#28 母親を掌握



 お風呂から戻って来た二人は、なぜかズボンを履いていない。


 女子としては長身なアフロが褐色肌の長い生足とパンツが見えてるあられもない姿だというのにいつもの調子で部屋に入ってくると、続いて普段の堂々とした態度はナリを潜めてまるで俺の視線が気になるかのようにチラチラ俺に視線を向けている優木会長も同じように美脚とパンツが見える姿で入ってきた。


 アフロはいつもはブラの代わりにシャツの下にタンクトップを着ているのに、お風呂あがりのせいかタンクトップを着ておらずじかに体操服を着ていてB地区がさも当たり前の様にくっきりとエレクトしている。そして、下はジャージを履いていなくて先ほど俺のタンスから選んだ赤いのビキニタイプのパンツが体操服に隠れる様にチラ見えしてて、お尻デカイから男物のパンツでもピッチリでプリプリだし生足も全開だ。


 優木会長の方は流石にノーブラじゃないが、俺のTシャツがサイズブカブカで隙間からブラや胸元がチラチラ見え隠れしてて、下は貸したはずのハーフパンツを履いていなくてアフロと一緒に俺のタンスから選んだ黄色と緑のフィットするタイプのボクサーパンツがブカブカTシャツの長い裾からチラ見えしてて、綺麗な生脚が丸出し。



 兎に角二人ともお風呂上りで濡れた髪と露出高いせいでエロすぎる。

 日本人離れしたスタイルの超セクシーブスと西高イチ美人の薄着でぷよんぷよんおっぱいにプリプリヒップと生足は、健康的なエロさが半端無かった。


 俺は口をポカンと開けて相当間抜けな顔して硬直していたのだろう。

 そんな俺を見て「マゴイチンコ、フル勃起じゃん!アリサ見てみ!マゴイチの股間股間!」とアフロが鋭く指摘してきた。


 いつもならクールに否定するトコロだが、今回ばかりは二人のエロい姿が不意打ちだったせいもあって取りつくろうことが出来ず、いつもの様に俺のチンコを狙うアフロから両手で股間をガードしながら逃げる様に自室から離脱してお風呂へ向かった。



 お風呂では一人でシャワーを浴びながら、自慰にふけり平常心を取り戻した。

 賢者となった俺が部屋に戻ると、優木会長が「借りた下着の下にもう一枚ちゃんと履いてるからね!こっちのが涼しいでしょ?」と言い訳するように教えてくれたが、アフロの方は「ウチはパンツ直履きだよん」と当たり前の様に言っていた。

 つまり、優木会長は俺のボクサーパンツを短パン代わりに履いているので、下着丸出しというよりローライズのパンツみたいなものだ。

 しかしアフロの場合は、まさしく下着丸出しの状態。

 だが流石なのは、ブスとは言え外国人風味の顔でスタイルも外国人並みだからなのか、下着姿でもそれが当たり前の様に見えてしまう。 変に恥ずかしがったりせずに堂々としていると、サマになって居ると言うべきか。


 因みに優木会長は部屋に戻って直ぐは薄着であることを恥ずかしそうにしてたけど、俺がシャワーを終えて戻る頃にはその姿に慣れたのか、俺のベッドの上で自前のマクラ置いて堂々と生足放り出してゴロゴロとリラックスしていた。 やはりシャイな俺と違って、他人ヒトんちでも図々しくてフリーダムな女だ。



 俺がエロい姿の優木会長を視界に入れないようにベッドを背もたれにする様に床に座り、ペットボトルのお茶で喉の渇きを潤していると、ベッドの上の優木会長がご機嫌な調子で聞いて来る。


「ねね!夜はどうやって寝るの? 流石にベッドで3人は無理だよね?マゴイチはベッドで寝るの?私とアフロは床?」


「特に決めて無いですけど、まだ寝るの早いっすよね?もう寝る時の事が気になるんですか?まだ夕方4時前ですよ?これから親帰って来て晩飯が先なのに早すぎじゃないすか?」


「だってだって!お泊り会って言ったら、夜、寝る時間がメインイベントなんでしょ?パジャマパーティー的な?」ぐふふふ


 優木会長は、ベッドにもたれている俺に背後から抱き着きそうな程に顔を寄せて、嬉しそうにそう言う。 恐らく『異性と同じ屋根の下、夜を共に過ごすことを意識している』という訳では無く、単純に『友達との初めてのお泊り会が楽しくて仕方ない』だけなのだろう。自前のマクラ持ってくるくらいだし、そんな感じのテンションだ。


 しかし優木会長は無自覚でも、俺の方はそうもいかず、折角優木会長の健康的なエロい姿を意識しないように背を向けて座っているのに、至近距離から耳元で話しかけて来るから耳や首に優木会長の吐息がかかるし、お風呂上りのせいで女の子の甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐり、視覚以外でも俺の性欲を刺激してくるから、先ほどお風呂で一発抜いたばかりだと言うのに俺の股間は既に平常心を失っていた。


 今回のお泊り会、俺たち3人ならもっとドライで淡々と平穏な時間を過ごせるだろうと安易に考えていたが、どうやら予想に反してセクシーブスと美人生徒会長の二人の無自覚エロ(アフロは自覚してそうだが)に振り回され、ドーテーには中々至福でハードな時間を耐えることになりそうだ。




 だがそんな心配を他所に、事態は新たな伏兵の出現で思わぬ局面を迎える。



 5時過ぎに帰って来たかーちゃんに「アッコちゃん!(アフロの本名はアキコ) 下着丸出しでなんて格好してるの!ズボンくらい履きなさい!」とアフロが叱られ、「アナタもよ!女の子が男の子の部屋で下着姿でウロウロしないの!」とかーちゃんと初対面の優木会長もお説教された。


 しかし優木会長は「このパンツがズボン代わりで下に下着履いてるんですよ」とかーちゃんにだけ見せる様にボクサーパンツをチラリと上からめくって中を見せながら釈明すると、「じゃあ仕方ないわね」とあっさりボクサーパンツ姿に許可が降りた。


 アフロがタンスから俺のジャージのズボンを引っ張り出して渋々履いている横で、優木会長とかーちゃんは何故だか仲良さそうにキャッキャウフフと女子トークを始める。


「優木アリサと申します!マゴイチくんと同じ西高の3年です!子犬を引き取って頂けるってことで、ありがとうございます!」


「あら、子犬の飼い主さんなのね。写真見せて貰ったけどすっごく可愛いから楽しみにしてるのよ。うふふ」


「それはそうと~そんなことよりも~お母様!今日はマゴイチくんの未来の嫁として挨拶に来たんですよ!不束者ふつつかものですが、よろしくお願いします!」


「あらまぁ、マゴイチいつの間にこんな綺麗な彼女出来てたの?この子ったら顔だけは良いから相変わらず女の子にはモテるのよね」


「いや二人ともナニ言ってんの?この人俺の彼女じゃないよ?俺いま彼女居ないよ?」とすかさず口を挟むが、二人とも俺の事はマル無視で会話を続けている。


 そして更にアフロも会話に加わる。


「おばちゃん、ズボン履いたよ。コレでいい?」


「アッコちゃん上はどうしたの?肌着着てないんじゃないの?ポッチがくっきりエレクトしてるわよ?」


「だってー暑いんだもん!少しくらいいーじゃん!」


「うーん、しょうがないわね~、ウチのおとーさんが帰って来る前に肌着か上に何か羽織ってよ?あの人、晩酌始めたらセクハラ親父になるし」


「うぃーっす。おじちゃん帰って来るまではコレでいーよね?」


 かーちゃんはかーちゃんで仕事から帰ったばかりなのに、着替えもせずに俺の部屋でそのまま床に座り込んで3人で楽しそうにお喋りに夢中になりはじめた。


 俺はお腹が空いて来たのでそんな3人を放置して今日の夕飯が何なのかチェックしに行くテイで至福でハードなエロ空間と化した俺の部屋から脱出し、一人で台所へ向かった。


 かーちゃんはいつも仕事帰りにスーパーで買い物してくるので食卓に置かれたエコバックの中を確認すると、事前に友達がお泊りに来ると言ってあったせいかパックの牛肉が沢山買ってあり、どうやら今夜は焼肉の様だ。



 焼肉の準備となると、料理部で鍛えた野菜の皮剥きスキルの本領発揮出来るのではないだろうか。 肉は既に薄切りにされているし、ご飯炊いて、野菜の皮剥いてカットすれば良いだけだし、「折角アフロと優木会長が泊りに来た日くらいは夕飯も俺が準備するか」とエプロンを身に着けて焼肉の準備を始めた。



 とーちゃん入れて5人居るからお米は5合洗米して炊飯ジャーにセット。

 さつまいも、人参の皮を剥いてスライスしていく。

 ピーマン、キャベツも食べやすいサイズにカット。

 野菜以外にもウインナーや焼きそばの麺があったので、袋を開けて直ぐに焼ける様に皿に盛り付けておく。

 かぼちゃもあったが、かぼちゃだけは包丁が入らずどうすることも出来なかったので、あとでかーちゃんに任せることにした。


 一通り材料の準備が終わったら、焼き肉用のホットプレートを収納棚から取り出して食卓の中央に置き、後は優木会長の手土産の萬福軒の唐揚げを大皿に盛り付け、レンジでチンした。

 取り皿やお茶碗も5人分用意してほぼ準備が完了したが、まだ俺の部屋では3人のお喋りが盛り上がっている様なので、まな板とか包丁とかの調理器具を洗って片付けて、それも終わってしまったので、仕方なく俺の部屋に行ってお喋りに盛り上がってる3人に「焼肉の準備出来たから、晩御飯にしよーぜ」と声を掛けた。


 焼肉と聞いて「肉ッ!!!」と今日一番のハイテンションとなったアフロとは対照的に、かーちゃんは俺が一人で食事の準備をしたことに驚いたのか、「ま、マゴイチが料理したの!?ウソでしょ!!!」と母親のくせに息子の俺が信じられない様子で、部屋の入口に立つ俺を押し退けて台所へ向かって走って行った。


 優木会長とアフロを連れて台所に戻ると、かーちゃんは「まさかこんなことって・・・」とこの世の終わりかの様な表情で唖然としていた。


「いや、俺料理部だし、野菜切るだけなら普通に出来るし。あ、でもかぼちゃだけは無理だったから、かーちゃん頼むわ」


「アッコちゃん!アリサちゃん!マゴイチがこんな風に変れたのも、きっと二人のお陰よ!ありがとうね!」


 何故か俺が一人で晩飯の準備をしたことが、アフロと優木会長の影響だと誤認されている。

 そもそも俺が料理出来る様になったのは、母性のモンスターアクア先輩のお蔭だというのに。 料理スキルを身に付けた代わりに俺がドレだけの犠牲を払ったと思ってんだ。


「だから俺、料理部だっつーの。二人は全く関係ないし、むしろお昼も二人は喰うだけで俺がほとんど準備したんだし」


「アリサちゃん!いつでもお嫁にいらっしゃい!おばさん大歓迎よ!」


 息子の話、全然聞かねーし。


 後で焼肉食べながら様子見てて気が付いたんだが、かーちゃんの今日のこの態度、どうやらかーちゃん的には優木会長のことをどうにか俺の彼女ということにしたいらしい。

 つまり、それほどまでに優木会長のことを気に入ったということであり、優木会長はウチのかーちゃんにそこまで取り入ることに成功したということで、流石は自主性モンスター。伊達に西高の生徒会長として君臨している訳じゃないんだな。人心掌握も長けているのだろう。


 マクラ抱えてコンビニ店内でウロウロしていた変人だというのが、嘘の様だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る