3部 夏休みスターット!
#20 失恋から一夜明けて
3部は少し趣きを変えて、マゴイチ達の楽しい夏休みのお話です。
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夏休みに入り、既に数日が経っていた。
アクア先輩の家での苦行の日々は、俺の中では夏休みにカウントしていないので、俺の夏休みはまだ始まったばかりだ。
アクア先輩とは、昨夜別れのメッセージを送ったのを最後に何もやり取りはしていない。
水色のカバーオールは、手揉み洗いしてベランダに干してある。 夏休みが終わったら、学校で返せば良いだろう。2学期、まだ会うのが辛かったら、同じ料理部一年の笹山さんと長山さんに渡して貰う様にお願いすれば良いだろうし。
そして、アクア先輩と別れたことで、俺の夏休みの予定は真っ白の白紙になった。
こういう時、昔はいつもアフロと遊んでたので、久しぶり連絡すると、アフロも毎日暇している様で、直ぐにウチに中学ジャージ姿でやって来た。
前回会った春休みにはまだ天然アフロは黒かったが、久しぶりに会ったアフロは金髪になっていた。 ただ、金髪でもチリジリの天然パーマだから、ちょっとばかりくすんだ金色だ。
余談だが、アフロは中学ジャージを着ている時は下はタンクトップのノーブラで、しかもジャージが中学の時のだからサイズ小さくてピチピチのせいで、ちょくちょく服の上からでもB地区がエレクトしているのが見える。
「マゴイチんちに来るの、久しぶりじゃね?」
「そう言えばそうかもしれんな。俺が西高入ってから来て無かったしな」
「で、どうなん?西高で彼女は出来たん?」
「ぼちぼちだな」
「ぼちぼちってどーゆーこと?」
「彼女出来たけど別れたばかりで心のキズが癒えてないから言い辛くて、ぼちぼちって曖昧な表現をしたってことだ」
「へー」
「高校に入って1学期だけで色々あったんだよ。どうせ暇だし、愚痴だと思って聞いてくれよ」
「お!聞く聞く!どんなブスと付き合ったん?」
「いや、アフロがブスって言うなよ、ってまあいいか。 それで最初いきなりだったんだけど、入学式の当日の放課後にだな、3年の生徒会長が俺のクラスまで来て俺だけ生徒会室に連行されてさ、一目惚れだって言って告白されてな、その生徒会長が凄い美人だったから断ったんだよ」
「ぶぶ、マジで可愛い子と付き合うの止めたんだ?超ウケるんだけど」
「いや、あの生徒会長からの告白を断ったのは正解だった。あの人のイカレ具合知らないからそんな呑気に笑ってられるんだよ。俺なんて告白断ったら追いかけ回されて思いっきりタックルされて吹き飛ばされたんだからな?沢山生徒が見てる中でマウントポジションで「連絡先交換しましょ」って脅されてさ、あんな人と付き合ってたら今頃どうなってたか」
「西高やべーな。でもその女、面白そーなヤツだな。一度会ってみたいわ」
「あー、その生徒会長もおんなじこと言ってたわ。俺が天然アフロの幼馴染居るって教えたら、会ってみたいってさ。でも会わせたくないな。二人ともキャラ濃すぎてお互いが潰し合いしそうだし、そうなったらどうせ俺が止めるハメになるし」
「ますます会ってみたいな。どうせ暇だし夏休み中に一緒に遊ぼうって誘ってみてよ」
「うーん、分かった。メッセージ送ってみる」
あまり乗り気はしなかったがどうせ暇だし、昨日萬福軒に連れて行って貰って元気づけて貰った事のお礼も言いたかったから、スマホで『夏休み中ヒマなら、メシでも食べに行きませんか?』とメッセージを送った。
そしたら、30秒程で着信が来た。
『もしもし!急にどうしたの!まだ落ち込んでて元気ないの!?』
「いや、普通に元気ですよ。ヒマだし昨日萬福軒で唐揚げご馳走して貰ったからお礼言いたくてメシに誘ったんですよ」
『あらそうなんだ。マゴイチから誘ってくれるなんて初めてだし、昨日凄い凹んでたから、てっきりリスカブスみたいに死ぬ死ぬ詐欺でも始まるのかと思って焦っちゃったわ』
「いや、死なないっすよ、優木会長のお蔭で立ち直ってますから。 あ、それでこの間話してた天然アフロの幼馴染も優木会長に会いたいって言ってるんすよ。それでメシでも一緒にどうかって思いまして」
『オッケー!でも今日は用事あるから明日でもいい?』
アフロに「明日でもいいかって」と聞くと、オッケーというので優木会長にも「明日でオッケーっす」と伝えた。
『じゃあ、明日11時に萬福軒で待ってるね』
「了解っす」
ということで、西高の自主性モンスターとダンジョンの
まぁ、どうでも良い話なので、優木会長のことはこれ位にして、料理部の母性モンスターの話を続けた。
「それで部活に入ろうと思ったんだけど、中学でサッカーやってたお陰で俺が部活してる裏で浮気されたりしてたから、高校は運動部止めたんだよ。で、色々文化系見て周って、料理部が面白そうだったから入ったの」
「え?マゴイチが料理部なん?ギャグじゃなくて?」
「なんでギャグで部活選ぶんだよ。真面目に料理憶えたくて入ったんだよ」
「じゃあ料理出来るの?」
「自分でまともに料理したのは1回だけどな、それでも手の込んだハンバーグ作ったぞ。味もマジで美味かったし、先輩とかにも褒められた」
「お、じゃあ今度作ってウチにも食べさせてよ」
「ああいいぞ。どうせ夏休みヒマだし作ってやるぞ」
「で、最近別れたブスの彼女っていうのは、その料理部絡み?」
「だからブスじゃねーし、アフロがブスって言うなよ。ブスのアフロがブスって言うとちょっと面白いじゃねーか。 それでな、料理部の2年に『アクア』っていうキラキラネームのぽっちゃりした先輩が居たんだよ。その人、すげぇ親切で面倒見が良くてさ、俺、料理部の中でも直ぐにその人に懐いてな。 アフロとは真逆のタイプだな。包容力あってふわふわぽわぽわしてて、でも料理する時とかはテキパキしてて」
「ウチもふわふわしてるよ」
アフロはそう言って、自分の天然アフロを両手でふわふわ優しく撫でた。
「いや、アフロのふわふわは髪と脳みそだろ。 それでだな、休みの日に買い出しに一緒に行ったりして距離縮めて着実に親密になってな、そうして告白されて付き合ったんだよ。 だけど付き合う様になって家に呼ばれて行ったらな、アクア先輩が豹変してな・・・・」
ココでこれまでの苦行の日々を思い出してしまい、言葉を詰まらせた。
「どしたん!?逆レイプでもされたのか!?まさかイケメン童貞、逆レイプで童貞卒業!?」
「いや、俺はまだ童貞だ。ドコに出しても恥ずかしくない程立派な童貞だ」
「じゃあそのアクアって女が豹変して何されたん?」
「赤ちゃんプレイだ」
「ん?なにそれ?」
「俺が赤ちゃん役でアクア先輩がお母さん役で、ヒザ枕して貰ったりハグされたりしながら「よちよち」って何時間も頭を撫でられるプレイだ。因みにカバーオールっていう専用の手作りベビー服も用意されててな、ヨダレ掛けとかおしゃぶりとかも使ってたな。しかも赤ちゃんプレイの間は人間語は禁止されてて普通に喋ったりすると「め!でしょ!」って叱られてな、「ばぶー」しか言わせて貰えなかったんだぞ」
俺の赤ちゃんプレイ体験談を聞いたアフロが、飲んでた麦茶を「ブゥーーー!」と盛大に噴き出した。
麦茶を噴き出したアフロに箱ティッシュを渡しながら、俺は話を続けた。
「それで昨日の話なんだが、遂に紙おむつを用意して来てな、紙おむつ履かせてそれでオシッコすることを要求してきて我慢出来ずに逃げて、そんで夜メッセージ送って別れた。だから今は失恋したてホヤホヤの立派な童貞だ」
「そのアクアって女、中々アバンギャルドな女だな。ウチの高校には居ないタイプだ」
「一言で言えば、母性モンスターだな。包容力とか母性も振り切ると暴力になるってことがよく分かったよ」
「じゃあ、包容力とか無縁のウチと一発やって童貞捨てとく?」
アフロはそう言いながら麦茶で汚れた中学ジャージの上を脱いで、タンクトップになった。
心なしか、タンクトップに浮き出たB地区がいつもよりも強く自己主張しているように見える。
「だからなんでそうなるんだよ!ジャージ着替えるなら俺のがタンスにあるから自分で出して着替えろよ!」
俺は拒否する言葉を叫びながら自分の股間を両手でガードした。
アフロは俺に言われた通り俺のタンスから中学ジャージを取り出して着替えると、俺に質問を続けた。
「で、これからどうするん?また新しい彼女探すの?それとももう諦めて高校卒業するまで童貞?」
「いや、諦めるつもりは無いぞ。「可愛い子は浮気する」と言う俺の考えは変わらないままだが、「可愛くない子でもヤバイ奴は居る」っていうのが新たに追加された感じだな」
「まぁその気になったらウチの学校の子とか紹介してもいいよ。イケメン童貞のマゴイチならみんな飛びついてくるだろうし」
「いや、ダンジョンのビッチだけは勘弁してくれ」
「マゴイチお前、滅茶苦茶失礼だな」
その後、ベランダに干していた水色のカバーオールが乾いていたので、それに着替えてベビー服姿をアフロにお披露目したら、再び盛大に麦茶を吹いて、「8頭身のドラえもんじゃん!!!超やべー!!!」と床をバンバン叩きながら、泣くほど大爆笑していた。
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