第14話 お話 クラスメートの決意

ご飯ができ、スミソリアは戻ってきたがアリスは戻ってこなかった。スミソリアいわく「ちゃんとお話しなさい。」らしい。


「・・・おなかすいてるよね。」


僕は取っておいたご飯の残りを空間倉庫から取り出し卵と玉ねぎ、鶏肉、醤油、だし、砂糖を出し、材料を時間短縮のため魔法で切り、そして、次も時間短縮のため圧力をかけて具材を茹でて親子丼を作った。


「え〜と、アリスはどこにいるかな?」


【鑑定】


僕は魔王の結界内を鑑定で調べ上げ、アリスの居場所を探す。魔王の結界が区切りになるとは思わなかった。そして、幸いなことに中で使われた魔法の詳細や中の行動がわかるようには作られていないため、僕達の行動が漏れることはなかった。


「あ、いた。え〜と、ここは第3物置だな。」


僕は第3物置に向かう。その時、ついでにケインの容態を確認する。魔石のヘリも計算通りで、このままなら、1年は持つだろう。


「・・・ねぇ、ケイン。・・・あのとき、僕達を守ってくれてありがとう。だけどね、早く起きなよ。皆が、特にゴイルが泣いちゃうよ。」


僕はそう言ってからアリスのいる場所に再度向かった。




































〜〜〜〜SIDEアリス〜〜〜〜〜〜








あぁ、私はなんて愚かなのだでしょうか。召喚者召喚の儀式の際も魔王討伐の際もミズル様に迷惑をかけてしまった。特に今回私がミズル様に会いたいという理由だけでこの世界に繋げてしまった上魔物や魔王も入り込んできてしまいました。そのせいでこの世界の人やケインも怪我をしてしまったり死んでしまいました。おまけに魔王討伐の手伝いもできずにいます。あぁ、なにがお嫁さんでしょう。私は生きている資格すらないのです。そんな者がミズル様のお嫁さんになれるはずもありません。


コンコン


そんな事を考えていたら私が隠れている部屋のドアがノックされました。ここにいることを知っているのはスミソリアだけですしお昼でも持ってきてくれたのでしょうか?もし持ってきたのだとしたら断りましょう。私はなんの役にも立てません。ならば、死んで食い扶持を減らしましょう。


そう思いながら、扉を開けるとそこには、私が大好きで今は会いたくない人がお昼を持って立っていました。


「アリス。おなかすいてるでしょ。ご飯食べながらお話しない?」




























〜〜〜〜SIDEミズル〜〜〜〜










「アリス。おなかすいてるでしょ。ご飯食べながらお話しない?」


僕がそういうと、アリスは


「・・・い、いりません。話すこともありません。去ってください。」


そう言い、顔を背けてしまった。なら、


「そっか。・・・アリスが食べないなら僕も食べない。」


「ふぇ?」


「アリスがいつまでも食べないなら僕も食べない。そうなると、2人共死んじゃうね。」


僕がそういうとアリスは


「だ、駄目です。私は別にいいですけどミズル様が死ぬのは駄目です。」


「じゃあどうするの?ご飯食べる?食べない?」


分かってる。これはある意味脅迫だ。だけど、こうでもしないとアリスは本当に飢え死ぬだろう。


「わ、わかりました。食べます。」


よし、成功。


「良かった。じゃあ、はいこれ、どうぞ。」


作戦成功。


























〜〜〜〜SIDEアリス〜〜〜〜












「ふぇ?」


どうして、そうなるのですか!ただでさえ空腹のところへ私の大好きなミズル様の料理。しかも親子丼の匂いで先程の決意が揺らぎそうになってるのにそこにミズル様が絶食なんて!おまけに死んでしまう!駄目です。私はいいですけどミズル様は駄目です!それを回避するには・・・・・。


「わ、わかりました。食べます。」


はぁ、負けてしまいました。
































〜〜〜〜SIDEミズル〜〜〜〜








さて、アリスに食べさせることには成功した。次は、


「・・・ねぇ、アリス。」


「ミ、ミズル様!」


「「あ!」」


重なってしまった。


「ど、どうぞお先に。」


「いや、レディーファースト。お先にどうぞ。」


「うう、ずるいです。・・・わかりました。ミズル様。」


「うん。」


「・・・私のワガママのせいでこの国に、世界に魔物を連れてきてしまって申し訳ありませんでした。」


「・・・・」


「おまけに、先生という人たちも亡くなってしまった上、皆さんの人生も大きく変えてしまいました。」


「・・・」


「その上、ケインは、ゲインは永遠に眠ってしまって、私は、ミズル様にづいていくことも、周りの魔物をだおす事もできません。」


「アリス。」


「こんな、こんな私はもうミズル様のお嫁さんにも、王女にも、生きてる価値すらありません。」


「アリス。」


「こんな私はもう死んで、少しでも食料の減りを遅くすることが唯一の出来るk!」


「アリス!」


僕は我慢できなくなってポロポロ涙を流すアリスの顔を自分の胸に寄せた。


「・・・確かにアリスが来たせいで魔物や魔王が来て、先生が殺され、皆の人生も変わった。」


「!・・・。」


「だけどね。だけどね、それでも死んだほうがいいなんて言わないで欲しい。いや、言っては駄目なんだ。」


アリスは体をビクッと震わせ、ちょっとずつ泣き始めた。僕の服が濡れていくが構わない。


「アリスがいなくなったら、ケインにゴイルにスミソリア。王様や王妃様、君の兄弟たちも悲しむし、僕も悲しむ。」


僕は少し言葉を切って話を続けた。


「それに、アリスは自分が来ることで魔物や魔王が来ると分かってきたの?」


ブンブン


僕の胸で顔を埋めて泣きながら首を勢いよく横にふるアリス。


「なら、アリスに否はない。合ったとしてももう十分なほどに罰を受けた。君は自分が痛めつけられるのは平気でも自分のせいで他の誰かが傷つくのを悲しむことが出来る人だ。そんな事ができる人は残念ながら少ない。けど、君は出来る。そもそも、なんで自分が役に立たないと思うの?確かに、アリスは料理もできないし、飾り付けもできない。貴族としての礼儀もできないし、なにかを修理することも、獲物をさばくこともできない。」


「ミズル様?」


「それに、洗い物もできないし、罠を見つけることもできない。」


「あ、あの、ミズル様?」


「だけどね、君は人一倍勘が鋭いし、優しい。子供とすぐに仲良く慣れるし、相手の悪意を受け取らない。」


「なんか、嬉しいような嬉しくないような?」


「だからね、君は役に立たないことなんてないんだよ。だから、死なないで。生きてて。生きてる意味はある。」


僕は一生懸命言葉を考えて、気持ちを込めて伝えた。


「・・・ミズル様。」


「なに?」


アリスはしばらく無言だったが少し間をおいて恥ずかしそうにしながらも


「前みたいにミズルお兄ちゃんって呼んでもいいですか?」


って言ってきた。僕はいつかの冒険のときの依頼のことを思い出し、懐かしくなりながらも”いいよ”と答えた。


「ありがとうございます。それと・・・」


また間を少し開け顔を埋めながら言った。


「もう少し、このままでいさせてください。」


その言葉に僕は


「いいよ。落ち着くまでこうしてここにいるよ。」


そう言い、静かに泣くアリスの頭をゆっくりと撫で続けていた。
























































〜〜〜〜〜〜クラスメイトの一部とゴイルとスミソリア〜〜〜〜〜












校庭でクラスメイトの一部。矢木さん。クリスさん。九沢くん。と、ゴイルとスミソリアが立っていた。


「何かしら?私達に頼みって?」


スミソリアは首を傾げて問う。ゴイルは聞いているようで半分寝ている。そんなゴイルをスミソリアが精霊に頼んで起こしてもらう。そんな光景を見ながらクリスさんが切り出した。


「お願いがあるんです。私達に戦いの修行をつけてください!お願いします!」


クリスさんたちは頭を下げて頼み込んだ。スミソリアは予想がついていたのか、


「いいけど、それならミズルに頼んで「駄目なんです!」え!?」


「私達が修行をつけてもらいたいのは、亀谷くんの旅に着いていきたいからなんです。」


この言葉にスミソリアやゴイルは驚いた。まさかこんな事を言うとは思わなかったのだ。


「本気なの?その言葉がどういう意味を持つか分かってるの?」


「分かってます!」


「あなた達2人はどうなの。さっきから、この子しか話してないけど。」


スミソリアは九沢くんと矢木さんに問いかけた。


「俺も、亀谷に着いていきたい。俺は亀谷に命を助けられた。だから、亀谷には生きてもらいたい。その手伝いを少しでもしたい。・・・それに、一回くらい勝ちたいからな。俺が将棋で勝つまで、亀谷には生きていてもらいたいんだ。」


「私も、亀谷くんにはこのクラスが始まって助けてもらって。この間も読書感想文を書くのに必要な本を貸してもらったし。それに、友達が知らないところで頑張って死ぬのは嫌なんです!」


2人の言葉にスミソリアたちは少し驚いた。


(ミズル。・・・友達と呼べるようなものがいたのね!!!こんなにも思われているなんて。それに、このクリスという少女。・・・アリスの宿敵になりそうね。)


(ミズルについていくなんて、どういうことか知ってるのか!?俺でも吐きそうになったんだぞ!あんなに肉を食ってないやつなのに。)


2人とも少し方向性が違っていた。


「・・・3人の気持ちはわかった。しかし、ミズルは今99レベル。君たちは今1レベル。いくら修行しても追いつくことは簡単でないわよ。」


スミソリアの厳しい言葉にも3人は屈せず


「分かってます。」


「追いつけなくても」


「少しでも助けになれるようになりたいんです!」


と自分の気持ちを伝えた。


「・・・あなた達の気持ちはわかったわ。」


スミソリアの言葉に3人は顔を輝かせた、しかし、次の瞬間顔が暗くなった。


「でも、修行をつけるかどうかは別。私の出す課題に答えなさい!そうしたら、修行をつけてあげる。」


「課題ってなんですか?」


九沢くんが聞く。


「それはね、私に3人でかかってきなさい。私は魔法も体術も一切攻撃しません。回避行動だけをします。その私に、攻撃を一度でも当てたら修業をすることを約束しましょう。」


スミソリアの言葉にクリスさんたちは


「回避だけで」


「3人なら」


「合格できるかも!」


「「「お願いします!」」」


と覚悟を決めた。その時ゴイルは


(回避だけならミズルに届きそうなスミソリアに当てるなんて。同士討ちを狙われそうだな。)


どこからか取り出した肉をかじりながらそう思っていた。もはや、自分がここにいる存在理由すらないことに気づいていない。

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