第16話 会議

 僕たちが、質素な馬車に乗り込むと、すぐに出発し、セルトファディア領最果ての村を目指した。

 最果ての村は、当初の計画は城塞都市だったが、ローダ子爵領との境目にあり、敵対していると勘違いされるのを防ぐため、計画は失敗に終わり、それ以降、村への支給や、補助は手薄になり、崩壊寸前だという。


 僕は、そんなところに追放されたけど、どうしようか。

 まずは、町の復旧たよね。ピーノ達にもいろいろ聞いてみようかな。

「ねぇ、町に着いたら、初めに何をしようか?」

 手を一のポーズにして顎にあてる。かわいいでしょ?


「そうですね、町の復旧が一番でしょうね。執事長はどうですか?」

「ふぉっふぉっふぉ、わしはもう執事長ではないですぞ、ピーノ君。そうですな、わしもピーノ君に賛成です。隣町と交流ができるように、道路を整備するのも早めに行いましょう」

 執事長おじいちゃんは、いつの間にか持っていたコップで緑茶を飲んでいる。

「どうして?」


「最果ての村、正式名称ネンガ村は、支給が少ないことはご存じですよね?隣の村は、少し離れてますが、隣の村は地方村にしては発展しているので、支給を分け与えてもらえる可能性があります」

 代わりにピーノが答えてくれる。


「そうですな、それに、ネンガには特産物と呼べるものはありませんが、自然環境が豊かですから、それらを利用した商売相手にもなってくれるでしょう」

 執事長はお茶をすすりながら、ピーノの説明にプラスして教えてくれた。

 ていうか、こっちの世界に緑茶あるんだね。また今度みんなで、和食パーティーとかやろうかな。


「じゃあ、村の復旧をしたら、隣町とつなげればいいんだね?」

「はい。隣町との街道をつなげるのは、わしに任せてくださりませんかの?」

「執事長が?大丈夫?」

 元執事長とはいえ、老執事であるのには変わりないから、腰とかやっちゃったら、大変だしね。僕も前世、おじいちゃんに引っ越しの準備手伝ってもらったら、腰やっちゃって、おじいちゃんと二か月同居生活したから。あれは大変だったな…。


「ふぉっふぉっふぉ、なめられては困りますぞ。坊ちゃん。わしはまだまだ現役。どんなことにもお役に立ちまずぞ」

「ありがとう、助かるよ!ところで、リーナは最果ての村でやってほしいコトとか、やりたいこととかある?」


 さっきから、何も話さなかったリーナに話題を振ろう。仲良くなりたいしね。

「アタシのしたいコト?肉、肉が食いたい」

「お肉か…、何肉がいい?牛肉?」

 うーん、ハラミ食べたい…タン塩食べたい…。

「なんでもいい、とにかく肉だ肉」

 肉への執着心強すぎだろ、リーナ。


「じゃあ、食料の確保も必要になるから、その時に、肉を多く調達しよう」

「グッジョブだ。カイム!」

 おっと、リーナ?僕追放されたけど、侯爵の子息だよ?呼び捨ては良くないんじゃないかな?なんちゃって。でも、歳も、ピーノたちと比べると、近いし、仲いい友達みたいになるといいかも。


「じゃあ、お肉のために頑張って村を復旧させるぞ!」

 すべては牛肉のための、そして僕のスローライフのための、村復旧作戦会議は、村に到着するまで、盛り上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る