第8話 2-4.新しい友人、新しい家

 五年生のクラス替えになると、マンガクラブの中心だったメンバーとは全員違うクラスになった。香田とも、対立していた大村とも。

 どちらかと言うと、元は同じクラスでも、あまり関わりのなかったクラスメートばかり、五年生でも同じクラスになった。


 クラス替えと同時に、回りの世界ががらりと変わってしまった。

 マンガクラブの活動も完全に停止してしまったし、香田と学校内で顔を合わせても話もしなくなった。


 元来おとなしい性質の隆彦は、三、四年生の頃は学校からの帰り道はマンガクラブのメンバーを中心とした七、八人ほどの仲間で賑やかに帰途に着いていたのが、一人で帰るようになった。


 一人での帰り道、街路樹の下の土に集まるアリを見つめるのが癖になった。


 アリ達は地面に出てきたと思ったら土の中へ入って行く。

 よく見ると、土にアリが通るための無數の穴が空いている。

 この下には本などで見たことのあるアリの巣があるのだろうが、地面の下にそんな生活空間があるとは驚きだ、といつからか思い、学校の帰り道には街路樹あたりに屈み込んでアリやアリ達がうごめく土を見ることに夢中になっていた。

 地面の下の世界はどうなっているのか、アリの巣のそのまた下は…、と幼稚園の頃、宇宙のことを考えたり、となりの家を覗いたりしたのと同じような好奇心で土の細かい目を見つめていると、家は近いが今回初めて同じクラスとなり今まで話したことのなかった高木が声を掛けてきて、一緒にアリの観察をすることから始まって、互いの家を行き来して遊ぶようになった。

 今までと違う新しい友人関係が始まった。


 夏休みに、隆彦の家は建て替えられることになった。


 ノミでほじくれば隣りの様子が見える壁も、汲み取り屋が来ていたぼっとん便所も、沸かすたびに浴槽の一部が剥がれて木の屑がいつもお湯に浮かんでいた風呂も、全部建て直した。


 三畳間ながら初めて自分の部屋ができたのは嬉しかったが、玄関側にあった台所と裏口にあった便所が反対の位置になり、汲み取り屋が入りやすいように裏口にあった土間は台所とステンレスの風呂場になり、家の面積は広がったはずだが、勝手口は狭い裏道に向けてやっと開く程度で、家の中に土の部分がなくなり、きれいに、便利にはなったが、どこか圧迫感を覚えた。

 土間にもアリの巣があるのが嬉しくなっていたが、全くなくなってしまった。


 

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