#82 血塗られたクリスマスイヴ




 16時を過ぎ寒空の下、愛車(自転車)の後ろにアリサ先輩を横座りで載せて、俺は汗をかきながらペダルを漕いだ。


 アリサ先輩の家から俺んちへ向かう途中、アリサ先輩からは小言というかお説教というか今夜の決戦への心構え等を延々と聞かされていた。

 アリサ先輩が言うには、本来なら男の俺がしっかりとリードするべきだと思ったから今まで俺に任せていたが、あまりの不甲斐なさにアリサ先輩も自分がしっかりせねばと、今は思い直しているそうだ。


 思わぬ行き違いで最初のチャンスを不意にしてしまったが、アリサ先輩は俺のことを見捨てていない。 寧ろ、自分がリードしようとしてくれてるほどの気合の入れようだ。


 俺とアリサ先輩に限らず世の恋人同士の間では、小さな行き違いくらいは日常茶飯事だろう。だが今の俺たちはこの程度では動じたりはしない。

 確かにアリサ先輩は先ほど怒って居たが、俺たちはお互い我慢せずに怒る時は怒り、怒られる方も真摯に受け止め反省しているからだろう。 だからアリサ先輩も怒っても直ぐに機嫌は治まる。 これは俺の過去の失敗を教訓として普段からお互いの意見や考えを余すことなく伝えあって来た賜物だと言えよう。

 但し、怒るのはいつもアリサ先輩の方で、俺は怒られるばかりなのが気になるところではあるが、それもまた一興。


 今の俺は、アンナちゃんやアクア先輩と付き合ってた頃の遠慮しまくりの惨めな童貞とは違う。 アリサ先輩に対しては常日頃から「アリサちゃんのおっぱい大好き」「アリサちゃんのおっぱいぶるぶるしてて服の上からでも柔らかそう」「アリサちゃんのおっぱいのこと考えてたらチンコ硬くなっちゃった」などなど、素直な気持ちを伝えることが出来る本音丸出し童貞プリンスだ。

 但し、「流石マゴイチね、イケメン台無しよ」とあわれみの眼差しを向けてくる様な反応が多いのが気になるところではあるが、これもまた一興。




 俺んちまでの半分を過ぎる頃には、雪がちらつき始めていた。

 今夜はホワイトクリスマスになりそうだ。


 家に着く頃には、風は穏やかだが雪の方は本格的に降り始めていた。


 家に入る直前、玄関の前でお互いの体に積もった雪を払い合うと、アリサ先輩は「自転車お疲れ様。やっぱりマゴイチはたくましくて強くて素敵よ」と言って背伸びしながら抱き着いて来たので、腰に手を回して軽く持ち上げるようにして、キスをした。


 普段からエンターテインメント的な演出にこだわりを見せるアリサ先輩にとって、このクリスマスイヴに静かに降り積もる雪は最高の演出なのだろう。


 きっと、今夜はロマンチックなクリスマスになるに違いない。


 雪が降り続ける中、そう確信めいたものを感じながら玄関の扉を開けて、アリサ先輩を中へエスコートした。




 ◇




 晩御飯は、ウチの両親とアリサ先輩の4人で食べた。

 アフロ達にも声を掛けていたが、気を使って遠慮してくれたのか3人とも来なかった。


 食事中は、ウチの両親は相変わらずご機嫌でテンション高くゲラゲラ笑いながら賑やかな食卓となったが、俺もアリサ先輩もこの後のことを考えて、食べ過ぎない様に自重した。

 只でさえ、アリサ先輩はウチの親と食事すると毎回ダウンするまで食べてしまうというのに、ヨリにも寄って今夜はローストチキンや唐揚げなどアリサ先輩の大好物が食卓に並び、「食べすぎないでよ!」と珍しく俺の方からアリサ先輩にキツク注意していた。

 因みにクリスマスのケーキも、「明日の朝、食べるよ」と夜に食べるのは控えた。



 食後、食卓の片付けを二人で済ませた後、俺の部屋に戻りコタツに入ってお茶を飲みながら一息入れていた。



 お互い口数が少なくて、気持ちがたかぶりつつも緊張していた俺は、脳内で何度もシミュレーションを始めた。



 抱き寄せて、キスして、胸を揉む。

 いや、胸は服を脱がせてからか?


 抱き寄せて、キスして、服を脱がせて、胸を揉む。

 でも、キスの後、いきなり服脱がせるとムード壊れないか?

 じゃあ最初に服脱がせればいいのか。


 服脱がせて、抱き寄せて、キスして、胸を揉む。

 俺が先に脱いだ方のがアリサ先輩も脱ぎやすくなるかも。


 服脱いで、服脱がせて、抱き寄せて、キスして、胸を揉む。


 脱いで、脱がせて、抱き寄せて、キスして、胸を揉む。


 脱いで、脱がせて、ハグして、キスで、胸揉む


 脱いで、脱がせて、ハグ、キス、胸


 脱いで、脱がせて、ハグ、キス、胸



 緊張した空気の中、脳内で標準化した工程を復唱していると、不意に「マゴイチ?」と名前を呼ばれた。


 視線を向けると、アリサ先輩は固い表情をしていた。

 流石のアリサ先輩でも、これから初体験となれば緊張してしまうのだろう。

 そもそも、アリサ先輩だって処女で本当は初心な人だしな。

 これまでの俺が不甲斐なくて、アリサ先輩は年上だからと今日は無理してここまでリードしてくれたのだろう。


 ココからは俺がしっかりしなくては。



 俺は立ち上がると、アリサ先輩とくっ付く様にコタツに入り直した。


 そして、抱き寄せてアリサ先輩の頬に右手を添えると「マゴイチの手、冷たいよ?」とアリサ先輩は答えてくれてたのだが、その頬が震えているのを感じると反射的にキスして唇を塞いだ。



 しまった!

 いきなり順番間違えた。



 長いキスをしながら「ココからどうしよどうしよ」と目を泳がせ焦る俺。


 唇を離すと、キスの後はいつもはデレデレに蕩けた表情をするアリサ先輩も、まだ緊張しているのか真っ赤な顔して眼をキョロキョロ泳がせている。


 焦る俺とキョドるアリサ先輩。

 兎に角、前に進めなくては!と声を絞り出す。



「アリサちゃん!」


「な、なななにかな?マゴイチ」


「おっぱい揉んでもイイデスカ!」


「は、恥ずかしいからいちいち声に出して聞かなくても良いわヨ!」


「ハイッ!アザッス!」



 俺の左側に座るアリサ先輩の胸に右手を伸ばすと、アリサ先輩は俺が触りやすいように、胸を張る感じで少しだけ前に出してくれた。


「失礼シマス!」と言ってそっと触れる。


 ニットのワンピースの上から膨らみをすくい上げる様に恐る恐る掌で包むと、アリサ先輩は俺からの視線を避ける様に横を向いた。


 俺は重みを確かめる様に右の掌をゆっくりと動かした。

 一度揉み始めると、その極上の感触に止まらなくなってしまい、無我夢中でモミモミし続けた。


 只管モミモミする俺。

 羞恥に耐えられず顔を真っ赤にして背けるアリサ先輩。


 モミモミモミモミモミモミモミ


 モミモミモミモミモミモミモミ


 俺の股間は既に痛いほどフル勃起している。


 モミモミモミモミモミモミモミ


 モミモミモミモミモミモミモミ


 5分以上経過しただろうか。俺の手がアリサ先輩のおっぱいに根をはってしまったかと錯覚するほどおっぱいから手が離せなくなっていると、アリサ先輩が弱弱しい声で苦言をていした。



「お、おっぱいはもう良いんじゃないかな?」


「は!?そ、そうでした! 念願のアリサ先輩のおっぱいが余りにも柔らかくて気持ち良くて、我を忘れて夢中になってました!すんません!」


「そ、そう。喜んでくれたのなら良いのだけど・・・でも、本番はまだこれからだからね?」


「はい・・・俺!脱ぎます!」


 アリサ先輩にたしなめられて正気に戻った俺は、シミュレーションの内容を思い出し、早速脱ぐことにした。


 有無も言わさぬ勢いで立ち上がって勢いよく服を脱ぐ俺。

 俺の勢いに気圧され、俺が脱いでいく様子を口をポカンと開けて黙って眺めているアリサ先輩。


 ボクサーパンツ一枚になると、俺のフル勃起した股間が驚異的な自己主張をしている。

 アリサ先輩は目を見開き、驚きの表情で俺の股間から視線が外せない様子だ。

 いくら年上と言ってもアリサ先輩だって未経験で初心な女性であり、男性のおちんちんには脅威を感じるのだろう。


 ココで俺の腹が座った。

 やはり、男の俺がリードしなくては。



「アリサちゃんの体が見たいデス! 脱いで貰っても良いデスカ!」


「そ、そうね。私も脱ぐわね」



 アリサ先輩も立ち上がると、ゆっくりとした動作でニットのワンピースを脱ぎはじめた。


 それをボクサーパンツ1枚の仁王立ちで股間をバッキバキにフル勃起させて見つめる俺。


 アリサ先輩はワンピースを脱ぐと、薄いピンクのキャミソールに黒い上下の下着が透けてて、そんな下着姿でタイツを脱ぐ仕草が超絶エロくて、前屈みで突き出したTバックのお尻に今にも抱き着いてむしゃぶり付きたい衝動に駆られるほど、俺の興奮は頂点に達した。



 フンガフンガと自分の鼻息が聞こえる程の興奮状態。


 タイツを脱ぎ終えたアリサ先輩が俺の正面に立ち、見つめ合う。



「あ、アリサちゃん最高に綺麗っす!俺もう我慢出来ない!」



 その時、鼻からツツーと垂れた。


「ま、マゴイチ!鼻から血が出てるわよ!?」



 どうやら興奮しすぎておちんちんだけでなく、頭にも体中の血液が集まっていた様だ。




 ◇




 結果から述べると、この日のチャレンジは失敗に終わった。


 鼻血が出てようが構うことなくアリサ先輩に抱き着いてむしゃぶり付こうとするも、「汚れちゃうでしょ!一度落ち着きなさい!」と怒られ、お互い下着姿のまま俺だけ強制的に正座させられて鼻血の処置をしながらお説教されるが、その後気を取り直して仕切り直し、いざインサート本番を迎えると、全然入らなくてアリサ先輩の方からギブアップを訴えて、この日は敢え無く断念することになった。


 あの天上天下唯我独尊で無敵だと思っていたアリサ先輩が、涙を流して痛みを訴える姿には、流石に俺のおちんちんも元気を無くしてしまった。 今回はどちらが悪いとかでは無く、緊張だとか勉強不足だとか、お互いに色々問題があったのだろうと思えた。


 でもアリサ先輩は、自分のせいで上手く出来なかったと落ち込んでしまっていたので、布団の中でギュっと抱き寄せて、耳元でエルヴィス・プレスリーの「ラブミー・テンダー」を囁くように歌いながら、落ち着くまで背中を優しく撫で続けた。

 鼻にティッシュ詰めたまま歌う俺のロマンチックなイケメンボイスを聞いて、落ち着くどころか吹き出してたけど。


 因みに、お互い裸のままで抱き合っていた為、既に俺のおちんちんは完全復活していたのだが、流石に落ち込んでいるアリサ先輩にこれ以上何かしらのお願いするのははばかられたので、アリサ先輩が落ち着いてから「お先にシャワーどうぞ」と行って貰い、結局俺一人でホワイトなクリスマスを実行した。












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