9部 交際スターット!

#78 どうした!?イケメン



 学校祭二日目は、朝と終了後の片付け以外の時間をアリサ先輩とずっと一緒に過ごした。 但し、アズサさんもずっと一緒で3人でだけど。


 アフロは「食べ物屋が少ないからもういいや」と言って来なくて、アンナちゃんは昨日の激熱青春の主張が尾を引いてて、「西高には2度と行けないし行かない」と言って来なかった。



 アクア先輩に関しては、昨日の片付け時間や今朝挨拶した時の反応を見る限りは、一応は落ち着いていた様に見えた。

 流石にアンナちゃんの激熱青春の主張とアリサ先輩の結婚宣言、そして俺のアリサ先輩への告白を目の当たりにして、目が覚めたんだろう。元々は控えめな人だったし変なスイッチが入ってたのが漸くオフになったんだと思う。


 柏木アカネはアンナちゃんに無理矢理謝罪させられた後、アリサ先輩とアフロがわちゃわちゃモメてる間に姿を消して、それ以降見ていない。 未だに何考えてるのか分からないし、トラブルメーカーであるのは間違いないので、警戒するべきだろう。彼女に関しては山倉アヤ同様に距離を置いて気を付けることにする。 


 アズサさんもアンナちゃんに無理矢理謝罪させられていたが、今朝アリサ先輩に連れて来られて元気が無かったので、俺の方から今日はゆっくり案内すると話すと、途端に元気を取り戻したかのようにテンションが上がり始めて、学校祭実行委員が配布しているプログラム片手にアレが見たい次はコレを見たいと、俺やアリサ先輩を引っ張り回して憧れの西高を目一杯満喫していた。

 彼女に関しては、登校拒否になるまで追い込まれ志望していた西高にも落ちてしまい、長い間不遇の青春を過ごしてきたのを知っているからか、こういう楽しそうにしている姿を見ると、ほっとさせられた。


 そしてアリサ先輩だが、昨夜家まで送って行った時に初めてのキスというビッグイベントでデレデレどろどろになってはいたが、今朝は至っていつも通りで人前でもベタベタイチャイチャしてくることはほとんど無かった。まぁ元々スキンシップが多い人だったから、腕組んだりとかは普通にあったけど。


 ただ、お互い自然と視線が合って見つめ合うことが今まで以上に多かったな。

 多分だけど、恋人になれて嬉しい気持ちがあるけど、人前だとか年上だからとかそういうので理性を働かせて浮かれる気持ちを抑えているんだろう。



 と、周りの女の子の様子を真面目子ちゃんで語っている俺なんだけど、肝心の俺自身はと言うと・・・



 家庭科室では


「チィ~ッス!料理部のみんな~おはよ~!うぇ~い♪ あれれ~?みんな元気ないじゃ~ん!学校祭まだ1日あるんだし、元気出して楽しく頑張らないとダメだぜ~い!うぇ~い♪」


 そう。

 彼女出来て念願のファーストキスをクリアーしたばかりの俺は、沸き上がる幸福感と高揚する気分を抑えることが出来ず、浮かれ散らかしていた。


「売り上げ目標達成まであと少しじゃ~ん!残りもみんなで頑張ろーぜぇ!ほら!部長もアクア先輩もテンションアゲアゲで!」


「マゴイチくんが彼女出来た途端に超ウザキャラに・・・コレが西高イチのイケメンのなれの果て・・・」


「ハハハ、何言ってんだよ笹山っち!細かいこと気にすんな!ドンマイ!」


「なんで私励まされたの!?マゴイチくんの変わりようにドン引きしてんだよ!」


「あ、でも俺!約束あるんで!あとはみんなヨロピク!」


「ウザいから早くどっか行って欲しいと思う」


「ハハハ、長山っち面白いこと言うねぇ!ホントは俺が居なくなったら寂しいクセに!コノ!コノコノ! でもゴメン!カノジョと約束あるし!グッバイまた後で!」




 そして、アリサ先輩&アズサさんと待ち合わせていた校門でも


「チィ~ッス!アリサちゃん!おはよっす!今日もアリサちゃんの綺麗でキュートで美人で美しい美貌に胸キュン止まらないぜ!うぇ~い!」


「どうしたの!?マゴイチ!頭でも打ったの!?」


「ナニ言ってんすかぁ~!元気いっぱいっすよ~!アズにゃんもおはよ!」


「え!?アズにゃん???マゴイチくん、どうしちゃったの!?えええ!?」


「昨日はゆっくり案内出来なかったから今日はゆっくり案内してあげっからね!ほら!テンションあげて行こーぜ!ほら!うぇ~い!」


「う、うぇ~い? ・・・うぇ~い!私、今日はいっぱい見て回りたいです!」


「おっけー!じゃ早速どこ行っちゃう?あっち行く?それともこっち行く?ドコでも案内しちゃうよ~!」


「ちょっと待ちなさいマゴイチ!落ち着くのよ!アナタ可笑しくなってるわよ!」


「いやだなー!いつもの元気一杯ハッピーマゴイチじゃないっすか!」ハハハ


 そうハシャギながらアリサ先輩の肩をバンバン叩こうと手を伸ばした瞬間、アリサ先輩は素早い身のこなしで俺の手を避け、その腕を掴んだ瞬間出足払いで脚を払われた俺はひっくり返って尻もちを着き、一瞬でマウントポジションを取られた。



「いい加減にして頂戴マゴイチ。 今のアナタ、私が大嫌いなチャラチャラ糞野郎になってるわよ?」


 その時、俺の腹に跨り見下ろすアリサ先輩の怒気が籠った鋭い眼がキラリと光った。


「ひゃ、ひゃい!」


「クール気取ってるのにクールになり切れてないいつものマゴイチに戻って頂戴。さもないとこのまま締め落すわよ?」


「ひぃ!?戻るます!戻られます!戻す所存でし!」



 こうして俺のチャラチャラ浮かれモードはあっさりアリサ先輩の手で正気に戻され、これ以降俺が浮かれることは無くなり、そして俺がこの先ずっと尻に敷かれる運命が決まったことを自覚した瞬間でもあった。








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