第15話 祖父

「おはようございます、カイム様。午前中は本当に楽しかったですね。お昼寝は、十分ですか?」

「うん、もう八歳なのに、ベッドまで運んでくれてありがとう」

 ジャパンだと八歳は小学二年生とかだから、結構まだ小さい気がする。


「いいえ、カイム様、細いので、全然大変じゃないですよ?」

 僕も少しは成長したが、それでも、小さいのは変わりない。

「もうすぐ、執事長おじいちゃん仕事終わるかな?」

「支度も終わらせるっぽいですから、もう少しかかりそうですね。その間にもう、少し遅れちゃいましたけど、お昼ご飯にしましょう。今日は、お庭で最後のピクニックですよ」

「ピクニック!!」

 お花見ピクニックってところかな?僕は誕生日が春で、ちょうど庭の桜がきれいに咲いているから、より楽しめそうな気がする!


 僕たちは、お花見ピクニックを終えて、部屋に戻ると、執事長がいた。

「執事長!もういたんだね!」

「はい、仕事が早く終わりましたので。お待たせしました」

 執事長は腕を広げて迎えるようなポーズをする。


 僕は、それを察し、走っていき抱き着く。

「ううん、待ってないよ!」

 僕は顔を上げながら、満面の笑みを浮かべる。

「ふぉっふぉっふぉ、そうですか。ところで、お花見は楽しめましたかの?」

「うん、楽しかったよ!」


 あの桜の木は、先々代執事長就任祝いにセルトファディア家が植えたものらしい。

 執事長はその手伝いをしたらしく、いつも桜が咲くのを楽しみにしている。

 僕は、まさか異世界(多分)で桜が見れるとは思ってなかったから、大満足だ。

「おお、それは良かった」

 執事長は満面の笑みで僕の頭を撫でた。


 今日は、出発の日。セルトファディア領最果ての村。森の奥の小さな村で、若者はほとんど都会に出稼ぎに行っているから、住民はほぼ高齢者。

 過疎地域で、主に特産物もないから、町おこしとかは、壊滅状態。


 そんな村に左遷される僕は、ワクワクの気持ちが胸を押しつぶしていた。

「うーん、やっぱり出発の見送りは来てくれないよね?」

「しょうがないですよ。あなたの才能を見抜けないような方々が来るわけないじゃないですか」

「そうだよね、そういえば、昨日ピーノが連れてきたいって言った人は?」

「はい、こちらです」


 ピーノの後ろに隠れていた少女。年は僕より五つくらい上っぽい。

「こんにちは、僕はカイム・セルトファディアです」

 簡単に自己紹介を済ますと、少女はえっと、と話す素振りを見せる。

「アタシは、リーナ。苗字は無い。よろしく」


 苗字ナシは、奴隷や差別身分にみられるものだが、奴隷印が見当たらないため、何らか事情で苗字を名乗れないか、記憶喪失かである可能性が高い。

 多分前者であると思うけどね。

 腰まで伸びた白みがかった金髪とすべてを吸い込むような黒い瞳のリーナは、俯きながら何かつぶやく。


「カイム・セルトファディアね…。よくわかんないけど、名前の響きは面白いじゃない。へぇ…殺しがいがありそうだわ」

 そのつぶやきは、誰にも聞こえていなかった。



 第十五話、祖父まで読んでくださり、ありがとうございます!

 執事長とリーナについて気になった!っていう方は、★評価よろしくお願いします!


 

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