第5話 2-1.マンガクラブ

 小学校は、地元の小学校へ歩いて行くが、集団登校の集合場所まで長屋の子どうしで誘い合って行くことになっていて、一年生の時は何軒かの上級生に誘われ、年々下級生を誘いに行くようになったが、一緒に行くからと言って会話する訳でもなく、ただそういう決まりだから一緒に行くだけで、集合場所へはすぐ着くし、ほぼ黙って行くことが多かった。


 隆彦は幼稚園年長で一時活発にはなったが元来の性格がおとなしく、成長とともに内向的な面が目立つようになっていった。

 小学校に入り、はじめのうちは元気に友達としゃべり笑っていたが、体育の時間にサッカーのドリブルができず、ドリブルリレーでいつまでも前に進めず、いつもは仲の良い友達も人が変わったように血相を変えて「何やってるんや!」と隆彦に怒鳴り散らした。

 何でそんなに必死になって怒るのか、と思いながら、ボールを前に進めようと思ってもどうしても横や斜めに転がって行ってしまい、他のみんなにとっては簡単なことらしいことが隆彦にはとても難しく、絶望的な気分になり、口々に罵声を浴びせるクラスメートと一緒になって先生も隆彦を責め立てた。

 

 サッカーのドリブルだけでなく、体育、特に球技では毎回醜態を晒し、隆彦は徐々にいじけた、内にこもる性格になっていった。


 三年生に上がってクラスの顔触れが変わっても、特に体育では他の子が簡単にできることができず、すぐに見下され、日常的に罵声を浴びるようになった。

 しかしマンガが好きな隆彦が、同じマンガ好きな友人と組んでマンガクラブを作り、参加する友人が増えてくると、回りの隆彦への当たりも少しずつ変わってきた。

 はじめは、マンガなんて、と見下しバカにする同級生が大半で、隆彦がマンガ家になる、と言ったら笑われた。

 「お前マンガ家になるって、俺らが大人になる頃には、マンガなんか機械が描くようになるんやぞ」と知った風な口を聞くクラスメートも居た。


 いつも行く文房具屋に『まんがペン』という物が売り出されていた。細、極細、太、極太、平、などペン先の種類と、色とりどりの色があり、一本五十円のそのペンを買い集め、マンガを描くことに熱中した。

  

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