第7話 楽園

 僕の第一言語の日本語を除き、一日目にしてルーン語をマスターした僕は、三日間をかけて、ピーノが使える言語をマスターした。

 英語は、日常会話くらいならできるけど、やっぱり、英語も不自由が無いように解析を頑張った。


 嬉しいことに僕の頑張りは、家族に知られなかった。

 ピーノは、五歳の儀式で、スキルと、この才能を一気に披露しましょう、と計画を立てている。なんだか、左遷されたいって思ってると申し訳なくなるけど、気にしないことにしよう。


 僕の人生だからね。一回目のうまくいかなかった分、楽しみたいし。

 そして、僕とピーノの書斎閉じこもり楽園生活は、ここから始まった。


 まず、この国(始めはうまく聞き取れなかったけど)、リシエル王国の歴史、それから、一通りの教養。

 リシエル王国では、目上の人への謁見の仕方が、独自の物が多いから、その時その時で覚えればいいそう。そんなに、目上の人に会う人生ではなさそうだけどね。


 やがてこの家を継ぐ領主になるための知識。継ぐつもりはさらさらないけどね?

 経営学などの、領地運営に関わる勉強はもちろん、領地の町の工事などの効率を上げるために、土木や、建築の勉強。

 戦いに備えるための戦術、地理学。


 僕とピーノは、書斎という楽園から抜け出せなかった。


 言語の習得からはや三年。

 僕が十五歳まで、時間をかけて覚えることをこの三年でこなした。

 そのおかげで、魔術のレパートリーが大幅に増えた。嬉しいな。


 勉強中によく使っていたのは、記憶魔術という、聞いたものを自動的に整理してわかりやすくまとめてくれたり、忘れないようにしてくれるチート魔術だ。

 ピーノと主要言語を勉強している途中にゲットしていたらしいが、僕がまだア●クサの使い方がわからなかったから、存在を知ったのは最近。


 最初に、使っていた、と言ったが、常時発動系魔術だったらしく、知らぬ間に効果が出ていた。だから、あんなに勉強がスムーズにいったのかぁ、凄いな、魔術。


 重要案件、ア●クサは、魔術を自動的に覚えてくれるシステム。他人が言った魔術を覚えたときは、脳内に音声が流れるが、自分の中で、編み出した魔術などは、教えてくれない。

 つまり、翻訳魔術や、訳書魔術、記憶魔術などは僕の創作魔術に当たる。


 魔術編み出しちゃったよ。新魔術、新魔術、ふふっ、ワクワクするね。

 発動した魔術の結果を教えてくれるのもア●クサだ。

 解析完了というあの音声はア●クサによるものだ。

 まだまだ、機能はありそうだから、ゆっくり研究していこう。


 そして、最重要案件。僕はまだギリギリ四歳で、明日が誕生日。

 つまり、運命が決まる日。家系スキル、スキルが儀式によって発現する日。

 八歳までの命になるか、左遷されて生きてゆけるか。


 そんなことを考えていると、うとうとしてくる。あまり気にすると、ストレスで寿命が縮んじゃいそうだしね。

 うん、気にしないで明日を迎えよう。明日死ぬわけじゃないし。


 僕は運命の精霊に祈りながら、眠りについた。

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