#21 萬福軒会談




 翌日、アフロと二人で自転車に乗って萬福軒へ向かった。

 自転車をお店の前に停めてアフロを連れて店内に入ると、優木会長は既に来ていた。



「マゴイチくん、いらっしゃ~い♪ 今日は凄い個性的な子連れてきたのね」


「マキさん、一昨日はご馳走様でした。お礼に友達連れて食べに来ました」


「気にしなくてもいいのに~、アリサちゃん先に来てるからテーブルにどうぞ」



 で、優木会長が待つテーブル席に行くと優木会長は立ち上がり、俺がアフロを紹介しようとするよりも先に、優木会長とアフロは言葉を交わさずに抱き合った。



「え?知り合い?」


「違うわよ。今日が初対面ね」


「そうだね、今日初めて会ったな」


「自分でもよく分からないのだけど、魂が惹かれあるっていうのかな? この子は他と違う、仲良くするべきだって本能が訴えてる感じかしら?」


「ウチもそうだね。この女は敵に回すとおっかない。味方に付けろって声が聞こた気がした」


 やっぱり二人は頭がイカレてるのか、二人にしか分からない厨二的なことを言い出した。


「よく分からんけど、似た者同士惹かれ合ったってことか?二人とも野生動物っぽいしな、本能がそうさせたのか? まぁ、殴り合いのケンカ始められるよりはマシだしいいけど」


 モンスターレベルにしか分からない何か通じるものがあったのだろう。

 多分、プロレス好きにありがちな、ドラマティックな演出を自作自演してるだけだと思うが。



 優木会長の隣にアフロが座り俺は対面に座ると、マキさんに炒飯とギョーザと唐揚げを3人分注文した。

 注文を終えてマキさんがテーブルから離れると、早速優木会長がアフロに話し始めた。



「マゴイチからはアフロって呼ばれてるの?なら私も『アフロ』って呼ぶわね」


「じゃあウチは『アリサ』って呼べばいいん?」


「うん、アリサって呼んで頂戴。 それで、アフロはマゴイチとは幼馴染だけど彼女ってわけじゃないのよね?」


「マゴイチとは付き合ったことないよ。 一発やらせろって言っても全然相手にしてくれんし」



 俺は今、凄い場面に立ち会っているのかもしれない。

 西高が誇る自主性モンスターこと超美人生徒会長と、ダンジョン(段田女子学園)を代表するゆる股ビッチの超セクシーブスの二大巨頭会談が、今この萬福軒で行われている現場に立ち会っているのだ。


 胸熱な展開の様だが、俺は二人の会話内容には全く興味が無かったので、心の中の実況アナウンサーが大げさにそう盛り上げながらも、冷めた眼差しで二人がお喋りしているのを黙って眺めていた。


 因みに、アフロはいつも通り中学ジャージで、優木会長は薄い水色のシンプルなデザインのワンピースとサンダルで薄っすらメイクもしててお洒落モードの様だ。 優木会長は俺と違って、水色が良く似合っていた。



 優木会長は、自分が如何にイケメン好きの面食いかを熱く語り、俺との初対面がどれだけ衝撃的だったかを力説していた。

 優木会長曰く、俺は「神に愛されたイケメン」と思う程のイケメンらしい。

 神様に愛されてたら、これだけ女難まみれにはならないと思うんだけど。

 因みに、優木会長にとって俺は、口でも腕でも勝てる自信があるから、俺の性格に関しては多少悪くて反抗的でもどうにか出来ると考えている様で、人格よりも顔重視らしい。

 相変わらずの言いたい放題だ。


 まあ優木会長の場合は、常人とは違う思考回路なので何言われても俺は「へー」と軽く流すようにしている。


 それに対してアフロの方は、ガキの頃から俺とつるんでいたせいでイケメン顔に馴れてしまい男の顔には興味無いらしく、良い男の判断基準はチンコとセックスらしい。顔に興味が無いというのは初めてきいたが、俺のチンコは中々の物らしく、事あるごとに俺のチンコや金玉をモミモミしようとするのは、勃起した状態を確認したくてしていたそうだ。

 アフロ曰く、俺は「将来有望なチンコ」と思う程度のチンコらしい。

 まだデビューすらしてないので、俺としてはチンコの将来よりもまずは彼女なんだが。

 因みに、アフロにとって童貞男子は面倒なだけだが、俺のチンコに関してだけはイチから育てて自分好みのセフレにするのもアリだな、と考えているそうだ。


 アフロの場合は、色々御託ごたく並べているが、多分適当に思いついたこと言ってるだけだろうな。



 俺にとっては、「可愛い子は浮気する」という真理があるので、優木会長とは相容れない。

 そして、過去の経験からヤリマンビッチはノーセンキューなので、アフロとも相容れない。


 だが俺は、恋愛的な好意とかセックス的な好意があるのは分かっててこの二人と友達付き合いしているわけで、こんなこと言われても今更一々怒ったりしないし、むしろ、こうやって最初から下心とかも素直に表に出してくれる人のが信用出来る。 これまで本性隠してたり猫被ってる女の子に散々な目に遭わされて来たしな。

 アクア先輩なんかは恋人になってから急に豹変して、しかも本性現わしてからが性癖がディープ過ぎて俺には無理で逃げるしか出来なかったが、この二人は普段から本音駄々洩れだし、恋人じゃないし友達って立場なら、俺だって如何様にも対処出来るだろう。


 それに、ぶっちゃけこの二人くらいしか休日でも会ったりするほど親しい友達も居ないしな。 アクア先輩と別れたばかりで一応は立ち直っているけど、夏休みの間は一人で居るよりは二人と遊んでた方が気が紛れるし暇も潰せるだろう。


 ということで、料理も来たので食事しながらでもこれからの夏休みの予定を相談したいのだが、アフロが話す俺のチンコ話に優木会長が赤面しながらも興味深々の様子で、俺が話しかけても「後でゆっくり聞いてあげるから少し黙ってて」と優木会長に軽くあしらわれてしまい、お喋りに夢中の二人はちんたら食べてて俺は一人だけ先に食べ終わってしまい手持無沙汰になってしまった。


 もう今日一番の目的であった優木会長とアフロの面通しの立ち合いのお役目は終わったことだし、トイレ行くフリしてカウンター席に移動して厨房でマスターが料理しているのを黙って眺めて時間を潰した。



 30分ほどして漸く二人とも食べ終えると、「今からウチに行くわよ」と優木会長が言い出した。 どうやら俺がカウンターで厨房を眺めている間に既に二人でそう決めたらしく、俺の意見は端から聞く気は無いらしい。 どうせ聞かれてても暇だし付いて行くけど。


 優木会長の家は萬福軒から歩いて10分程の距離らしく、この日も歩いて来てたので、俺の自転車の後ろに乗せて優木会長の家に向かった。

 ワンピースでスカートの優木会長は荷台に横向きで座り右手を俺のお腹に回していたが、「こ、コレは!?腹筋ガチガチね!」と言うと、嬉しそうに俺の腹筋や胸筋をイヤらしい手つきでまさぐってて、自転車で並走しているアフロに、「アリサ!チンコだ!今ならマゴイチンコ揉めるぞ!」と煽られていたが、優木会長はチンコには手を出さなかった。


 ははーん、さては優木会長も、処女だな?






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