第31話 困惑
…ネンガ村の隣村、ハルカ村の村長の私は、非常に困惑していた。
なぜなら。
①貴族に逆らってもいいのか
もし逆らって、怒らせてしまって、殺されでもしたら、こっちに残っている女房と息子が困る。
②ハルカ村と取引しても利益は生まれないこと
この村は、辺境といえど、発展しているほうであるが、特出したものはない。
③この村と合併されてしまうのではないか
貴族なら、それくらいやりかねない。それがこんなに小さな子供でも。
「坊ちゃん、少し言い方に語弊があったと思いますのじゃ」
「もしかしたら、村長殿は、坊ちゃんが貴族であるために、ここまでの対応をされたのではないでしょうかのぅ」
うーん、言われれば、確かにちょっとひるんじゃってたよね。
「ごめんなさい、村長さん、言い方を間違えてしまいました。僕は、ハルカ村とネンガ村のつながりを強くして、どっちかが困ったとき…そうですね。例えば不作になってしまったとき、協力して食いつなげれば、犠牲者が減ると思いますし」
「はぁ、良かった…。てっきり処刑されてネンガ村とハルカ村が合併してしまうのではないかと思ってしまいまして…」
「そんなことしませんよ!?」
いや、左遷されたとはいえ、僕も一端の貴族だからね。侯爵の子息っていう肩書は、一応まだ消えてないよ?
とりあえず、僕は考えていたことを村長さんに話した。
「はぁ、良かった…。取り立て量が増えて、昔のような生活に戻ってしまうのかと…。そうすると、また住民にも迷惑をかけてしまいますし。はぁー、殺されなくてよかった…!!」
住民想いのいい村長さんだなぁ。
そのあと、村長さんと、簡単な同盟みたいのを結んで、僕たちは街道を歩いて帰った。
「それにしても、完成度がすごいね」
「ふぉっふぉっふぉ、恐縮でございますぞ」
きれいな石畳の街道が、約十キロほど続いている。
「まさか一か月でこのレベルの街道になるなんて…。やっぱり執事長はスゴイですね!」
ピーノは両手を合わせたポーズで喜んでくれている。
長い道のりを、ゆっくり歩いているとネンガ村の最果ての塔、カン塔が見えてきた。
バルコニーから、顔を出していたオッズくんは、おかえりー、と叫んでくれた。
その瞬間にオッズくんの体がゆらいで、ガン!という音と、鉄製の柵にオッズくんは強打した。
「オッズくん!!」
僕たちは、急いで塔の二階に上り、オッズの部屋に入った。
ごちゃごちゃに置かれた板や石をよけながら、何とかバルコニーにたどり着いた。
「大丈夫!?」
僕が声をかけると、頭を抱えたオッズくんが一言。
「は?誰?」
ネンガ村に帰ってきてそうそう、僕たちは、混乱の海に飲み込まれてしまった。
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