#16 女神の告白
火曜日の放課後、部活動。
今日は初めて自分で考えたメニューでの調理に挑戦だ。
アクア先輩に鍛えて貰った皮剥きスキルで絶品ロコモコ風ハンバーグを作って、アクア先輩のハートをガッチリ掴んで最後の追い込みかけてやるぜ!
しかし俺のその考えは、ふわふわパンケーキにたっぷりかけられたシロップ程に、甘かった。
「なにー!ハンバーグだと俺の皮剥きスキルの出番がないだと! 玉ねぎのみじん切りなんてまだ教わってないゾ!ちくしょー!このままだとアクア先輩に絶品ロコモコ風ハンバーグを食べてもらうことが出来ないじゃないか!」
そう。ハンバーグを作るのに、皮を剥くような野菜は使わないことを、俺はこの時まで気づいていなかった。
「マゴイチ君、じゃあ今日は私が教えるからみじん切りの練習も兼ねて作ろっか?」
「あい!オネシャス!」
ああ、流石アクア先輩。
俺が困ってると直ぐに助けの手を差し伸べてくれる。
やっぱりアクア先輩は女神様に間違いない。
アクア先輩に手取り足取り教えて貰いながら玉ねぎのみじん切りを終えて、ひき肉、玉ねぎ、パン粉に水と調味料を混ぜて練り始める。 タネが出来上がったら適当に小分けして両手使ってパチンパチンとセルフキャッチボールで中に混ざった空気を抜いて形を整える。 熱したフライパンでハンバーグを焼いて、にじみ出た肉のドリップにウスターソースとケチャップ混ぜてソースを作ったら、ハンバーグとカットしたトマトとレタス盛り付け、目玉焼き焼いてハンバーグに乗せたらソース掛けて完成。
途中ちょいちょいアクア先輩にアドバイス貰いながらなんとか自分で作った。
名付けて「ロコモコ風マゴイチスペシャルハンバーグ」
ネットで調べたレシピ通り作っただけだが。
それでも、入部当初は包丁すらまともに握ったことが無かった俺が、こうして手の込んだ料理を作れるようになったんだ。 これもアクア先輩や料理部の先輩たちのお蔭なのは間違いない。
同じ1年の笹山さんと長山さんは一足先に調理を終えてて、俺の調理が終わると部員全員で実食タイム。
自分が初めて作った料理を他人に食べてもらう。
結構緊張するな。
「こんなもん喰えるかぁぁぁ!」と皿ごとゴミ箱に全力投球されることは無いだろうが、それでも小姑みたいに「味が薄い」だの「火が通って無くて生焼け」だの「今日は和食が食べたかった」だの
ドキドキしながらみんながモグモグ食べる様子を黙って観察する。
「うん♪ マゴイチ君、上手に出来てるよ? 美味しいから、マゴイチ君も食べなよぉ」
「マジっすか?アクア先輩!」
「うん、ちゃんと火も通ってるし味も美味しいよ」
「おおぉ!コレで俺も三ツ星レストランのオーナーシェフの将来が約束されたってことか!?」
「それは無理だよぉ~うふふ」
実際に自分で食べてみたが、マジで美味かった。
自分で作ったお蔭か、料理部のみんなと食べてるからなのか、かーちゃんが作ったハンバーグよりも美味しかった。
俺はこの日を「ロコモコ記念日」と名付けて、大人になってもきっと忘れないだろう。
◇
実食を終えて、料理部のみんなから色々感想を貰い、そのままいつもの様にお茶しながらお喋りタイムを楽しんだ後、手分けして後片付けをしていると、シンクの掃除をしている俺の所にアクア先輩がやってきて「マゴイチ君、部活の後でちょっとだけいいかな?」と言ってきた。
「いいっすよ」と返事しながら振り返ってアクア先輩を見ると、視線を外して頬を赤らめモジモジしている。
こ、これは、遂に来たか!?
呼び出しからのこ~くは~くタ~イム!
「じゃ、じゃあ終わったら家庭科室の鍵を職員室に一緒に返却に行こっか」
「了解っす!ならサッサと片付けちゃいましょうか」
今日、アクア先輩から告白されるかも、と意識したら急にドキドキしてきた。
これまで数多くの女の子から告白されて来たが、こんな風に緊張するのは初めてかも。
でも、本当に告白だったらアクア先輩のが俺よりももっとドキドキしてるよな。
ココは男らしくドッシリ構えておくべきだよな。
そう思いなおして、片付けと掃除に集中する。
片付け作業が全て完了して、全員帰る準備を終えると、家庭科室の扉に鍵を掛けてその場で解散。 俺とアクア先輩だけ職員室へ向かい、他のみんなは下駄箱へ。
二人キリで廊下を歩くが、妙に空気が重い。
険悪な空気ではなく、緊張で空気が張り詰めているんだ。
職員室で鍵を返却を終えると、並んで歩きながら下駄箱へ向かう。
いつ話があるんだろうか?と思いながら廊下を歩いていると、不意に夏服の半袖シャツの袖を捕まれる。
ん?と思い立ち止まって横のアクア先輩を見ると、俺の袖をつかんだまま俯いてて表情が見えない。
「どうしました?」
「うう・・・・」
「まさか・・・俺のハンバーグ食べてお腹壊しました!?」
「ちがう・・・・・」
俯いて固まったまま反応が無いので、俺も黙って待つ。
「・・・・・あのね・・・・えっとね、マゴイチ君のことが・・・・好きなの・・・好きで好きで大好きになっちゃったの・・・」
キタァァァァァァ!!!
「そ、そうですか。嬉しいです、ありがとうございます」
「あの・・・私をマゴイチ君の恋人に、してくれませんか・・・?」
「はい、喜んで」
俺は迷うことなく即答でOKした。
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