第36話 意外 1‐1

 カートを押しながら、僕たちは路上販売スペースに向かう。

 お昼ごろになると、店をたたんじゃう人もいるらしいから、そこを狙ってみよう!

 あの女の人によると、セルトファディア家の屋敷がある通りの前が一番活発で売り上げが高いらしい。


 うーん、お父さんと再会?するのは気まずいけど、そうなったら、一発頬に殴ってやればいいかな?

「お屋敷前にしませんか?」

 うーん、まぁ、みんなのおじさんのアレルさんが提案してくれたなら、しょうがない。

「そうですね、じゃあ、開いてる場所を見つけたら、僕のところに報告しに来てください!」

「了解した!」


 ジオラスは張り切って、カートを押すと、足が引っかかって転んでしまった。

「い、痛くないし!泣いてないし!」

 半泣きのジオラス。ジオラスは十一歳くらいなんだよね。年相応といったところかな?

「はい、直してあげるから。頑張ってやろうね?」

 僕は治癒魔術を擦りむいた箇所にかけると、ジオラスは全回復。

「感謝する!さぁ、張り切ってやる!」


「すまん、ジオラス。開いてる場所あったぞ」

 指さしながらアレルおじさんが半笑いして言う。

 ジオラスと軽量魔術で軽くし、持ち上げるとそこに駆け足で向かう。


「じゃあ、ここに設営しようか」

 僕が作ったワンタッチクソデカテントをまず広げる。

 レジャーシートをひいて、サンプル商品を並べる。

 誰も見たことないから、みんな興味を示してくれている。

「値段シールは間違いなく貼った?」

「はい!」


「じゃあ、呼び込み開始するよ!」

「おう!」

 みんなで円陣を組んだ後は、個人作業?する。

「野営用の家はいりませんかー?」

「本格的に、気軽に外でお料理しませんかー?」

「一瞬でできる一時的な家はいりませんかー?」


 みんな、聞いたことも見たこともないものに興味津々。嬉しいなぁ。

「あの、これは何をするものなんですか?」

 一人の少年が声をかけてくれた。耳が長くて、白髪で、碧眼の低身長美少年だ。

「はい、これは外で一時的に寝泊りしたりできるテントという商品です」

「へぇ、画期的なんですね!あ、同い年っぽいから、敬語はいらないかな?」

 エルフが同年代って言ってくれるんだったら、いいかな?たまにいるよね、二十歳くらいの見た目しているのに、実際は百五十歳とか…。


「うん、よろしく!」

「ねぇ、こっちはどう使うの?」

 細くまとめられた椅子を指さして彼は言った。

「これは袋から出して、広げると、ほら!椅子になるんだ」

 コンパクト椅子のインパクトは大だったらしく、盛大に驚いている。

「すごい!全部買った!」

「え?」

 僕はいきなりお小遣いは三千円ね、って言われてそうな少年にそんなこといわれから、驚いた。


「え?」

 少年は、何で僕が驚いているかわからない、きょとんとした顔で見つめてきた。

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