#10 イケメンに新彼女疑惑
諏訪先生がやってきてHRを済ませると、この日の1~4限は学力試験があって、午後は体育館で部活紹介の予定になっていた。
そして4限の試験が終わると、高校入学して初めてのお昼休憩に。
俺は弁当を持って、男子で一番話が出来る近藤君を誘って二人で弁当を食べ始めた。
近藤君と「部活どうしよっかな~」とかお喋りしながら弁当を食べていると、沼田さんを含めた女子3人組が「私たちも一緒にいい?」と言ってきたので、「いいよ~」とフレンドリーにOKした。
沼田さん以外の二人の女子も北中出身らしくて、やはり俺が西中の狂犬ということで、当時あの現場に居た子は居なかったけど「中学の時に噂でめっちゃイケメンがチビデブブサイク半殺しにしてたって聞いてたけど、実物見たら予想以上だったよ」と言われ、答えに困った俺は「俺が居た西中だと危険人物扱いだったから、そんな風に言われるとなんか新鮮」と答えておいた。
そんな感じで、昨日とは打って変わってワイワイお喋りしていると、女子の一人が「そういえば他のクラスの友達から聞いたんだけど、マゴイチ君と優木先輩が入学初日から付き合ってるって噂、本当なの?」と言い出した。
「ちょっと待て! 優木先輩って誰だ!?」
俺本人が知らない内に、新しい彼女が出来てることになっているだと!?
「あ、僕もその噂聞いたよ。昨日の放課後このクラスにマゴイチ君訪ねて来たあと二人でどこかに行っちゃったでしょ? それでクラスでちょっとした騒ぎになっててね、そしたら後で下駄箱の所で沢山の生徒が見てる中で優木先輩がマゴイチ君に馬乗りになって襲い掛かってたって」
「そうそう!優木先輩がイケメンのマゴイチ君に目を付けて、強引に襲って捕食したって」
んん?捕食?俺まだ童貞だぞ?
っていうか、思い当たる女は一人しか居ないじゃないか!
「ちょーっと待ってくれ!優木先輩っていうのは、もしかして生徒会長のことか?っていうか、みんなその優木先輩って人のこと知ってるの?」
「うん、そうだよ。今は西高の生徒会長で元北中出身なんだよ。北中でも有名人だったからね」
アリサという名前らしい失礼でヤバイ生徒会長、優木って名前だったのか。
「それで実際はどうなの? 優木先輩もすっごい美人だもんね。西高イチの美男美女のカップル誕生だって話題になってるんだよ」
「なんでそうなるのサ・・・付き合う訳無いじゃん。昨日入学式済ませたばかりなんだよ?それで3年の生徒会長といきなり付き合うとかありえないじゃん」
確かに昨日告白はされたけど、常識的に考えて入学式当日に彼女作るとかありえないでしょ。
「でもあの優木先輩だしねー」
「因みに、生徒会長の下の名前って、アリサっていうの?」
「うんそうだよ。『優木アリサ』って名前。中学の時からすっごい綺麗で人気あったね」
「そうそう、中学の時から凄くモテて、1週間で5人に告白されたとかそういう噂が絶えない人だったね」
「なるほど・・・確かに綺麗な人だとは思ったけど、付き合うとかは無いな。 さっき言ってた昨日の下駄箱の時も「連絡先教えろ」って襲われて、怖くて仕方なく教えて、家帰ったら怒涛のメールが送られてきたのよ。あの人マジでヤバイんだって。彼氏出来たらその彼氏にコブラツイスト掛けるのが夢だとか言い出してたぞ?あとペットのわんちゃんが妊娠中とかも」
北中出身の4人には告白されたことは伏せて、いかに生徒会長がヤバイ女なのかを弁当食べながら力説していると、教室に本人がまた来た。
「マゴイチ、遊びに来たわよ!」
「うわ!」
ざわざわざわざわ
教室の入口で気取ったポーズに決め顔ウインクの優木生徒会長にクラスがざわつく。
自主性モンスター、マジ自主性がハンパねーな。アグレッシブすぎるだろ。
「あら?なんの話してたの?私も混ぜて頂戴」
そう言って、優木生徒会長はその辺の空いてるイスを俺の横に持ってきて座ってしまった。
「いや、この学校の生徒会長がいかにヤバイ人かをみんなに教えてたんです」
「え?私のこと話してたの? もしかして・・・私のこと気になり始めたの?昨日の返事も考え直てくれてるのかしら?」
「それだけは、無い」
俺たちの輪の中に強引に入ってきた優木生徒会長に俺以外の4人は唖然とした表情で無言になってしまった。
そりゃそうだ。
1年の教室に3年の先輩でしかもさっきまで話題にしてた有名人の生徒会長本人がやってきて会話に入ってきちゃうんだもん。 ビックリするし気も使うし、どう反応していいのか分からなくなって当然だよな。
「あら、マゴイチのお弁当、唐揚げね。一個頂戴!」
そう言って、俺の返事も待たずに俺の弁当箱から素手で唐揚げを1個摘まんでモグモグ食べ始めた。
もうどこまでも図太くてフリーダムだな。
高校生になるとコレくらい普通なんだろうか。
それとも自主性を重んじる校風の影響だろうか。
いや、そんなことないよな。
この人がおかしいだけだよな。
やっぱこの生徒会長、おかしいよな。
最初からヤバイ女だと思ってはいたが、俺はとんでもない女にロックオンされてしまったのかもしれないな。
これからどうしよ。
こんな調子じゃ、新しい彼女なんて作れないぞ。
困ったなぁ。
2個目の唐揚げを狙う優木生徒会長から弁当を守りつつそんなことを考えていると、呼び出しの校内放送が流れた。
『生徒会長の優木さん、至急体育館に来てください。 時間過ぎてますよ。生徒会のみんな、待ってますよ』
ん?
「あ!忘れてたわ! 今日部活紹介の準備があったわ! ごめん!マゴイチ、私いくわね!また夜メッセージ送るから!ばいばい!」
どうやら午後からの部活紹介は生徒会の仕切りだったらしく、このお昼休憩時間に準備をすることになっていた様で、優木生徒会長はソレを忘れてたのか、ココでサボってたっていうことだった。
「なんというか、凄いインパクトある人だったね。あんなにフリーダムな人だとは知らなかったよ・・・」
「うん。流石優木先輩、ポジティブというか大物というか、ほんの数分居ただけで、なんだか凄い爪痕残してった様な」
「っていうか、マゴイチ君、本当に付き合ってないの?すっごい仲良さそうだったし、カップルのイチャイチャにしか見えなかったよ?」
「いや、仲良さそうとかイチャイチャじゃなくて、馴れ馴れしくされてただけでしょ!やっぱヤバイよあの人! 俺、昨日初めて知り合ったばかりなんだよ?なのにナチュラルに俺の唐揚げ摘まんでたでしょ?」
「でも、やっぱり綺麗な人だったね。顔ちっさくて髪艶々のサラサラだし、あんなに綺麗な年上お姉様に積極的に迫られてるなら、もう付き合っちゃえばいいのに」
ぐぬぬぬぬ
違うんだ、俺が求めている女性は、あんな美人じゃないんだ。
でも「美人じゃない彼女が欲しい」なんて言ったら、イケメンだからって何様?とか言われそうで言えないし、でもこのまま放置してると周りは「付き合えばいいのに」って外堀埋められる感じになっちゃうし、参ったなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます