第11話 被害3

「・・・で、ミズル。ケインはどうなんだ?まさか・・・。」


ゴイルが聞いてきた。いつもの口調と少し違うから、本人もかなり気にしているのだろう。


「ケインは・・・ケインは、生・き・て・は・い・る・。」


「本当か!良かった。」


「ええ。本当に。・・・?待ってください。ミズル。生・き・て・は・い・る・。どういうことですか?」


「お、本当だ。どういうことだ。ミズル。」


スミソリアは気づいたようだ。ゴイルも今気がついたようだ。アリスは・・・さっきまで撫で回していた手を止め、ケインの方を見ている。さては、鑑定魔法を使っているな。


「え、そんな、まさか。嘘ですよね。ミズル様。」


声が震えている。


「・・・嘘じゃないよ。アリス。このままだと、ケインは一・生・目覚めることはない。」


僕の宣告にアリス、ゴイル、スミソリア、そして、部屋の外で立っていたクリスさんが息を呑むことが感じられた。


「・・・なんでだ。」


と、ゴイルが呟いた。


「ゴイル。」


「何でなんだよ!なぁ、ミズルとアスクがいれば治せない傷はないだろうが!それに、片腕がないからって命に関係してるわけじゃないんだろ!」


ゴイルが叫んだ。その叫びは長年の友が目覚めないことを嘆く悲しみとやるせない怒りが混ざり合っているかのようだった。


「ゴイル。落ち着いt」


「落ち着けるわけ無いだろうが!なんでスミソリアはそんなに落ち着いてられるんだよ。アリスも!」


スミソリアがゴイルを落ち着かせようとしたが失敗してしまった。


「私は、・・・・・・・・私は精霊の声が聞こえます。ゴイルも知っての通りエルフですから。この地には精霊は少ないですが、かすかに、かすかに『この腕ヤダ。』『取り込まれる。』と聞こえます。・・・その理由は」


「スミソリア。そこから先は僕が言うよ。・・・僕はみんなの主治医でもあったからね。」


段々と言いづらくなっていくスミソリアを見ていられなくなった僕は遂に口を挟んでしまった。


「ゴイル。アリスとスミソリアも分かってると思うけど聞いて。ケインの腕の切られた部位には魔王の闇の魔力がベッタリと張り付いている。イメージで言うとジャイアントフロッグの唾液がベッタリとついた感じ。」


ゴイルにはこうしていったほうが早く伝わる。


「・・・ジャイアントフロッグの唾液にはミディスネークの血液が効くだろう。その血液みたいなものはないのか。」


うん。ゴイルは戦いに関連させると話が早い。


「その血液に変わるものが僕やアスクの使う治癒なんだ。だけど・・・」


「なら治せるんだろ!」


「無理なんだよ!」


「ッ!」


僕が叫んだことによってゴイルは少し驚いたようだった。


「・・・闇の魔力が濃すぎて、消しきれないんだよ!僕もアスクも!」


「じゃ、じゃあケインは。・・・死ぬのか。」


最後の方は小さくつぶやかれたが静かだったためみんなによく聞こえた。


アリスとスミソリアは手を固く握り、唇を噛み締めうつむき、クリスさんは口を手で覆い先生の死を思い出してしまったのか顔が青ざめていった。


「死なせない。今の僕たちにはこの状態を保つことが精一杯だ。だけど、レベルを上げれば打ち破れる。もしくは魔王を倒せばケインの状態は改善するはず。」


僕の言葉を最後にして場は沈黙に包まれた。そしていつの間にかアスクは消えていた。・・・本当にアリスが苦手なんだな。




















































僕達は体育館に戻り、騒いでいる生徒のみんなを落ち着かせたあと図書室には絶対に入らないように言い、食事を作り、昨日と同じように食べていった。ただ昨日とは大きく違う点が1つあった。それはみんなも気づいているのだろうけど僕達の雰囲気に察したのか黙っていてくれた。そして、夜。僕はまた校庭に立っていた。昨日と同じように水刀を練習したあと僕は光刀を練習し始めた。光刀は他の技よりも使い方が難しく、力が強い。特に終の技は、放つとしばらく反動で動けなくなる。そのため必殺技として使用していたのだが・・・その時ふと思い出した。師匠の言葉だ。『お前は、今まで召喚されたものの中で最もおかしい。攻撃力も魔力も魔法力も防御力も平凡なのに今までの召喚者を凌ぐなにかがお前の中に存在している。それは、応用力だ。今までお前より強いものは何人もいた。だが、召喚されたときのお前と戦っても勝てるものは少ないだろう。なぜなら、お前は誰にも負けない応用力を持っているからだ。だから、状況を打開できないときは新しい力を身につけるのではなく今自分にある力を使って新しい力を生み出せ。それがお前にはできる。お前にしかできないことだ。』僕はこの言葉を頭で心で考えた。そして、思いついた。


「・・・もし、異なる属性の魔法剣を一度に使えたら、強力な武器になるんじゃないか?」


考えるよりも実行する。それが、今僕ができる最善の手なのだから。そうでしょ、師匠。僕はそう思いつつ夜が明けるまで訓練をしていった。

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