第17話 拒否

 ネンガ村に着いた僕たちは、とりあえず、住民を探すことに苦労した。

 家に訪ねてみても、帰ろ、と突っぱねられてしまう。

 取り立てだと勘違いしているのかな?僕が領主になるって言ったら驚くかな?


 とりあえず、次の家で、名乗ってみよう。

 ノックして、僕は勢いよく深呼吸する。

「こんにちは!今日からネンガ村の領主になるカイム・セルトファディアです!お話させてもらえませんか?」

 精一杯の大声で、聞いてみる。


「どうせ、取り立てて、お前ら貴族の肥やしにするんだろうが!帰れ!」

 家の中から、低く、野太い声で怒鳴り返される。うぅ、怖い…。

「違いますって、僕ってば、この村を復旧させるために来たんです!」

 どうにか、話を聞いてもらいたいんだよね。

「う、嘘だ!そんな貴族の言葉なんて信じてたまるか!」

「そうよ!そんなこと聞くつもりはないわ、帰って頂戴!!」

 女性も参戦してきた。ちょっと待って、形勢不利だよね、これ。

 でも、男性のほうは少し動揺しているみたい。アプローチかけてみよう。


「いや、本当に違うんです!僕、本当にこの村を復旧させたいんです!」

「う、嘘だ!そんなことは無いはずだ!貴族ってのは、もっと自己中で…」

「違いますって!僕は自己中じゃありません!この村の住人の皆さんと仲良くしたいんです!」

 ちょっと待って、僕自己中かな?自分で左遷されに来たよ?


「クソ、そんなはずが、そんなはずが…ある、ない、いや、あるはずない!」

「えぇ、ホントなんですって!聞いてくださいよ!」

「あぁぁ、もう、聞いてやるから黙れ!」

 勢い良く、男性が、ドアを開けて、僕たちの前まで来てくれた。良かった…。


「で、領主ってのは、何処にいる?」

 執事長おじいちゃんに話しかける、体格のいいおじさん。

「ふぉっふぉっふぉ、こちらの坊ちゃんでございます」

「坊ちゃん!?そんなのどこに!?」

 おじさんは、おじさん目線できょろきょろしているから、僕が見えていない。

 僕は、おじさんのズボンを引っ張って、ここにいますよ?と話しかける。

「うわぁ!びっくりした!!」


「お、驚かせてすいません。僕が、カイム・セルトファディア。今日からネンガ村の領主になります。よろしくお願いします」

 僕は、腕を腰のほうに回して敬礼する。

「お、お願いします…てか、こんな小さい坊主に村が経営できんのか?」

 おじさんは、執事長にこしょこしょと聞いているが、丸聞こえだ。


「ふぉっふぉっふぉ、もちろんですぞ。カイム様は天才でありますからのう」

 おじいちゃん、そんなことないよー。えへへ。

「そうかい、で、この坊主…あっ、えっと、坊ちゃん…?が領主ってことだな…ですよね…?俺は、ゾルフ・ネンガだ。代理村長をしている…、あっ、ます」

「敬語じゃなくて結構ですよ。ゾルフさん、よろしくお願いします。代理ということは、現村長はどちらにいらっしゃるのですか?」


「村長は…、首都だ」

「首都!?」

 まさかのいきなり村長がいないとは、どうしよう!!助けてド●えもん!

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