エピローグ
#89 とあるイケメンの苦難は続く
無事に初体験を終えた俺とアリサ先輩の交際は、以降も順調だった。
時に怒られたりもするが、ガッチリと固められた信頼という土台が出来上がっているので、何があっても二人の関係を揺るがす様なことは無く、今にして思えば、絶対的真理と信じていた『可愛い子は浮気する』というのも、結局は幼稚で頭の固かった俺の拗ねた考えだった様に思える。
それと、性生活でもすこぶる順調だ。 苦労していた本番のセックスもスムーズに出来るようになりつつ、お互いが、相手を気持ちよくさせたい、喜ばせたい、という献身的なプレイを積極的に取り組み、俺もアリサ先輩も未経験からのスタートだったのに、今ではアレもコレも、こんなのはどうだ?と楽しめるようになっていた。
そういう意味でも、俺とアリサ先輩はベストパートナーなんだと、毎回エッチするたびに強く実感している。
◇
西高では、冬休みが終わると3年生は自由登校になるのだが、既に指定校推薦で志望大学の合格が出ているアリサ先輩は毎日学校に登校していた。
しかし、西高は地元でも有名な進学校であり、周りの同級生たちみんなが受験目前の超デリケートな時期なので、アリサ先輩は学校に来てても他の同級生たちには相手にして貰えず相当ヒマそうで、今まで以上に1年の俺のクラスに遊びに来てたし、放課後なんかも俺が図書当番の日は毎回図書室に遊びに来るし、部活がある日も料理部にも顔出しては一緒に混ざって試食を楽しんだりもしていた。
因みに、料理部では学校祭の時にアリサ先輩のお陰で大いに儲けさせて貰った恩があり、アリサ先輩は完全な顔パスだ。 誰も文句言わないし、むしろアリサ先輩が俺に会いに料理部に顔を出すと、他の部員が「どうぞどうぞ!直ぐにお茶とお菓子の用意しますんで!ゆっくりしていって下さい!」と歓迎する。
やはり、料理部でも元生徒会長優木アリサの影響力は絶大だった。
アフロは、冬休みが明けてからも就職先でのバイトを続けつつ、車の免許取得の為に自動車学校にも通い始めた。
なので、俺んちには全然遊びに来なくなったが、テンザンの散歩をしていると時々ムトーの散歩をしているアフロに遭遇したりして、お互いの近況を話したりする。
アフロとはガキの頃からの付き合い長いし、お互い忙しくて会わない時期はこれまでも何度もあったが、なんだかんだと腐れ縁が続いているので、多分お互いが大人になって結婚したりしても、ずっとこんな感じなんだと思う。
アンナちゃんとは、相変わらず一緒に犬の散歩したり、ウチに遊びに来てはダラダラしたり、お互いの相談に乗ったりと、自称幼馴染な関係が続いている。
但し、流石に一人でウチに泊まって行くことは無くなった。
アリサ先輩は今更それくらいのことで疑ったり怒ったりはしないが、既に恋人の居る俺に対しては、過去の経験から他人に誤解を招くような行動には気を付けている様だ。 その割には、俺の部屋では直ぐ下着姿を見せるけど。
それと、アンナちゃんは学校ではクラスメイトに友達が出来て、少しは学校が楽しくなっているそうだ。 アズサさんとは別にもう一人友達が居るらしく、クラスではその3人でつるんで居るらしい。
因みに、ダンジョンの学園祭以降、処女だと揶揄われたりすることは無いそうだが、ほとんど喋ったこと無い様な陽キャとかギャルの子に合コンに誘われることが度々あり、「その度に『イケメン誘いだす為のエサかよ!』ってツッコミ入れるとみんな喜んでくれる」と疲れた顔で語ってくれた。
アズサさんは、今では卑屈な態度を見せたり泣き出すこともほとんど無くなり、完全にアリサ先輩の妹分となっていた。
精神的だけでなく肉体的にも随分と
これで精神的にも肉体的にも強くなったことでもっと自分に自信が持てる様になれば、元々整った容姿だし、体形はアリサ先輩のシゴキで鍛えられ引き締まったスタイルに変貌したのに豊満なおっぱいは未だ健在なので、その気になれば直ぐにでも恋人が出来る様に思うのだが、本人が言うには「恋愛よりも今は友達と遊ぶのが楽しい」だそうだ。
その友達というのが、アリサ先輩やアンナちゃんや俺のことなので、もうしばらくは今のままの関係が続きそうだ。
アクア先輩とは、完全に先輩後輩の関係に戻っており、俺のことも「ちゃん付け」では無く、「くん呼び」に戻っていて、今の所はそれが維持出来ている。
それと、控えめで大人しい性格だったのが、学校祭を終えて料理部の部長を引き継いでからは、しっかり者で面倒見が良い面も随分と出す様になってて、西高イチの爆乳の影響もあるのか、噂では2年生の男子生徒の間で密かに人気が出ているらしく、既に何人かに告白もされたらしい。
ただ、今のところはお断りしてて未だ新しい彼氏は居ないそうだけど。
因みに、これらのアクア先輩情報は直接聞いたわけでは無く笹山&長山からの情報で、二人も料理部のグルチャで聞いたそうだ。
アクア先輩の場合は、天使のような微笑みを絶やさず、ちゃんとしてればとても魅力のある女性なので、母性のモンスターとしての本性さえ出さなければ女子高生らしい青春を過ごすことが出来るだろう。
元カレとしての負い目のある俺は、陰ながらアクア先輩の幸せを応援している。
図書委員で元相棒の山倉アヤに関しては、催眠アプリ事件以来全く接触していないので詳しくは知らないが、笹山&長山情報では、クラスでは今まで通り真面目な優等生らしく、ただ、オカルトな話は全然しなくなったそうだ。
正直言って俺としては興味ないので、このまま接触することが無ければ何も問題はないだろう。
担任の諏訪先生は、相変わらず教師のクセに痛い振る舞いが目に付いていたが、2月に俺の図書当番の日に遊びに来ていたアリサ先輩と図書室で衝突して、アリサ先輩に口喧嘩で打ち負かされ、それ以来俺やアリサ先輩の前では大人しくしている。
但しこの人の場合は、ちょっと頭がイカレてて油断ならないので、今後も警戒が必要だろう。
兎に角、早く結婚でもして落ち着いて欲しいものだ。
アカネさんに関しては、相変わらずお調子者で料理部ではウザキャラが定着していたのだが、なんだかんだと料理部のみんなと仲良くしている。 そして、春休みに入る頃には料理部の部員らしく、ぽっちゃり体形となっていた。
本人曰く「わたし可愛いし、これくらい太ってた方が愛嬌あっていいでしょ?」とのことだが、ただの肥満の言い訳にしか聞こえず、俺は付き合ってた当時の真面目キャラで清楚系美少女だった頃を思い出しては、諸行無常を感じずにはいられなかった。
◇
3月の
校長は相変わらず西高の校風である自主性を重んじる話に終始してたが、昨年、話が長すぎて当時生徒会長だったアリサ先輩に長話を中断させられたことが効いているのか、あれ以来全校生徒の前では長話はしなくなった。
卒業生であるアリサ先輩は、元生徒会長として卒業生を代表して答辞を述べた。
舞台に立つアリサ先輩は、俺とキスの後のだらしなくトロトロに
俺も、アリサ先輩の制服姿での勇姿がこれで見納めになると思うと、答辞の内容が全然頭に入ってこないほど胸がこみ上げてしまい、目頭が熱くなっていた。
式が終わり各教室でのHRも終わると、校庭には多くの卒業生と在校生が溢れていた。
その中でもアリサ先輩は大勢の生徒に囲まれ、俺が校庭に出た時には既に収集がつかなくなるほどの騒ぎになっていた。
人込みの中心で揉みくちゃにされているアリサ先輩を何とか助け出そうと、「アリサちゃん!」と名前を呼びながら人込みをかき分け近づこうとするのだが、人が多すぎてどうにも近づけなかった。
それでも必死にアリサ先輩の名前を呼び続けていると、俺の声が聞こえたのか「マゴイチ!助けに来て!」とアリサ先輩の声が聞こえた。
その声を聴いて、プッツンした。
目の前にいた知らない男子生徒を掴み上げて振り回してから放り投げ、そこからは目に付いた生徒のケツや太ももを次から次へと蹴りまくった。 勿論容赦なくトゥキックだ。
俺が無言で暴れだしたことで周りの生徒達が俺を避ける様に距離を取り始めたので、俺は殺気を込めて周囲を睨みながら、アリサ先輩が居る方角へ歩みを進めた。
徐々に人込みがモーゼの十戒の様に割れて道が出来ると、その先に未だに揉みくちゃにされているアリサ先輩の姿が視認出来た。
俺が「アリサちゃん!」と再び叫ぶと、アリサ先輩も俺に気付いて「マゴイチ!帰るよ!」と返事をし、絡んでいた生徒たちに次々とラリアットやアイアンクロー喰らわせて暴れ始めた。
俺も助太刀するべく助走をつけて走りだし、アリサ先輩の傍に居た男子生徒にドロップキックを喰らわせ蹴り飛ばすと、アリサ先輩が「今のドロップキック、打点が高かったわよ!流石狂犬ね!」と言って左手を差し出してくれ、俺が体を起こしながらその手を取ると、引っ張り上げる様に立ち上がらせてくれて、俺と手を繋いだまま周囲に向かって「これ以上邪魔するならぶっ殺すぞ!」と声を張り上げ、右手の親指を立てて、首を斬るジェスチャーをしながら舌ベロをダラリと見せた。
まるで
周りの生徒達がみな注目する中、二人で手を繋いだまま校門まで歩いた。
校門まで来ると、アリサ先輩が「ココが最初の出会いの場所だったわね。最後に記念撮影するわよ!」と言い、校門の中央で校舎をバックに二人で顔を寄せ合い自撮りをしてから、二人で手を繋いだまま歩いて俺の家に向かった。
◇◆◇
4月になり、2年目の新学期が始まった。
アリサ先輩が卒業してしまった西高は「きっと寂しくなるだろうな」と思っていたが、意外とそうでも無かった。
2年のクラスでは1年に続いて近藤君や沼田さんと同じクラスになり、アカネさんまで同じクラスだった。 きっと2年のクラスも賑やかで楽しい1年間になるだろう。
そして、料理部の方では、まだ4月の上旬だと言うのに、アリサ先輩の弟であるタカシくんが入部希望でやってきた。
タカシくんが西高に合格していたことは、春休みの間にアリサ先輩の家に遊びに行ったときに直接本人から聞いてて知っていたのだが、まさか料理部にまで来るとは思わなかった。
「まだ4月だぞ? もっと他の部活見てからでもいいんじゃないの?」
「いえ!他の部なんか見る必要ないっす!俺、結構セッカチっすから!」
「セッカチなトコロはアリサ先輩に似ちゃったのね」
「なにこの子!超イケメンじゃん!マゴイチくんの後輩なの?」
アリサ先輩に似てイケメンであるタカシくんに真っ先に興味を示したのは、アカネさんだ。
「後輩というか、アリサ先輩の弟だよ」
「マジで? 姉弟揃って美形だし凄い逸材来たね!」
「俺、マゴイチ先輩に憧れて西高に入りました! マゴイチ先輩みたいに強くて料理も出来るカッコイイ男になりたいんで!よろしくお願いします!」
「強くなりたいんなら、俺じゃなくてアリサ先輩に鍛えて貰えよ」
「ウチのねーちゃんゴリラなんで、無理っす!」
結局、料理部にとって男子生徒の入部希望は非常に貴重である為、誰も異論などなくそのまま入部することになった。
だが、それだけでは終わらなかった。
タカシくんが入部した二日後の放課後。
料理部の本拠地である家庭科室に、新たな入部希望者が現れた。
俺はタカシくんの教育担当に任命されていたので、この日は調理はせずにお菓子をポリポリ摘まみながら、お料理本をテキスト代わりに基本的な作業や道具や調味料などの名前や使い方を教えていた。
他の料理部の面々も、ジュース飲んだりお菓子を摘まみながら、「他にも入部希望者来るかなぁ」とか「次の料理は何つくろっか」とダラダラとお喋りしていたのだが、そんな気の抜けた部活中に家庭科室の扉が突然ガラッと開かれた。
みんな一斉にビクッっとして扉の方を振り向くと、そこには一人の新入生の女子が思いつめた表情で立っていた。
その新入生は、『山中アユミ』
俺が中二の時に付き合ってた元カノだった。
お終い。
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