第29話 街道

 スーパー木こり時間タイム一週間も終了したところで、僕は、風魔法で土を浮かせながら、畑全体に種をまいていた。

 一日目の昼ご飯とおやつに、ピーノが作ってくれたスコーンが大分好評で(足りないいろんな材料は、僕が、木のくずとかから作ったけどね?)みんなの一か月に一回の楽しみになった。

 これ売り出せば、かなりのお金になるよね?


 まぁ、みんなが農業にかける時間が減ったから、暇になっちゃった住民も多いんだよね。

 体格がいい人は、そのまま木こり要員として、手先が器用な人たちには、余ったものから作った、毛糸で編み物をしてもらって。それでも高齢者の人たちが残っちゃうんだよなぁ。

 

「ねぇ、おじいさんは、どんな仕事がしたいの?」

 僕は、オッズくんを紹介してくれたおじいさんの家で、緑茶をすすっていた。

「そうじゃのぅ。ゆっくりできるやつがいいのぅ」

「ゆっくりできるやつか…。体を動かすのは、やっぱり大変だよね?」

「そうじゃのぅ。わしはもう腰がやられとるからな。なるべく座ってやれる仕事なら、大歓迎なのじゃが…」


「カイム様、お魚釣りなどはどうでしょう?ほら、大きな湖が二つほどありますよね」

 ピーノは、おじいさんの家の壁の地図を指しながら言う。

「たしかに、湖があるね。オコノミヤキと、カタクリだっけ?」

 命名した人、絶対日本人だよね。お好み焼き粉と片栗粉。おいしそうなんだよなぁ。


「じゃぁ、お魚釣りを頼もうかな。そうすれば、みんなも仕事出来るよね」

「そうじゃ、わしらは老いぼれじゃが、仕事はみんなしたいのじゃよ」

 頼もしいなぁ。僕もそんな大人(老人)になりたいなぁ。

「でも、無理はしないでね?商業にするわけじゃないし」

「分かっておるよ」

「お茶、おいしかった!ごちそうさまでした!」

「うむ、また来いぞ。待っておるからな」


 僕はおじいさんの家を出ると、ピーノと執事長おじいちゃんを探した。

 前に、街道はお任せあれってたまにどっか行っちゃうけど、進捗状況が気になるんだよね。

 僕の専属執事(最近就任した)とはいえ、老執事で、おじいちゃんだし。 

「執事長ー!どこにいるんですかー?」

「おじいちゃーん!!どこー!」



 ん?わしを呼ぶ声が聞こえる気がするのぅ。わしはわしの固有スキル〖超耳めちゃきこえる★〗を発動し、よく聞いてみる。

 高い声が二つ…。

 ふぉっふぉっふぉ、坊ちゃんとピーノ君か。

 おじいちゃん、本気出しちゃう。

 家系スキル〖瞬俊ばくそく★〗を発動し、坊ちゃんのもとへ向かう。

 ざっと十キロは走りましたかのぅ。

「ふぉっふぉっふぉ、お待たせしました。坊ちゃん」

 


「ねぇ、あの走ってくるのって、おじいちゃんだよね?」

 前、気絶しちゃったもん、僕。そりゃ走ってくるのは無いよ?

「はい、執事長です。すごいですね。陸上選手になれそうですね」

 陸上競技あるんだ…。て、そうじゃなくて、おじいちゃんがやばいんだよ。

「ふぉっふぉっふぉ、お待たせしました。坊ちゃん」


「ううん、凄い早かったから。街道はおじいちゃんに任せたけど、結局どうなったの?それが聞きたくて」

「ふぉっふぉっふぉ、ちゃんと、完成させましたぞ」

「え!?」

 おじいちゃんについていった僕は、あまりの完成度に驚愕で気絶してしまった。

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