第30話 隣村

「ふぉっふぉっふぉ、お昼寝は済みましたかの?」

 気絶はお昼寝じゃないから!!

「あれ、ここは?」

 天井が僕の家ではないし。


「あのまま、隣村まで来たんですよ」

 気絶した僕を隣村まで運んでくれた執事長おじいちゃんは、笑いながら紅茶をすすっていた。

「ふぉっふぉっふぉ、こちらの村は資源が豊富ですし、取り立ても多くないのですよ。紅茶はここから仕入れましょうな」


 といっても、ネンガ村には、貨幣が無いんだよね。

 まぁ、ゴミとかから僕が生み出すっていう手もあるけど、それはちょっと抵抗があるってもんよ。

「こっちの村長さんにも挨拶はしたほうがいいよね」

 これから、仲良くさせてもらわないと。


「そうですね、今はいるみたいですから、さっそく訪ねてみましょう」

 こっちの村長はセクハラで捕まってないんだね。良かった。

 僕はベットから起き上がり、執事長と手をつなぐと、家の外に出た。


 見るからに大きい、立派な石造りの家。ネンガ村の代理村長は、みんなと同じタイプの家に住んでいるのに。これが差ってやつか…。

「多分、村長さんの家だよね?」

「そうですね、ノックしちゃいますよ?」

 

 ピーノがノックすると、すぐに出てきてくれた。

「あぁ、気絶した可愛らしいお貴族様ですか」

 優しそうな顔をした、細身の男性。

「はい、いきなり気絶しちゃってすいません。おうちをありがとうございました」

「いえいえ、とんどもございません。こちらこそ、お越しくださり、ありがとうございます。簡易なおもてなしですが、ごゆっくりなさってください」

 そういって、僕たちを中へ手招く。


 中は、かなり広くて、客間みたいなのに案内された。

「おぉ、大きい!」

 執事長室くらい大きかった。

「どうぞ、おかけください。紅茶は、いかがですか?」


 紅茶もバンバン飲めるのか…。でも、僕は緑茶派だけどね?

「あ、じゃあ、お願いします」

「はい、今作ってまいりますね」

 至れり尽くせりだ。余裕のある暮らしってやつだよね。


 数分待つと、きれいな水色の紅茶が出てきた。

 僕も貴族やってたからね、においでわかっちゃうんだよ。

 えーっとね、これは…ダージリンだ!

 ”正解です。この村独自の茶葉ですよ”

 ア●クサ君、思考にいちいち干渉するようになったんだよね。

 ”申し訳ありません、このいやらしい私に罰をぉ!!”


 無視。

 

「おいしいです。ありがとうございます」

 ソーサーにカップを乗せると、村長が話し始めた。

「あの、うちの村と取引しても何も利益は出ないと思うんですが…」

 あぁ、そんな心配でここまでよくしてくれたのか。

 ”多分違うと思います”

 え?


「いえ、僕は取引で利益を得たいんじゃなくて、もっと仲良くしたいなって思うんです。ネンガ村より発展してますし、ここら辺は、都市も遠いですし、つながりを強くすることで、どちらの村にも、利益があると思います」

 利益は得たいよ?けどさ、崩壊寸前だった村は、もっと隣村に助けられてもいいよね?

「確かにそうですが…」

「いや、別にあなたたちが嫌っていうなら、全然この話は無しにしてもらってもいいですよ?僕たちは、僕たちなりに頑張りますし」

 ちょっと、あおりみたいになっちゃったかな?


「それは…」

 村長は再び口を濁らせた。



 第30話まで読んでくださりありがとうございます!


 もし、執事長みたいにふぉっふぉっふぉ、ってなってくださった方は、★評価をお願いします!!

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