必殺、グラン・バーニング

「ちっ! 面倒なヤツらが来やがった」


 そう言って竜王が睨みつける先には竜王くらいの大きさのモンスターが八体確認出来た。しかも四体のドラゴンと交戦中の様だ。


 裂けた口から火を拭きながら応戦するサラマンダー。所々を切り裂かれた大きな翼で竜巻を起こすワイバーン。


 至る所からドロリと血を流す、九つの首で噛み付くヒュドラ。大きな切り傷が何ヶ所もある尻尾を振り回して攻撃を繰り出すリヴァイアサン。


 治癒魔法を施したとはいえ僕と戦ってボロボロになってる四体のドラゴン。何とか連携で凌いでいる様に見えるけど、明らかに劣勢だ。


 ひょっとして万全な体制だったらと思うと胸がチクリとしてしまう。


 そんな事を考えていると、ドラゴンと戦っているモンスターの一体が竜王に気付いたようで頭をこちらに向けた。そして次の瞬間、勢いよくこちらに向けて飛び上がってきたのだ。


「しっかり捕まってろよっ!」


 そう言って竜王はさらに降下のスピードを上げると、急上昇してくるモンスターに勢いそのまま頭突きを食らわした。


 その衝撃に一瞬振り落とされそうになる。さらに両手に力を込めて耐えていると「ギャンッ!」っと悲鳴を上げたモンスターが額から血を流して仰け反っているのが見えた。


 その横を通過していき、いよいよ地面にうつ伏せで着地した竜王から飛び降りた僕は、エクスカリバー(?)の方に駆け寄ろうとして呼び止められる。


「待て、あの剣ではお前の力を出し切れない。これを使え」


 そう言った竜王が小声で呪文詠唱を始めた。すると、僕の目の前の地面に金色に光る魔法陣が浮かび上がった


 そして、そこから持ち手を上に一本の剣が現れる。


「使ってくれ、それこそ本物の『勇者の剣』だ」


 四体のドラゴンの事を考えると躊躇なんてしていられない。僕は素早く右手を突き出して持ち手を握り、一気に引き抜いて一振。


 エクスカリバー(?)よりもシンプルな剣だけど一振した後に着いてくる残光は眩く、持っているだけで物凄いエネルギーを感じる。


 それに……何だろう……すごく手に馴染む。


 最初に見た時はエクスカリバー(?)より古臭く重たそうな感じがしたけど、握りやすいしとっても軽い。


 一振した時も何の違和感もなく思った通りの軌道を描いてくれる。


 見たのも触ったのも初めてなのに、ずっと前から使っていたような錯覚をおぼえた。


 例えは悪いかもしれないけど、僕は中二の頃に買ったシャーペンをいまだにつかっている……いた。


 それは書きやすいとかだけじゃなく、触り心地や掴み心地、長さや重さ、ノックの感覚や音。その全てが僕に合っていて、まさにあのシャーペンじゃないと字が書けない程の、僕の唯一無二の相棒だった。


 まさにその感覚がこの剣にはあったのだ。


「よしっ!」


 そう呟いた僕は視線を戦いの場に持っていく。そして竜王と同じタイミングで飛び込んで行った。


 竜王は一番劣勢なリヴァイアサンに、僕は一番近いサラマンダーの方に向かう。



 すぐに戦いの場に到着した僕は目の前で戦っているサラマンダーとモンスターの脇を瞬時に通り過ぎ、今まさにサラマンダーの後ろから襲いかかろうとするモンスターに剣で一撃を食らわした。


 グガァァァァァァッッッ!!!


 悲鳴を上げ、後ずさるモンスター。


 それに気付いたもう一体のモンスターが尻尾を振り上げ僕に叩き込もうとする。が、僕はそれよりも早くその場からジャンプする。その素早さや到達した高さには驚くんだけど。


 えっ? 僕ってこんなに身体能力高かったっけ?


 エクスカリバー(?)でかなりの魔力と攻撃力は得た気がしたけど、はっきり言ってあの時よりも桁違いに動けるし、体内に感じる魔力は倍以上と言う表現でも追いつかないくらいだし。


 上昇するエネルギーがなくなり、空中でモンスターを見据えた僕は空中を蹴る……蹴った。


 いや、本当はなんて表現したらいいのかわからないんだけど、そんな感じと思って貰うしかないんだけど。とにかく地面にいる時みたいに空中を蹴って勢いよくモンスターとの距離を縮める。


 そして縦に何度も回転して勢いをつけ、モンスターの首に剣を叩き込む。


 ギャアァァァァァァッッッ!!!


 耳をつんざく程の絶叫を上げたモンスターは慌ててサラマンダーから距離をとり、そして僕はサラマンダーの真横に立つ。


 ただ、よく見れば最初のモンスターも今のモンスターも派手に切り裂かれ血を流してはいるけど致命傷とまではなってないようだった。


 二体が揃い、漆黒の瞳を僕たちに向け威嚇している。


 これ程の剣でも倒せないのかと思っていると、何となく……そう、何となくこの剣の使い方が分かったような気がした。


 いや、多分だけど剣の方から教えてくれてる……そんな気がしてならない。


 そして……


「サラマンダーさん、お願いがあります。僕に炎を吐いてください」


 サラマンダーの方を向かずにそう言うと、頭上から言葉が降りてきた。


「どういう事だ? 何か作戦でもあるのか?」


 その声に僕は剣を構え直して答える。


「はい、アイツらを倒すには僕の力だけじゃ駄目みたいです。だからサラマンダーさんの力を貸してくださいっ!」


 そう言って僕は地面を蹴ってモンスターの方に駆け出した。その直後、背中に物凄い熱を感じる。


「ありがとうございますっ!」


 そう叫んだ後、僕は剣を右手だけで持ち背中の方に向ける。すると、サラマンダーが口から放った炎が剣にまとわりつく感触がやってくる。


 僕は二体のモンスターの目前で停止し、軸足を踏ん張って右手に持った剣を引き寄せ、両手で握り直し、そして横薙ぎに振り抜いた。


 その時に見た剣はサラマンダーの炎を纏い、五メートル程の大剣となってモンスターに迫っていく。


 そして僕は雄叫びをあげた。



 グラン・バーーーーーーニングッッッ!!!

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