#17 所詮童貞のイケメン
アクア先輩から告白してもらい晴れて恋人同士になることが出来たが、俺と付き合っていることが知られるとアクア先輩に色々と迷惑が掛かることが心配だったので、二人で相談して周りには言わないように決めた。
そういったこともあり、学校では部活の時間くらいしか会えなかったし、部活以外の日の放課後は俺が図書委員があったり、丁度期末試験週間に入ったこともあって、二人でゆっくり過ごす時間は中々作れなかった。
それでも、毎日SNSでメッセージのやりとりしたり、少しだけ会える時間を作ってはこっそり隠れて手を繋ぎながらお喋りしたりして、キュンキュンするような甘酸っぱいお付き合いを続けて居た。
アクア先輩の方は俺が初めての彼氏ということもあって、付き合い始めの最初の数日はかなり意識しすぎていた様子で挙動不審だったり一々赤面してはアタフタしてたけど、元々部活でよくお喋りしていた仲だったので、自然といつも通りの様子に戻っていた。
そして期末試験も終わった7月、アクア先輩の方から「お家に遊びに来ない?」と誘って貰えた。
アクア先輩は元々インドア派だし、二人で出かけてデートとかしてもやっぱりヒト目が気になる様なので、家でのデートが一番リラックス出来るのだろう。 それに俺としても、恋人を作りたかった一番の理由は、イチャイチャラブラブしたいからだし、家でのデートは望むところだった。
だがしかし、俺は恋愛経験は豊富な方だか、所詮童貞だ。 ココから先は未知の領域といえる。
二人きりになった時に手を繋ぐくらいは造作も無いが、ハグとかキスはどんなタイミングで実行すれば良いのだろうか。
おっぱいを揉む際、やっぱり許可を取るべきだろうか。
でも過去に何度も目撃した浮気現場では、許可無く揉んでた様に見えたな。
初めての時は許可取って慣れてきたら許可が不要になるのだろうか。
中々ハードル高いな。
でも乗り越えなくてはならないハードルだ。
キスもおっぱいもすぐ目の前まで来てるんだ。
ココからが本番なんだ。気合い入れて頑張らないとな。
◇
週末の土曜日。
アクア先輩の家の場所を知らなかったので、近所のコンビニで待ち合わせた。
約束の15分前に行くと、前回の買い出しデートの時と同じくアクア先輩は既に来ていて、コンビニの店内で雑誌を立ち読みしていた。
お店の外からガラス越しにコンコンとノックすると、アクア先輩は気づいてくれて直ぐにお店の外に出てきてくれた。
この日のアクア先輩の服装は、半袖のパーカーとジーンズ地のスカートにサンダルで、ラフな格好だ。 今日は自分のテリトリーだからリラックスして居るのだろうな、表情もニコニコしてる。
「アクア先輩、おはようございます」
「おはよぉ~マゴイチ君!」
「すみません、また待たせちゃってたみたいっすね」
「ううん。私の方が待たせたらいけないと思って早めに出て来たんだから気にしないで。うふふ」
そう言いながら、俺たちは自然と手を繋いで歩き出した。
「今日のお昼ご飯なんだけど、マゴイチ君って好き嫌い無いって言ってたでしょ?」
「そうですね。基本的には何でも食べれますよ。ただ、他人がゲロしたの見た直後にもんじゃ焼きとかはキツイっす」
「それは誰でもそうだよぉ。 それでお昼なんだけどね、ちょっと気合入れてビーフストロガノフ作ってみたの。 前に部活でマゴイチ君が作ってみたいって言ってたでしょ? それで私も興味沸いて作ってみたんだぁ」
「マジっすか?アクア先輩の料理スキル、半端ないっすね」
「そんなことないよぉ、時間は掛かるけど、マゴイチ君でも頑張れば作れるようになれるよ?」
「じゃあ今日食べてみて美味しかったら今度挑戦してみようかな」
「うん、そうしなよぉ」うふふ
アクア先輩と俺の共通の話題って、どうしても料理部の話や食べ物の話になってしまうが、俺も食べるのは好きだし、料理部に入ったお陰で調理自体にも興味があるので、こういう話題は結構楽しい。
なにより、アクア先輩も食べ物の話をしている時はニコニコとご機嫌で、そんなアクア先輩を見ているのは俺もほっこり幸せな気持ちになれる。
アクア先輩のお家に上がると、家族は留守とのことだった。
こ、コレは、アクア先輩も意識して家族が居ない日に俺を招待したと言うことか!?
一応、念のためにゴム買って来たけど、まさかお呼ばれ初日に使うことになるのか?
やっぱり期待しても良いよな。
俺たちもう既にラブラブだしな。
それに、過去の俺は元カノ達に対して、どこか安心してのんびり構えてた所があったと思う。
今なら分かるが、それは油断だったと言えるだろう。
だから高校生になった俺は、油断せずにチャンスがあればグイグイ行くべきだ。
アクア先輩の部屋に案内され、クッションを出されたのでそこに座る。
室内を見渡すと、女の子らしい部屋だ。
料理だけじゃなくて手芸も好きらしく、自分で作ったと思われるぬいぐるみやクッションなんかが多数ベッドの上やら床に置いてあった。
「飲み物用意してくるから、待っててね」
そう言ってアクア先輩が部屋から出て行ったので、立ち上がって室内を物色する。
本棚があり、漫画や文庫本などが多数あるが、一番下の段に小中の卒業アルバムを見つけた。
凄く見たい。
でも勝手に見たら怒られるかな。
とりあえず戻って来たら聞いてみるか。
そう思い、卒業アルバムを取り出して、中は見ずにテーブルに置いた。
アクア先輩がティーセットをお盆に乗せて戻って来たので、早速「卒業アルバム、見てもいいっすか?」と確認すると、「良いけど、すっごいブスだよ?」と二人分のティーカップに紅茶を注ぎながら許可をくれたので、遠慮なくアルバムを手に取って見始めた。
中学校の頃の個人写真は、今よりも更に大人しそうな感じ。
顔しか映ってないけど、ぽっちゃり感も今とそう変わら無さそう。
次に小学校のアルバムを見ると、更に地味な感じでぽっちゃりでは済まないレベルで顔がパンパンだった。
確かにコレはいじめられそうだ。
俺は自分が容姿のことで色々言われ続けた思春期を過ごして来ているので、他人の容姿で差別することは無い。恋愛的な面では、やはり可愛い子のが好きだったのでそういう子ばかりと付き合っていたが、普段の学校での生活では、分け隔てなく対応するようにしていた。
ただ、逆に俺の方はチヤホヤされたり、狂犬と怖がられて距離置かれたりはしてたけど。
そんな俺が見ても小学生時代のアクア先輩は、色々と苦労していそうな容姿だった。
「すっごいブスでしょ? この頃が一番病んでたかなぁ、うふふ」
「昔はもっと痩せてたって言ってましたよね?その頃の写真は無いんですか?」
「うーん、デジカメに古い写真が残ってるかも? ちょっと待ってね」
アクア先輩はそう言って、机の引き出しから小型のデジカメを取り出し、保存している画像を確認しだした。
「あったあった。パソコンに繋げた方が大きくていいよね?」
「そうですね。大きい画像で見たいです」
ノートPCをテーブルに置いてデジカメを繋げて、デジカメの保存画像のフォルダを開いた。
パソコンを操作するアクア先輩の左隣にピッタリくっ付く様に座って一緒にノートPCのモニターを見ていると、小学生低学年の頃と思われる画像を開いてくれた。
普通に可愛らしい子だ。
寧ろ、美少女と呼ばれてもおかしくないレベルだ。
6年生の病んでた頃の写真と比べると、「どうしてこうなった!?」と言いそうになるレベルで全然違う。
「凄く可愛いかったんですね・・・ちょっとビックリっす」
「そうかな・・・でも昔は可愛くても今はこんなブスだもんね」
「いやいや、今でも可愛いですって!」
俺は小学生低学年の美少女時代のアクア先輩の写真を見て、本能的に危機感を感じた。
この人は、痩せると化ける。
美少女時代ほどじゃなくても、間違いなく今よりは可愛くなるだろう。
だから、アクア先輩は痩せたらダメだ。
「可愛い子は、浮気する」
俺の中の絶対的真理が、警報アラームをガンガン響かせている。
「アクア先輩、俺は今のアクア先輩が好きなんです。 痩せて欲しいとかコレっぽちも思って無いです。むしろ痩せないで欲しいです」
「う、うん・・・でも、マゴイチ君みたいな素敵な男性の横に、私みたいなデブが居たら恥ずかしいでしょ?」
「何言ってるんですか!俺はアクア先輩のこと一度だって恥ずかしいなんて思ったことないです!そんなこと思ってたら手なんて繋いで歩いたりしないですよ!」
「ううう、そんな風に言ってくれるなんて、嬉しいよぉ」
瞳をうるうるさせて俺を見つめるアクア先輩。
そんなアクア先輩を見つめ返すと、俺は自然とアクア先輩を抱きしめ、「他人の目なんてどうだって良いじゃないですか。今のアクア先輩は俺にとっては素敵な女神様なんですからね」と耳元で囁いた。
これはキスする流れじゃないか!?と思ったが、俺の言葉を聞いたアクア先輩が「ううう~マゴイチ君、大好き~」と言って、驚異的なパワーで俺を抱きしめ返して、キスする為に一度体を離したかったのにアクア先輩の腕を振りほどく事が出来なかった。
だが、キスは出来なかったが、アクア先輩の爆乳が俺の体にこれでもか!という程押し付けられてて、爆乳を意識しだすとキスのことなんてどうでも良くなり、爆乳が押し付けられている胸部分に神経を全集中させていた。
コレが童貞の限界なんだろうか。
だが、とりあえずハグまでは出来たんだ。
今日のお家デートは、まだ始まったばかりだしな。
まだまだチャンスはあるはずだ。
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