言ってないんですけど…?」

 ピーノが不思議そうに僕を見る。

「アハハ…」

 僕はただ苦笑いすることしかできなかった。


 ”自己解決乙”


 ”ごふっ”

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