#18 女神、豹変




 ハグをしながらお互い愛の言葉を囁き合ったあと体を離すと、アクア先輩は照れ臭さを隠す様にノートPCに保存しているこれまで作った料理や手芸品の写真を見せながら、普段よりも早口で色々説明してくれた。


 俺の方も、女の子とハグしたのが初めての経験だったし、アクア先輩の爆乳に心を奪われてしまった直後だったので、流石に照れくさくなってしまい、直ぐ隣に居るのに俺の方からボディタッチとか出来ずにいた。


 そんな童貞と処女のジレジレした攻防の中、アクア先輩が言い難そうに俺に頼み事をしてきた。



「あのね・・・実は今日ね、マゴイチ君の着て欲しい衣装があってね・・・私が作ったんだけど、後で着てみてくれる・・・かな?」


「え!?アクア先輩の手作りの服なんすか?凄いっすね、是非着てみたいです」


「ホ、ホント!? よかったぁ。マゴイチ君オシャレだし、ダサい服なんて着たくないって言われたらどうしよって心配だったよぉ」


 確かにアクア先輩の服のセンスはイマイチだ。

 だが、アクア先輩の要望に応えてあげることで、俺からも性的イチャイチャな要望がしやすくなるだろう。

 ココはOK一択だ。


 この時俺は何となく、「何かのコスプレとかそんな物だろう」と、衣装そのもののことは深く気にしなかった。





 お昼時間になるとキッチンに移動して、アクア先輩が昨夜作ったというビーフストロガノフをご馳走になり、お礼に食器の洗い物を手伝ってから、アクア先輩の部屋に戻った。


 お腹も膨らみ、先ほどの照れ臭さも大分落ち着いてきた。

 そろそろ何かしらのアクションを起こして、何とかイチャイチャタイムに持って行かなくては、と考えていると、アクア先輩が「あの・・・さっき言ってた衣装なんだけど、今から良いかな?」と遠慮しがちに聞いて来た。


 俺は先ほどからOKしていたし、再び深く考えずに「いいっすよ。俺はどうすればいいっすか?」と軽く返事をした。



 すると、アクア先輩が豹変した。


「あのねあのね!コレなんだけどね!マゴイチ君の体のサイズに合わせて作ってみたの!可愛いでしょ!」


 アクア先輩は突然興奮し出して早口で捲し立てながら、机の上に置いてあった紙袋から、水色の衣装を取り出し、両手で持って俺に見せる様に目の前で広げた。


 その衣装は、モコモコの布地で出来ていて、全身が薄い水色のつなぎの様なというか全身タイツの様な衣装だった。


 んんん???


 コスプレにしては、何のキャラクターか分からない。

 なんだろう、コレは。


「コレ、なんの衣装なんです?」


「コレはベビー服です!カバーオールっていうんだよ!すっごく可愛いでしょ?マゴイチ君って体大きいから、サイズ合わせるのが大変だったけどすっごく可愛く出来たでしょ?今日マゴイチ君が来たら絶対着て貰いたいなぁって思ってて、むしろコレ着て欲しくてウチに来てもらったというか、うふふふふ」


 急に雲行きが怪しくなってきたな。


 だが、イチャイチャラブラブの為にもアクア先輩の機嫌を良くしておかないといけないしな、ココは男らしくドーンと構えて恋人の願いを聞き入れるのが出来る男の嗜みだろう。


「それで、コレはどうやって着ればいいんです?」


「えっとね、肌着以外は全部脱いじゃってね、その上から着れば良いんだよ。 背中の部分がファスナーになってるからね、私が締めてあげるね。うふふふ」



 で、着てみた。

 身長180の高校1年生男子が全身水色のベビー服を。


 アクア先輩の部屋には姿見があったので、それで自分の姿を確認してみた。

 第一印象は「俺、水色似合わね~な~」


 だが、アクア先輩は俺とは違う感想を持ったようで「キャー!すっごくイイ!すっごく可愛いよ!どうしよぉ~可愛いよぉ~!マゴイチ君が可愛くなっちゃったよぉ~!」とピョンピョン跳ねながら大興奮で大喜びし始めた。


 いつもならアクア先輩が笑ったり嬉しそうにすると俺も嬉しくなってたのに、今の俺はアクア先輩が大興奮ではしゃいで居ても、何故か喜べなかった。


 しかしアクア先輩の要求はこの程度では留まらなかった。


「あ!マゴイチ君!頭のフードもちゃんと被って!このカバーオール一番のポイントなんだよ!」


 仕方ないので言われた通りフードを被った。

 このフード、パーカーみたいにブカブカじゃなくて、被るとぴっちりフィットして頭や耳を覆う。 そして上部には猫の耳の様な飾りがあり、鏡で確認したが、いくらイケメンの俺でも流石に間抜けさ満点であった。


 ぐぬぬぬ

 どうしてだろうか、屈辱的に感じるのは気のせいだろうか。


 俺が自分の間抜けな姿に複雑な心境で戸惑っていると、アクア先輩は床に腰を下ろして女の子座りになり、「こっちにおいで?」とポンポンと自分のヒザを叩いた。


 ヒザ枕をしてくれるということの様だ。

 自分の格好は間抜けなままだが、コレはイチャイチャラブラブ出来るチャンスかもしれないぞ。


 そう判断した俺は、ゴロンと横になってアクア先輩のヒザに頭を乗せて、その体勢のままアクア先輩を見上げた。


 優しい微笑みを浮かべて「ハイハイ、よちよち♪ うふふふ」と言いながら俺の頭を撫でるアクア先輩。


 女の子にヒザ枕してもらうのなんて初めての体験で、少しドキドキしながら「なんだか恥ずかしいっす」と伝えると、「め!赤ちゃんは喋ったりしないでちゅよぉ!」と叱られた。



 どういうことだろうか。

 俺に赤ちゃんに成りきれと要求しているということか?

 つまり、コレは、所謂赤ちゃんプレイというヤツか?


 そういえば以前アクア先輩は、子供の頃は一人でぬいぐるみ相手におままごとして遊んでいたと言っていた。

 コレはその延長ということか。

 所謂性癖の様な物だろうか。


 もしかしたら、アクア先輩から感じていた包容力とか母性って、この性癖が原点なのかもしれないな。


 だが、アクア先輩の性癖とか生い立ちとか色々と闇深い深層を垣間見たからと言っても、俺自身の屈辱感は拭えそうになかった。


 しかし同時に、この屈辱的な赤ちゃんプレイに光明も見出していた。

 赤ちゃんプレイということは、お母さんが赤ちゃんにおっぱいを吸わせる授乳プレイもいずれあるのでは無いだろうか。 アクア先輩の爆乳を思う存分ちゅうちゅう吸ったりモミモミ揉みしだいたり出来るチャンスがあるのでは無いだろうか。


 そう思い至った俺は、お母さん役のアクア先輩に向かって、甘える様に「ばぶー」と産声を上げた。








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