ドラゴニック・メテオドライバー

 僕の叫びの後で炎を纏った剣はさらに伸びていき、30メートル程あるモンスター二体を上下に真っ二つにした。


 グッガァァァアァァッッッ!!!

 グォォォォォォッッッ!!!


 そして、断末魔を上げたモンスターが全身を炎に包まれた瞬間だった。


 ダッガァァァァァァンッッッ!!!


 けたたましい音を辺りにぶちまけながら爆発した二体のモンスター。不思議と爆発の衝撃は僕やサラマンダーの方には来なかった。


 どうやらモンスターを包んだ炎が膜のようなシールドみたいになって衝撃を外に出さないようにしているみたいだ。


 そのせいなのかは分からないけど、爆発のエネルギーが炎の勢いを増してくように見えた。そして中にいるモンスターは、跡形も残さずにチリとなって炎の中で消滅していった。


 だけど、大きな炎はそのまま残って燃え盛っている。いつ消えるのかなと、このままだと草原が丸焼けにならないかなと思っていた瞬間。


 フンッ!!!


 僕は既に炎を失って元の姿に戻った剣を炎を切るよう振り抜く。何となくだけど、剣がそうしろと教えてくれたような気がしたから。


 その直後、炎が縦に真っ二つになり一気に消滅した。


 ただ、驚いたことに、あれだけ激しく燃え盛っていた炎なのに緑の草原はどこも焼け焦げた様子も無かったのだ。


 その光景に驚愕するばかりで、僕は手に持つ剣を眺める。


 ……違う。これはこの剣がやったんじゃない。


 そう思った僕は真後ろにいるサラマンダーの方に全身を向けた。


 確かにあのモンスターを切ったのはこの剣だけど、あのモンスターを爆発させ消滅する程の炎を放ったのはサラマンダーなのだ。


 そして敵以外に被害が及ばないようにしたのもサラマンダーの能力なのだろう。


 強く、激しく、そして優しい炎。


 サラマンダーもまた竜王同様に国民に愛されるドラゴンなんだと確信できた瞬間だった。


 サラマンダーは何も言わずに僕の事を見つめるだけなんだけど、ふと、視線を上げて厳しい目付きになった。


 そして僕もゆっくりと反転し、そちらに視線を突きつける。


 僕とサラマンダーの視線の先には四体のモンスターが固まってこちらを睨みつけていた。


 次の瞬間、僕の後方でサラマンダー以外の竜が着地した気配がした。


 多分、竜王とリヴァイアサンとワイバーンとヒュドラがサラマンダーの横に並んだのだろう。


 目の前に四体のモンスターしかいないところを見ると、リヴァイアサンの方のモンスターは竜王達が仕留めたのだろうと想像できた。


 そして体制を整えるためにワイバーンとヒュドラが一旦引いて横並びになったのだろう。


 目の前には巨大なモンスター四体。こちらは巨大な五体の竜と一人の人間。


 最終決戦の前の暫しの停滞に僕の全身はビリビリと震え出す。


 それもそのはず、今年の身体測定で身長が168センチと判明した僕以外の存在は、30メートルの巨体。息遣いだけでも大気を揺らしている気がするし。


 ただ、それに恐怖感があるかと言われればそうでは無いと即答出来る。


 僕自身、身体の中から闘士が湧き出し全身からもオーラが出ているのが分かる。ついでに勇気もやる気もてんこ盛りだ。


 何故なら僕の後ろには、この『グラン・エルディン』を守護する五体の竜がいるのだから。


 だから僕は剣を握りしめて構え、モンスターを睨みつけながら声を出した。


「ここは僕に任せてください、一気にいきます」


 すると、頭の上から竜王の超えが降りてくる。


「お前……やれるのか?」


 そんな言葉を聞きながら僕は腰を落として剣を担ぐように構え直し、短く答える。


「任せて……」


 ぼくの答えをどう捉えたか知らないけど、竜王は暫く何も言わずにいた。けど、突然こんなことを言ってきた。


「お前、名前は?」


 そう言えば名乗ってなかったけっ?


 でも、僕のことを何らかの方法で見てたみたいだから、知っててもおかしくないんじゃないのかなとも思うけど。


 とは言え竜王が喋りだした時から『お前』呼ばわりだったし。


「僕の名前は菅原海斗だよ」


 そう言って暫し、「ふっ……」と軽く微笑んだ息遣いが聞こえた。


 その後すぐに竜王の声が降ってくる。


「分かったよカイト・スガワラ。お前に任せた」


 その呼ばれ方に異世界っぽさを感じつつ、僕は勢いよく地面を蹴って四体のモンスターに突っ込んでいく。


 すると……


 ガァァァァァァッッッ!!!

 ゴォォォォォォッッッ!!!

 グゥアァァァァァァッッッ!!!

 グギャァァァァァァッッッ!!!


 威嚇するように叫びをあげるモンスター達。


 四つ足で低く構え、今にも僕めがけて飛びかかってそうだ。


 そんな中、ぼくは背後に様々なエネルギー体の気配を感じた。


 膨大な熱量が。鋭く吹き荒れる竜巻が。激しい水流が。九つの口から発せられる衝撃波が。


 そして凝縮された光源のエネルギーが背後で絡み合いながら接近してくる気配を強く感じ、そして僕は剣を右手で持って後ろに回した。


 ビシュッッッッッッ!!!


 五体の竜から放たれたとてつもなく膨大なエネルギーを剣に纏わせ、一気に引き戻す。


 その剣を両手でしっかりと握り直し、唐竹割りの様に縦に振り抜く。そのままの勢いで軸足を踏ん張り、最初の斬撃に追いつかせるように剣を真横に振り抜いた。



 ドラゴニック・メテオドライバァーーーーーーッッッ!!!



 最初の縦の斬撃に横の斬撃がたどり着いた瞬間、五つの膨大エネルギーが絡まり合って渦巻きあい……


 大きく……大きく……さらに大きくなっていく。


 その大きなエネルギー体はいつしか巨大な円形となって、四体のモンスターを一気に飲み込むと……



 ズッバァァァァァァンッッッ!!!



 けたたましい衝撃音と、おびただしい衝撃波が放出された。さすがにサラマンダーの時の様に、エネルギー体の中だけで衝撃が収まってはくれなかった様だ。


 僕は全身に叩きつける爆発のエネルギーを真正面で受け止めようと、剣を構え直したたその瞬間。


 目の前が暗くなると地響きを上げて五体の竜が目の前に立つ。


 当然、僕の全身には爆発の衝撃は届かなかった。

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