#11 生徒会長はお友達
翌日、クラスでのロングHRで、学級委員や他の委員会を決める話し合いが行われ、学級委員に最初俺が推薦されたが、「やりたくないです後生です見逃して下さい」と嘘泣きで必死に懇願したら、取り消して貰えた。
ただその代わりに諏訪先生から「学級委員がダメでも他のならいいのでしょ? だったら図書委員をよろしくね☆」と強制的に図書委員に任命された。 どうやら、図書委員というのは、お昼や放課後の当番が有るため不人気な委員会で、毎年誰もやりたがらないらしい。
まぁ、俺は運動部には入らず文化部へ行くつもりだし、放課後の当番くらいなら別にいいか、と図書委員任命を了承した。
こんな感じで、徐々に地盤が出来つつ、高校生活がスタートした。
だが、高校生活で忘れてはならないのが、新しい彼女作り。
優木会長との噂が広まっていたせいか優木会長から告白された以外は他の女子から告白されることはしばらく無かったが、情報通の近藤君から「マゴイチ君と優木先輩が実は付き合っていないという話が徐々に広まりつつあるから、そろそろ気を付けた方がいいですぞ」と黒縁メガネをクイッとしながら忠告された。
「何をどう気を付ければいいのサ」と思ったりしたが、すぐに近藤君の忠告通り色々と問題が勃発しはじめた。
まず最初に、俺の下駄箱や廊下のロッカーなどに「連絡先、教えて下さい」とSNSのIDが書かれたメモが入っていることが増えて行った。 俺は知らない人の要望聞くほどお人好しじゃないし性格もよろしくないので、そういうメモは無視して迷うことなく問答無用でゴミ箱にポイポイしていたが、次第にそれらのメモは下駄箱やロッカーの中では無く扉の表などに貼られる様になり、俺の下駄箱とかだけ督促状とかベタベタ貼られた多重債務者の家の玄関扉の様になっていた。 更に朝登校すると教室の机にもベタベタ貼られてた時は、まるでイジメ被害者の気分になってしまい、流石にそれを見た日は結構マジに凹んだ。
その日のお昼休憩、教室にたまたま遊びに来ていた優木会長が落ち込んでいる俺の事を心配してくれたが、俺は「何でもないです」と優木会長には女子生徒達からのしつこいメモ攻撃のことは教えなかった。
だが優木会長から「今日学校終わったら一緒に唐揚げ食べに行くわよ!唐揚げ食べたら元気でるし!いつもお弁当の唐揚げ貰ってばかりだから、今日は私が奢ってあげるわね!」と言われ、メシ食べに連れて行ってくれることになった。
因みに、クラスメイト達とは既に連絡先を交換していたが、こういう状況なのでくれぐれも第3者には教えないで欲しいとお願いしてみんな協力してくれていたので、今の所は俺のスマホの連絡先が漏洩することは無かった。
放課後になり教室で待っていると優木会長が迎えに来たので、二人で並んで駐輪場まで歩いた。
いつもの様に下らない雑談をしながら二人で歩いていると、俺一人で校内を歩いてる時よりも衆目がハンパ無くて、ポジティブシンキングを心掛けてる俺でも流石に周りからの視線が気になったが、俺と違って優木会長は全く気にしてない様子で、流石3年生で生徒会長なだけはあって堂々としていた姿は、ちょっと格好良かった。
優木会長が連れて行ってくれたお店は、以前教えて貰っていた「萬福軒」という優木会長お気に入りの中華料理屋で、俺も1度だけ来たことがある店だった。(中3の時に北中の校門で暴れて取り押さえられ、俺を引き取りに来てくれた当時の担任に連れて行ってもらったお店)
優木会長は「ここの唐揚げが絶品なの!」と言ってて、たしか前回来た時は唐揚げは食べなかったので、今回はその絶品唐揚げが食べれるんだと、ちょっとだけテンションが上がっていた。
赤い暖簾を
そして店員さんは俺を見て「ええええええ!?アリサちゃんとうとう彼氏出来たの!?すっごいイケメンじゃないの!」と席に案内もせずに騒ぎ出したが、優木会長が「ま・だ・ですよ!まだカレシじゃないですよ! でも近い将来カレシになる予定ですからね!」と勝手に彼氏候補として紹介していた。
女性の店員さんと優木会長が立ったままお喋りが盛り上がってて、俺が手持無沙汰になっていると、カウンター越しに厨房の男性店員さんが「カウンターどうぞ」と言ってくれて、言われた通りに一人でカウンターに座るとお水出してくれたので、優木会長たちのお喋りが落ち着くまで水飲みながら待った。
店内を見渡すと、去年来た時とほとんど変わって居ない。
このお店には何か不思議な縁を感じるな。
あの時は、当時付き合っていたアズサさんに浮気され浮気相手のブサイク君をボッコボコにして、担任が俺を慰めようとココに連れて来てくれたんだよな。 そして今日は、学校で落ち込むことがあった俺を、優木会長が元気づけようと連れて来てくれた。来て早々放置されてしまっているが。でも、そういうフリーダムなところも優木会長らしいよな。
しみじみとそんなことを考えていると、漸くお喋りを終えた優木会長が俺の隣に座り、厨房に立つ男性店員さんに「マスター、唐揚げ2人前と炒飯も2つ!」とカウンター越しに注文をした。
すると、マスターと呼ばれた店員さんに「今日は餃子はいいのか?」と聞かれて、優木会長は「今日はボーイフレンド連れて来てるんですよ?ニンニクの匂いが気になるじゃないですか」とマスターとも慣れた感じにお喋りをしていた。
料理が来るのを待つ間、優木会長が教えてくれた話では、厨房で料理しているマスターはこのお店の三代目で、最初に喋っていた女性の店員さんはマキさんと言ってマスターの奥さんで、しかも二人は幼馴染で結婚してお店を継いだらしい。
「こういう夫婦で一緒に商売したりするのって憧れるのよね。それに幼馴染っていうのも羨ましいわね!私、幼馴染とかも居なかったから、マスターとマキさんみたいな夫婦に憧れてるの」
「俺も異性の幼馴染居るけど、全くそういう感じじゃないですよ」
「ええ!?マゴイチも幼馴染いるの!? まさか・・・私の告白断った理由って」
「いやいやいや、幼馴染は全然関係ないっす。俺の幼馴染天然アフロだし、何かあるとすぐ俺の金玉潰そうとするし、付き合うとか結婚とか絶対ありえないですよ」
「へーそうなのね。今度会ってみたいな、その天然アフロの幼馴染と」
そういえば、優木会長とアフロって二人とも高校3年で同い年か。
二人ともボス級クラスの濃いキャラしてるから、会わせたりしたら殴り合いのケンカとか始めそうで怖いな。
初めて食べた萬福軒の唐揚げは、プリプリのジューシーでマジで美味かった。
優木会長が通い詰めるのも納得の美味さだった。
唐揚げと炒飯を食べ終えてお店を出る頃には、落ち込んでいた気分もすっかり忘れていつもの元気を取り戻せていた。
唐揚げが美味しかったからなのか、優木会長とのお喋りが楽しかったからなのか、多分どっちもだと思う。
この頃から俺の中での優木会長は「気を使わなくていいし相手も俺に気を使わないから、気楽に話せる年上の姉御」という位置づけになっていた。 アフロとはまた違う異性の友達という感じ?
アフロの場合は女として見て無いし、ガキの頃からの悪友。
他人には話せないような話もアフロなら普通に話せる。彼女作って童貞卒業したいとか、可愛くない子を彼女にするんだとか、そんな話は普通異性の友達だとドン引きされるだろうけど、アフロには話すし、アフロもドン引きはせずに聞いてくれる。
優木会長の場合は、あくまで年上の女性としてだが馬鹿話が出来るし喋ってて楽しい友達。
相変わらず優木会長の好意に応えるつもりは無いけど、友達としての付き合いは続けて行きたいと思う様にはなっていた。
_______________
1部、終わり。
次回2部スタート。
オマケ:『萬福軒』を舞台にした別の作品「バッドエンドのその先」
https://kakuyomu.jp/works/16816927862686015446
興味がありましたら、是非どうぞ。
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