番外編 執事長の終活ノートⅠ

 わし、ジロウ・サイオンジ(西園寺 次郎)、72歳。セルトファディア家の執事長をしておる。

 使用人序列第二位のわしじゃが、そろそろ退職を考えているのじゃ。

 なぜなら、そろそろ歳だからのぅ。

 政治家がそうだが、どんどん席を譲って、若い者にやらせればいいものの、年寄りの無能が意味なく残っておるように、執事も、老いより若いのを育てんと、次の世代がダメになってしまうからのう。


 そうじゃな、再来月に退職じゃ。春から夏に変わるころになら、キリもいいからのう。わしは決めたぞい、そうするのじゃ。

 じゃが、退職した後は、何をするかの?日本に戻るか…?

 いや、それはもう勘弁じゃな。あそこじゃ、働き手が見つからんのじゃよ。

 おーん、どうするかのう?


 わしが悩んでると、ノックの音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します」

 入ってきたのは、若いメイドの少女、ピーノだ。

「何か用かね?ピーノ君」

 ピーノは、坊ちゃんが最果ての村に左遷されることを話した。

「いいよ」

 普段から気を付けている、威厳のあるような顔を、一気に緩める。

 いや、孫のような坊ちゃんからそんなこと言われると、おじいちゃん喜んじゃう。

「今、引継ぎ用の資料を作成するから、そうじゃの、一時間で終わると伝えておくれ。準備が終わり次第、部屋に伺うと」

「わっ、分かりました。ありがとうございます!」

 ピーノは飛び跳ねて、坊ちゃんの部屋へ向かった。

 うんうん、わしもそんな時期があったのう。元気でよろしい。


 早速わしは、引継ぎ用にノートを作成する。

 普段行っていること、この部屋の隠し武器のこと、その他色々。

 集中して書き連ねていたのじゃが、三冊用意したノートのうち、一冊余ってしまった。

 そうじゃの。これは一応セルトファディア家の備品じゃが、一冊くらい貰ってもお天道様は許してくださるじゃろ。



 そのあとのことじゃが、わしはセルトファディア家の金を盗んだ。

 まぁ、少しの悪さは、お天道様の許容範囲内。越えなければ大丈夫じゃ。



 もらったにしても、使い道がないのじゃ。わしみたいな老人が書くことなんて…、何も、ないのじゃよ?

 いや、あるのぅ。日本のコマーシャルでやってるのう。終活ノート。

 わしも、年齢的に書き始めたほうがいいのかのう?日本から移り住んでから、食生活が悪くなったし、死ぬのはいつかわからんからのぅ。


 そうじゃの、終活ノートを書いてみようかのぅ。


 そんなこんなでわしは、終活ノートを始めた。


「何を書けばいいんじゃか…?」

 わしは書斎に行き、終活ノートについて書かれている本を探す。

 いや、多分ないじゃろう。日本には、たくさんあるがのぅ。

「お、あったあった。日本にもあるやつじゃ」

 日本語で書かれた、終活の始め方、という本。


 わしはそれに従って、住所や家族、お金の預けどころを書いた。

 家族は、日本にいるが、わしは見放されたからのぅ。

 坊ちゃんあてに書くことにするのじゃ、わし。


 終活の始め方をパラパラめくっていると、自由に書いてよしとあるのじゃが、日記とかを書いてもいいのじゃろうか?

 多分…、いいんじゃろうな。

 よし、残りは日記を書くのじゃ。


 わしは、ノートに今日の日付を書いた。




 この番外編の裏話とはいきませんが、作者の気持ちを連ね書いた近況ノートです。 

 番外編のリクエストも受け付けておりますので、ぜひコメントください!


https://kakuyomu.jp/users/ioriyuuki/news/16817330647654326222

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