#27 自主性だけじゃない



 そうめんが茹で上がったので俺の方は鍋から麺をザルに出して、水道水で洗う作業を淡々とこなしていた。


 謎のフィニッシュホールドするぞ宣言?の後、一人興奮気味の優木会長は、シンクで作業する俺の横に来て、ベタベタ俺の体やエプロンを触りながら「そういえばマゴイチのエプロン姿って、お料理系男子って感じで良いよね」とか「やっぱりマゴイチも女の子の手料理とか食べたいって思うの?」など、ご機嫌な様子で喋っていた。


「料理部じゃエプロン姿が死ぬほど似合わないって言われてるんですけどね」とか「女の子の手料理は男子高校生なら誰だって憧れるでしょ」とか適当に返事しながら、大きなガラスの器に麺と冷水を盛り付けて後ろの食卓に振り向くと、いつのまにかソコには中学ジャージ姿のアフロが座っていた。


「うお!アフロ来てたのかよ!来てたんなら何か言えよ、超ビビったじゃん」


「なんかサァ、アリサはその辺の普通の女と違うって思ってたのにスウィーツ女子みたいにマゴイチにあざとくベタベタしてるし、マゴイチはマゴイチでアリサと二人っきりだと気取ったスカシ野郎みたいにクールなフリしてるしサァ、なんかツマンナイっていうかサァ、ウチの知ってるマゴイチはこんな気取ってねーし!もっと面倒で糞みたいなドーテーなんだし!いつものマゴイチを返して!って思っちゃってサァ、なんか寂しくなっちゃったんだよね」


「そういうアフロが一番面倒くせーな」


「今の私は勝利までのビジョンがビシっと見えたばかりで最強の気分なのよ! アフロには悪いけど、マゴイチはいずれ私のモノだからね!」


「また出た謎の宣言。今日は二人ともいつも以上に面倒くさいな。 とりあえずそうめん食べてサッサとクーラー効かせた俺の部屋に戻りましょうよ。火使ってたしここクーラー無いから暑い」


 なんだかアフロが拗ねているが、こういう時は飯食わせればすぐ機嫌は治る。なので直ぐに食事を始める。

 因みに、優木会長はコンビニで買ってきた方の唐揚げを一緒に食べ始めたが、アフロにも分けてあげてて、さっきはあんなコト言ってたけど、なんだかんだとアフロとは仲良さそうだった。



 で、3人でそうめん食べながらこの後のことを話すが、特に何も決まらない。

 お泊りするって決めたは良いが、特別何か用事があった訳じゃないし、その場のノリだけで決めちゃったことだったので、食べる事とお喋りする事くらいしか無い。


 だから、食事の後はクーラー効かせた俺の部屋でダラダラお喋り。

 因みにアフロは一人でゲームやり始めて、喋ってるのは俺と優木会長の二人ばかりだ。



「そういえば、マゴイチって中学まではずっとサッカーやってたんでしょ?なんで止めちゃったの?」


「うーん、サッカーやってるとモテるじゃないですか。でも、俺モテたい訳じゃないんですよね。それに中二の時に部活の後輩マネージャーと付き合ってたんすけど、部活中にそのマネージャーが部室で1年の後輩と浮気してたことあって、運動部で忙しいと彼女とか出来てもあまり構ってあげられずに浮気されちゃうんじゃないかって危機感というかトラウマがあるんすよ」


「モテたい訳じゃないって聞いて「相変わらず適当ね」って思って聞いてたのに、中二の話は結構酷い話ね。 でも、そういうことならもうサッカーに未練とか無いの? 一度くらいはマゴイチのサッカーする姿見てみたかったな」


「未練が有るか無いかと言われると、未練は無いけど、最近運動不足気味だからたまにはサッカーとかで運動したいなって思うことはあるっすよ」


「じゃあじゃあ!これからサッカーしに行こう!」


「はぁ?暑いし嫌なんですけど」


「なんでよ!運動して汗かいてシャワー浴びたら気持ちいいじゃない」


「今日ココに来るときは、寝不足であんまり動きたくないって自分で言ってたじゃないすか」


「つべこべ言わないの!」


 優木会長が一度言い出すと止まらないことは散々身をもって味わってきているので、諦めて庭で軽くリフティングすることにした。 因みに他人事の様に一人ゲームを続けようとしていた金髪アフロも強制連行した。



「久しぶりだから、ちょっと「馴らし」してから」


 優木会長は縁側に座って目をキラキラさせている。

 地べたに置いたボールを右のつま先で巻き込む様に引っかけて上に弾く。

 そこからはひたすらトントンとボールを回転させながら左右のつま先だけで弾き続ける。


 俺がボールを弾くたびに優木会長が楽しそうに数を数える。


「21、22、23、24、25、26・・・・・・53、54、55、56・・・・・96、97、98、99、100! 凄い!久しぶりなのにエンドレスじゃん!」


「いや、コレまだ馴らし。ココから本番」


「まだナニかあるの!?」


 100超えても続けていた俺は、今度はつま先だけから太もも、肩、胸、頭を使ってリフティングを続ける。


「うおぉ!凄い!超カッコイイ!エプロン姿より5割増しでカッコイイ!」


 最後に、上半身を前にかがめて後頭部と首でボールをキャッチして、溜めてから一気に真上に弾いて落ちて来たところを手でキャッチして終わらせた。


「流石に久しぶりだと長時間は疲れる」


 手をパチパチさせながら優木会長は、「やっぱりマゴイチってスポーツマンだったのね!入学式の日にタックルした時から「体の作りが只者じゃない!」って思ってたのよね!」と興奮気味だ。


「アフロもリフティングは得意っすよ。アフロも久しぶりにやってよ」


「えー、メンドクサイんだけど」


「やってやって!アフロもカッコイイところ見せてよ!」


「仕方ないなぁ」


 優木会長におだてられるとアフロも満更でもない様子でサンダルを脱いで裸足になり、ボールをつま先で弾いた。


 アフロは久しぶりとは思えない慣れた足さばきで軽快なリズムでトントンボールを弾く。

「アフロも凄い上手じゃん!」と優木会長は相変わらずテンション高めにボールを目で追っているが、俺はボールでは無くぶよんぶよんと暴れているアフロのノーブラおっぱいに目を奪われていた。


 す、すげぇ。

 こんなにエロいリフティング見るのは初めてだ。

 アフロと一緒にサッカーやってたのって小学校の頃で、あの頃から発育良かったからおっぱおぶよんぶよんさせてたけど、今は次元が違いすぎる。正しく「大暴れ」って感じだ。


 アフロ自身も「ガキの頃より胸デカくなったから、やり辛い」と零しながらもリフティングを続けていたが、俺以上に運動不足の様で3分ほどで「もうダメ、ちかれた」と終了した。



「よく小学校の頃は、二人でリフティングの勝負してたんすよ。久しぶりだけど体が覚えてるんすよね」


「いいなぁ、私もやってみたい!」


「じゃあどうぞ」とボールを優木会長に渡して、俺とアフロが縁側に座り、優木会長も俺たちの前で裸足になるとニマニマと緊張と楽しいのが入り混じったような表情で、構えた。


 何も教えて無いから見様見真似でボールをつま先で巻き込む様にちょんと弾いた。

 一発目から綺麗に上に上がり、それを太ももで受け止める様に弾く。

 そこからバタバタするように太ももやつま先で弾いて、20回ほど続いたが、最後は明後日の方向へ飛んでしまい終了。


 見様見真似だからか、かなり不格好だったけど、それにしても初めてなのに凄すぎる。普通素人の女子なら2~3回で直ぐ終わるだろう。 優木会長は俺と同じくらい足速いし取っ組み合った時の身のこなしも只者じゃなかったし、やっぱり運動神経が化け物じみているのかもしれない。


「凄いっすね・・・初めてでそれだけ出来る人、見た事ないっすよ」


 アフロもウンウン頷いて同意している。


「悔しいからもう1回!」



 そういえばアクア先輩と別れた日、萬福軒の近所の公園で偶然優木会長と遭遇した時、ジョギングしてる最中だった様だし、生徒会だから運動部に入ってなくても普段から習慣的に運動を続けているのだろう。 更には、この負けず嫌いでポジティブで諦めない精神力の強さだ。

 優木会長の戦闘能力の高さ、そして唐揚げばかり食べてても太らない理由を今更ながらに垣間見た様に思えた。



 この女、ただの唐揚げキチガイでは無い。

 自主性だけじゃなくて、きっと身体能力や運動神経も超高校級の化け物なのだろう。



 結局、優木会長は50回は続けて出来るようになった所で満足したのか、「ふぅー疲れた!でも上手に出来るようになったでしょ?」と終了した。



 因みに優木会長もおっぱいは大きい方だと思うが、ブラを身に着けているのでアフロ程はぶよんぶよんしてないし、真剣な表情でリフティングする姿から、よこしまな視線を送るのが躊躇ためらわれてしまったので、真面目に足捌きだけ見る様にしていた。


「汗びっしょりだし、シャワー浴びてクーラーの部屋で涼もう」と家の中に戻り、優木会長が「着替え貸して」と言うのでシャワーの前に俺の部屋に戻って、アフロには俺の中学の体操服を貸して、優木会長にはTシャツとハーフパンツを貸した。


 するとアフロが「アリサ、下もマゴイチのパンツ履いてみん?」と言い出した。


「何言ってんだアフロ」と止めようとするも、「うーん、そうね!」と優木会長もその気になってしまい、二人で俺のタンスを物色しだして、あーでもないこーでもないと相談しながらそれぞれ1枚づつ俺のパンツを持ってお風呂へ行ってしまった。



 二人は一緒にシャワーを浴びると言うので、俺は出てくるまで自分の部屋で待っていると、30分程で二人とも着替えを終えて俺の部屋に戻って来た。


 二人とも髪の毛は濡れたままバスタオルを肩に掛けて戻って来た。

 俺も入れ替わる様にお風呂に行こうと腰を上げようとしたが、二人の姿を見て唖然として固まった。



 え?

 なんで二人とも、下はいてないの?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る