第10話 被害2
クリスさんが起きた。そろそろ、他のみんなも起きるだろう。ケインはまだ起きない。あのとき、魔族の攻撃が僕達を襲ったとき、僕は自分の出せる最大の技を持って迎え撃った。けど、それじゃ足りなかった。僕の実力が足りなかったせいでケインは、片腕を、失ってしまった。僕は異世界では召喚されたもの。だから、治癒魔法も瀕死寸前なら、完全回復できるくらいの力はあった。当然部位欠損も治せる。でも、魔王のさっきの攻撃。あの攻撃は魔王の純粋な闇の魔力の攻撃。あの攻撃に直接当たって消し飛んだものは治せない。それは神ですら同じ。だから、打ち消すか逸らすしかできない。魔王との戦いでは僕達は全員その方法で五体満足で帰ることができた。でも、今回の攻撃は僕は充分に打ち消すことができなかった。ああ、今ほど力がほしいときはない。けど、今やることは・・・。
「・・・クリスさん。今、動ける?」
僕はクリスさんに問いかけた。
「!う、うん。動けるけど・・・。ケインさんは、その腕は・・・m「動けるなら、ケインを運ぶの手伝ってくれる?」。」
クリスさんの言葉に被せるような形になってしまった。
「・・・分かった。」
「良かった。今、僕手に全然力が入らないし、魔力も底をつきそうなんだよね。じゃあ、少し身体を浮かせるから、足を持ってくれる。僕は頭の方を持つよ。」
クリスさんは、ケインの足を持って”これでいい?”と聞いてきた。
「うん。じゃあ、図書室に運ぶよ。あそこなら広くて、机もある。それに・・・あそこなら一番結界を張りやすい。」
そう言って、僕達は図書室にケインを運び始めた。
「・・・ごめんね。起きたばかりなのに3階までこんな重い甲冑着込んだ奴、運ばせちゃって。」
「ううん。大丈夫。それに・・・亀谷くんやケインさん。他の人達が防いでくれたから今生きていられるんでしょ。」
クリスさんがそう言ってくれた。そう言ってくれたら、ケインも嬉しいだろう。
「ん、着いた。じゃあ、クリスさん。ケインはそこに下ろすよ。ゆっくり。ゆっくり。そう。ok。ありがとうね。」
「え〜と、次は机を動かすんだっけ?」
「そうなんだけど・・・ここの机固定されているね。ちょっと下がっててくれる?」
「いいけど・・・何をするの?」
「こうするの。」
そう言ってから、クリスさんが十分に離れたことを確認して僕は魔法を使った。
【風刃ウィンドカッター】
すると、机の足は綺麗に切断され動かせるようになった。
「よし。じゃあ、運ぶよ。」
そして、ケインを並べた机の上に寝かせた。
「・・・クリスさん。ありがとう。ここまで運ぶの手伝ってくれて。おかげで、魔力も温存できたから、少し治療に使える。」
僕がそういうと、クリスさんは
「ううん。さっきも言ったけど助けてもらったし。それに私にできることなんてこれくらいしかないから。・・・ケインさんは助かるの?」
クリスさんは、心配そうに尋ねた。
「助ける。・・・それが、僕が今できることだから。・・・クリスさん。そろそろ、他のみんなも起きてるだろうから、アリスたちを呼んできてくれる?」
「分かった。すぐ呼んでくるね。」
タッタッタッ
クリスさんが階段を駆け下りる音を確認してから、僕は召喚魔法を使った。
【召喚:ガーネ。コスモ。アスク。】
唱え終わると魔法陣からガーネとコスモとアスクが出てきた。
「ガーネ。コスモ。体育館に行って周囲の警戒と瓦礫の撤去の手伝いをお願い。」
「わんっ。」
「んにゃ。」
元気よく返事して体育館の方に向かっていった。
そして、新たに喚んだアスクに向き合った。
「アスク。久しぶり。久しぶりで悪いんだけど、力を貸してくれる?」
【・・・我を詠んだということは、重症なのか?】
脳内に響く声に懐かしさを覚えながらも応える。
「そうなんだ。覚えてるでしょ。ケインだ。」
【此奴は確か・・・我を撫でくりまわしたやつか。・・・あいつはいないだろうな。】
「あいつって?」
大方予想は付いてるけど、とぼけたかった。
【決まっているだろう。・・・あれほど恐ろしく撫で回してきたのはあの女が初めてだ。確か・・・アリスといったか。】
「いるよ。う〜ん、今起きたっぽいからあと2分足らずで来ると思う。」
感覚を転移して伝えるとアスクは
【なにっ。それを早く言わんか。う〜、こいつケインには少し借りもある。さっさと終わらせるぞ。主よ。】
「ふふっ。ありがと。後でハンバーグあげるね。」
【・・・どうせ、ガーネたちと一緒だろうから言っておく。・・・2個だぞ。】
「分かった。いくよッ!」
僕は彼の報酬の要望を聞き入れたあとケインの治療を始めた。
【鑑定】
【消毒】
【冷却】
【細胞再生】
鑑定したあと雑菌が新たに入り始めていたので、消毒を始め、完全にいないくなるように冷却をして、ケインの腕の細胞を再生していく。だが・・・
【うむ。やはり闇の魔力が濃くて我の付与と治癒があっても治しきれんな。】
そう。闇の魔力の威力と拮抗しているのだ。
【ひとまずここは、この状態を保つようにしといてはどうだ?おそらく、この魔法を止めたら数時間以内にこの者の体は闇の魔力に呑まれてしまうだろう。】
「分かった。じゃあ、アスクはこの魔石に治癒の魔力込めて。この大きさとアスクの力なら1年は持つと思うし。」
そう言って僕は手のひら大の魔石を渡した。
【ふむ、緑竜の魔石か。これならそのくらい持つだろう。】
アスクが魔力を込めている間に僕は結界を組んだ。
【よし、できたぞ。・・・その結界はやりすぎではないか?下級の魔物なら触れただけで血肉になるぞ。】
「そのくらいしないとだめでしょ。うん、ありがと。」
僕は魔石をはめ込み、きちんと作動してる確認したところで気がついた。
「あ、アスク。」
【なんじゃ?主よ。】
「先に謝っとく。ごめん。間に合わなかった。」
【?どういうことだ?間に合う?ケインなら】
そうアスクが伝えようとした瞬間。扉が開き、アリスたちがやってきた。
「「「ケインは!!!」」」
3人がそういったあと、アリスの目線が僕の方に向き、アスクの方を向き、
「!アスクくん!久しぶりですわ!あ〜この蛇なのにもふもふなのがたまらないですわ〜。」
【これ、やめんか。ケインは、気にしないのか!】
「アスクくんがいる時点で大丈夫ですわ〜。」
そう、アリスは蛇でもふもふしているアスクが好きなのだ。
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