第14話 人選

「じゃ、じゃあ、私、連れてってもらえるんですか!?」

「うん、もちろんだよ。僕はピーノがいないと何もできないからね」

「うふふ、ありがとうございます。じゃあ、さっそく決めていきましょう」


 ピーノも随分とおとなしくなった気がする。前までは、一緒に興奮しちゃって、熱くなってたのに、うふふ、で済むようになっている。人間の成長は見るのが楽しいのじゃ、なぁ、お前もそう思うだろう?婆さん。


「そうだね、面白い人を連れていきたいな」

「面白い人ですか…そうですね、執事長さんはどうでしょう?」

 いきなり執事長はきついだろ。副室次長に引き継ぎも行わないといけないし、すぐには無理だろうなぁ(まぁ、引き継ぎが終わればついてきてくれそうな感じがするんだよね)。


「うーん、凄くいいアイディアなんだけど、すぐには無理だよね…」

「確認してきますね。行ってきます」

「お願いね!」

 ピーノはダッシュで僕の部屋から出て、執事長室へ向かった。


 ピーノはノックする。

 すぐに、どうぞ、という低く、はっきりとした声が聞こえる。

「失礼します」

「何か用かね?ピーノ君」


 灰色にきれいに染まった髭と髪。黒く細い目に、しわの入った顔。またそれが、威厳を発している。眉間にしわがよく寄っていて、一見こわい。

「カイム様が、執事長に、ついてきてもらえるか聞いてくる依頼を受けたのでまいりました」


「いいよ」

 老執事のおずまし気な顔から、一気に孫を見るおじいちゃんの顔みたいに緩む。

「へっ!?」

 ピーノはてっきり断られると思っていたから、予想外の声を上げてしまった。


「今、引継ぎ用の資料を作成するから、そうじゃの、一時間で終わると伝えておくれ。準備が終わり次第、部屋に伺うと」

「わっ、分かりました。ありがとうございます!」

 ピーノは嬉しさがあふれて、深くお辞儀をすると、部屋から出るやすぐに、走り出し、僕の部屋に来た。


「失礼します」

 どんなに急いでいても、礼儀は忘れないメイド精神が、ピーノの真面目さをしっかり表現している。

「どうだった?」

 ピーノは、手をぐっとにして、

「明日、ついてきてくれるそうです!」

と、自分事のように喜びながら、報告してくれた。


 こうやって、気持ちを他人と共感するって、前世ではありえなかったことだから、喜びましましだ!

「あぁ、座りなよ。うーん、僕はピーノと、執事長おじいちゃんで十分なんだけどな」

「そうですね、でも私一人のメイドだと、少し心もとなくありませんか?」

「何言ってるの!?ピーノが一番いいし、ピーノが心もとないなんて、絶対あり得ないよ!」


「うーん、でも私が心配なんですよ。一人、連れていきたい者がいるのですが…」

「いいよ。人数は多いほうがいいよね。きっと楽しくなるし」

 ピーノの連れてきたい人は、出発するときに来るそうだから、どんな人かとても楽しみだな。

 そして、ピーノと、追放前の謎テンション会話が弾んでしまい、僕は知らぬうちに寝てしまっていた。

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