第8話 謝罪 新たなる真実

月の明かりに照らされて、かすかにまばゆい光を放つクリスさんの髪はきれいだった。 


「あ、え〜と、その、ね、眠れなくて。」


確かに、今日はいろんな事が起こったから眠れないかもしれない。


「それで、眠れなくて外の風に当たろうかなって思って出たら、亀谷くんが運動場に行くのが見えたから。」


なるほど。そういうことか。


「・・・確かに、今日は色々あったし、満月でキレイだけど・・・1人は危ないから、誰かと居てほしかったな。」


「あ、ごめん。」


「いや、考えてみたらこの学校は結界で囲われていて、魔物ははいってこれないし、誰かがそういった考えを実行に移したら僕がわかる。だから心配することはなかったんだ。」


「そうなんだ。・・・亀谷くんはなにしてたの?」


「僕も眠れなくてさ。だから水刀の訓練をしていたんだ。・・・僕はまだ訓練をしているから布団に戻ったら。今の時期はどんどん寒くなる。風邪引いちゃうよ。」


「・・・訓練見ててもいい?」


「だから風邪h」


「私風邪ひきにくいの。最後になったのも去年だったし。・・・あれ。」


言葉に被せるように言ってきた内容は、とても安心できる要素がなかった。


「はぁ。分かった。」


【空間倉庫】


「これ使って。」


僕は空間倉庫からもこもこした服を取り出してクリスさんに渡した。するとクリスさんはそれをじっと見て


「亀谷くん。」


「ん、どうかした。サイズ合わない?」


「ううん。・・・どうして亀谷くんが女物の服を持っているの!?」


クリスさんが驚いて質問してきた。服を嗅いでいるが・・・もしかして。


「クリスさん。それアリスのじゃないからね。」


「え!じゃあ、これは。・・・はっ!もしかして亀谷くんの趣味なの!」


えらい間違いをされた。


「違うって。それは、向こうの世界で見つけたダンジョンの宝物の一つ。魔蚕のネグリジェまかいこのネグリジェ。サイズは自由自在。防御性能はBランクの魔物の攻撃くらいは弾き返せる。おまけに温冷調節機能付き。だけど、ぞれ女性ものだからアリスしか着れないんだけどアリスは夜はそんなもこもこのはいやって言い張って、売りに出そうにもなんで夜中に攻撃を想定しなきゃいけないっていけないことで誰も買わなかったから、僕が持ってたんだよ。」


この言葉を一息で言った。誤解されたらたまんない。


「そ、そうなんだ。勘違いしてごめんね。」


「ふぅ。いいよ。それあげる。僕じゃ使えないし。」


「あ、ありがとう。(やった亀谷くんからプレゼントもらった。)」


「じゃあ、それきて座ってて。・・・クリスさんの前じゃあ手、抜きたくないね。」


「ん?なにか言った?」


「ううん。じゃあ始めるよ。」


小声で言った言葉が聞こえていなくて良かったと思いながら水刀の訓練を始めた。


【水刀 1の技 水流】


訓練用の木刀に水が巻き付き運動場に水の軌跡が舞う。


【水刀 2の技 鉄砲水】


1の技が終わった地点から一直線に斬りかかる。


【水刀 3の技 水球】


今度は僕を中心に水の繭が出来上がる。これは、防御の技だから一つの穴もないようにしなければいけない。


【水刀 4の技 蒸気螺旋じょうきらせん】


また、僕を中心にして蒸気のような白い軌跡が渦を巻いて上に向かう。これは、頭上の敵に対しての技だ。


【水刀 5の技 ヤマタノオロチ】


次に8つの龍の頭のような斬撃が一度に現れる。回避できにくい技だ。


【水刀 6の技 津波】


初速は遅いが、威力が高く、広範囲の技だ。水刀は単体の技が多いため複数の相手には重宝する技だ。・・・最も別の種類の剣技を使えばいいのだが。


【水刀 7の技 激浪万波激浪万波げきろうばんぱ】


水刀最後の技。最も威力が高く、一番扱いに難しい技。そして、広範囲の技。さっきの魔物の大群に襲われたときにこれを使えばよかったのにと思うかもしれないが、この技は自分の周りにも被害を与えるし、力を溜めなければいけないから使えなかったのだ。


すべての技を放ち終え、運動場を見渡した僕は苦笑いをした。


「・・・これ・・・整地しないとな。」


運動場は、技の余波でところどころ抉れ、割れ、破壊されていた。


「クリスさん。技、当たってなかった?」


この惨状を目の当たりにした僕は、クリスさんに当たらないように気をつけたけど余波に当たってないか心配になった。


「・・・・・。」


「クリスさん?大丈夫?」


返答がない。


【鑑定】




種族:人間




名前:クリス・テンペスト




身長:162cm




体重:???




血液型:A型




特技:多国語話術




状態:恋


   麻痺










なるほど、麻痺状態になっているから反応しないのか。恐らく、技の衝撃で麻痺しているんだろう。それよりも、恋という状態だ。今まで見たことはないが、恐らく誰かに恋をしているのだろう。誰だろうか・・・。いや、人の恋路に首を突っ込んではいけない。だが、なぜだろう胸がもやもやする。まぁ、まずは、クリスさんを起こさないと。


【空間倉庫】


僕は空間倉庫から爆竹を取り出した。


【結界】


次に結界を僕とクリスさんを中心として5mに囲った。


【点火】


最後に初級の魔法の一つを使って爆竹に点火した。結果はおわかりになると思う。


結果


クリスさんは飛び起き、大きな音を急に出さないでと言われた。












「・・・ごめんね。」


僕は教室に帰る途中クリスさんに言った。


「さっきの爆竹のこと?もう良いよ。」


「いや、それもそうなんだけど・・・魔物に囲われるようなことにしちゃってごめんね。」


「ああ、そういうこと。」


「僕が異世界を去る前に、彼らに忘却魔法をかければよかったんだ。そうすれば・・・」


「・・・それをかけたらどうなるの?」


「・・・対象を設定しなければいけないけど、彼らは僕のことを忘れる。」


「ッ!」


「そうしておけば、彼らがこの世界に来ることもなかったんだ。そして、魔物がっ」


パシンッ


「???」


「・・・記憶を消すなんて、そんなことをしてもあの人達はきっと思い出してこの世界に来ていたよ。」


「そんな事はできないんだ・・・。」


「できる!だって、私なら、私なら、何回でも絶対に思い出すから!」


「・・・?」


「それに仲間だったんでしょ。それなら、忘れることなんてない!」


頭を思いっきり殴られたかのようだった。はぁ、いつの間にか仲間ということを忘れていたようだ。


「・・・クリスさん。」


「あっ、ご、ごめん。叩いちゃったり、叱っちゃったりしちゃって。」


「ううん。おかげで目が覚めた。ありがとう。」


僕は笑っていった。すると、クリスさんは


「・・・いきなり不意打ちはずるいよ。」


と言い残して倒れてしまった。




















































〜〜〜〜朝〜〜〜〜






やはり起きない人がいた。そのため、やりたくはないがやることにした。起きている人が全員武道場にいるのを確認した。全校生徒750人。武道場にいる生徒627人(僕を含めて)。残りの123人には今日は少し焦げてもらおう。ちなみに全員男子だ。女子は仲間意識が高くしっかりしているらしい。


【遠隔】


【マーキング】


【スパーク 微弱】


魔法を放った途端校舎の方から悲鳴が上がった。全員起きたらしい。


「え、なにしたの亀谷くん?」


矢木さんが聞いてきた。


「このくらいの微弱な電気を流しただけ。」


パチパチ


指を広げそこから先程と同じ電気を流した。


「・・・触っても良い?」


「いいけど・・・少し痛いよ。」


「え・・・。行くね。」


パチッ


「キャッ。」


少し痛かったようだ。


「・・・これ、受けた人びっくりするだろうね・・・。」


「大丈夫?」


【ヒール】


「あ、痛みが引いた。・・・この魔法って彼らにもするんだよね?」


「いや。起床時刻にまでに起きてこなかったからこれをしたんだし、特にするつもりはないよ。」


「えぇ〜〜〜。」


そんな事を話していると、結界の外に出て魔物を倒してたケインとゴイルとアリスが帰ってきた。・・・手に魔物を下げて、衣服を血で濡らして。


「お〜い帰ったぞ〜。」


と、ゴイルが言った瞬間周りの生徒が気づき、血まみれの様子を見て、悲鳴を上げた。


「はぁ〜。おかえり。・・・魔物下ろして、3人ともくっついて。」


「ん、こうか?」


「なんでこんなことを?」


「くっつくのならミズル様がいいですわ。」


そんな3人がくっついたのを確認した後、魔法を使った。


【球体結界】


「「「え!」」」


【強力洗浄】


「「「ギャーーー」」」


【強力脱水】


「「「ギューーー」」」


【解除】


バタン


ドシン


クタ


「うん。綺麗になった。」


そんな僕と、ぐったりしたゴイル、ケイン、アリスを見て全員絶句していた。




















「おい、ミズル。」


「なに、ケイン?」


「魔物を倒したらな、俺達のレベルが上ったんだ。」


「え。」


僕達は魔王を倒すためにレベルを99までカンストさせている。それなのに上がったということは、


「この世界の魔物はもっと強いかもしれないっていうことだ。」

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