第37話 衝撃

「えーっと、全部でいくらかな?」

「え、えっと、六万セルだけど…。そんなにお金あるの?」

 セルというのは、円と同じ価値で、一セル一円となっている。

 六万セルはつまり六万円。キャンプ用品全部では安いくらいだ。

「うん?全然足りるよ?俺は今日百万セル持ってきてるから。小銭こぜに程度使っても問題ないよ」

 ひゃ、百万円…、六万円を小銭程度…、お、お金持ちか…。


「じゃ、じゃあ、あれと交換ってことで…」

 アレルさんが全商品セットを僕に渡してくれた。

 少年は、六枚のお札を僕に渡すと、付き添っていたエルフのお兄さんに荷物を渡した。


「あ、ちなみに、俺の名前はソリド・アイリス。隣の大陸のエルフ王国、アイリス王国の王族だよ」

 お、王族でしたか…。敬語使わないといけないよね?

「敬語はいらないよ。プライベートだし、俺のことは気軽にソリドって呼んでね!」

「あ、えっと、僕はカイム・セルトファディア。ここの領地に一応息子なんだ」

「そっかー!また会えるといいねぇ」


 ソリドと手を振って別れると、僕はすっかり今日の仕事を終えた気分になってしまった。

「領主様、まだまだお客はいますよ」

 アレルさんが忙しそうに僕に話しかける。

「手伝います!」


 僕たちは、商品とお金をお客さんと交換しながら、商品についての説明をする。

 あ、パンフレットみたいなやつ作ろっかな!

 ”作成完了。庶民にも読みやすいように簡単なリシエル語でつくりました。習得言語に変更は可能です”

 ナイス!ア●クサ!


 街道に生えている雑草を風魔術で抜き、紙に変換し、変形魔術の応用でプリントしていく。ざっと百枚かな?

 風魔術で丁寧に折り曲げると、すぐにできた。

「はい!こちらが説明書になっています!こちらをご覧ください!」

「私も欲しい!」

「あ、僕も!」


 やばい、やばいあと数枚しかない!?

 どうしよう!?さっきから雑草を抜きながら作ってるけど、雑草が足りない!?

 ”空気や日光でつくればいいのでは?”

 な、なるほど!ア●クサ、頼んだ!

 ”了解しました。…完了”

 

 一気に束で出てきた…。何枚だろう?

 ”五万枚です”

 嘘だろ!?

「はい、じゃあ、ご自由にお取りください!不明点は僕が説明します!」


「じゃあ、この机について教えて下さい!」

「は、はい!えっと…」


「このグリル?ください」

「はい、えっと、五千セルです」


「これ、他のデザインないんですか?」

「どのようなものがいいんですか?」

「娘にあげたくて…クマのデザインがいいんですが」

「はい、今やりますね!」

 僕は紙にクマを描いて確認するとオッケーだったので。


 頼んだ!ア●クサ!

 ”了解、完了”

「え、出来た!?」

「はい、どうぞ!プレゼントですよね!ラッピングもしますよ」


「あっ、え、お願いします」

 頼んだ!ア●クサ!

 ”了解、完了”

 可愛らしい淡いピンクのラッピング袋に、小さな兎のキーホルダーもつけて。

「あ、ありがとうございます!」

「いえいえー!お代は三千セルです!」



「はぁー、終わったー!」

 持ってきた、各商品を百個ずつ、セットを二百個持ってきたが、三時間ほどで完売してしまった。

 残念ながら買えなかったお客さんには、進化版パンフレットを渡して一件落着。


 僕たちは、ジオラスが買ってきてくれたジュースを片手に、お疲れ様会を開いて、疲れをいやした。

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