第7話 拠点 2 月明かりの下で

とある生徒SIDE






くんくん・・・いい匂いがする。そんなことを思っていたら誰かのお腹がなった。時間が気になり腕にある時計を見ると、あの魔族?とかいうやつに捕らえられたときに壊れたらしく動いていない。・・・まぁ100円の中古品だったが。隣の女の子に聞いてみることにした。


「なあ。今何時だ」


尋ねて少ししてから振り返った顔を見てみたら


ブルッ


背筋から冷たい汗が出てきた。なぜだろう。


「・・・なんですか。」


声は柔らかい。だが、とても暗く重い。空気が液体のりのように粘りついたみたいだ。


「あ、ああ。今何時なんだ?俺の時計壊れてしまったみたいで。」


そう言いながら、腕の壊れた時計を見せる。


「・・・今、6時15分ですよ。」


ちらりとみてから答えてくれた。ところで、なんでこんなに声が重いんだ?


「だ、大丈夫か。とても重い声だが。気分でも悪いのか。」


少し心配になった。俺みたいな男はまだ大丈夫だが、女の子は繊細と聞いたことがある。


「・・・いいえ。この状況自体は嬉しいんです。」


少し、顔をほころばせながらその女の子はいった。どういうことだろう。


「・・・大好きな人と一緒の空間にいれて、その人の食事も食べれるのですから。」


・・・え、待てよ、今の言葉から考えるとこの女の子は


「なのにあの、王女のせいで全て台無し。折角のチャンスだったのに。」


そう言ってから、またテーブルクロスがひかれたテーブルに突っ伏してしまった。


今回のことから一つ。女の子は繊細じゃない子もいる。






































アリスSIDE








ふふふ。ミズル様とひとつ屋根の下。これは・・・夜這いのチャンスですわ!この世界にも私ほどじゃありませんがミズル様のことを好いている娘がいるようですし。はやいほうが良いですわね。


「アリス。」


「なんですか。ケイン。」


「ミズルに迷惑を掛けてはいけませんよ。」


「嫌ですわ。私迷惑なんて掛けませんよ。」


そう私がするのは既成事実を作ることです。決して迷惑ではありませんわ。


「・・・夜這いなんかかけたら迷惑ですよ。」


「ぎくぅ。そ、そんなことする訳ありませんわ。」


なんで考えていることがわかるのでしょうか。


「はぁ。一つ教えてあげよう。この間、ミズルに聞いたんだ。アリスのことをどう思っているか。」


え、私のことをどう思っているか。どう思っているんでしょうか。もしかして・・・奥さんでしょうか!!!


「なんて言っていたのですか!」


「『う〜〜ん。僕はねアリスのことは可愛い妹みたいだと思っているんだよ。ほら、僕の跡を良くついてきてくれたし。』だそうだ。」


そ、そ、そんな〜。


打ちひしがれている私にクリスはさらに追い打ちをかけます。


「それと、夜這いなんか掛けるようなやつは好きになれないととも言っていたぞ。」


が〜〜ん。


考えていたことが通用しなくなり、私はテーブルに突っ伏しました。


















































水流SIDE






えーと、カレーはできた。白米も炊けた。さつまいもの味噌汁も大鍋いっぱいのが5個できた。焼肉も大量にできた。タレも完備。サラダも千切りキャベツと、トマトだけだけどできた。そして今ハンバーグが5種類焼けた。飲み物は・・・ピッチャーを各テーブル用意して、ジュースから紅茶まで用意しておこう。これでいいかな。


【マーキング】


【浮遊魔法】


【空中移動】


用意したものにマーキングして宙に浮かせて移動させた。食堂となった体育館には僕の空間倉庫にあった大量のテーブルとテーブルクロスが設置されている。・・・なぜか、クリスさんとアリスさんはテーブルに突っ伏している。寝ているのかな。そんな事を考えながら食事を移動させる。今回はバイキング形式だ。


ドスン


「みんな。おまたせ。メニューは白米に野菜カレー・牛肉カレー・キーマカレー(牛肉)・焼肉・さつまいもの味噌汁・キャベツの千切りにトマトのくし切り。飲み物はオレンジジュース・ぶどうジュース・りんごジュース・緑茶・紅茶・蕎麦茶の6種類を各テーブルにピッチャーで置いてあるから。ちなみに紅茶はアッサムという紅茶で癖がなくて飲みやすいよ。バイキング形式だけど限度は守ってね。」


説明を終えたが、反応がない。聞いているのかな。


「全員聞いてる〜?」


聞いてみたら、近くにいた子が教えてくれた。


「一応聞いているけど、全員お腹空いているし、それに・・・何あの宙を浮いていたの!それでみんな驚いているんだよ!」


そういうことだったんだ。


「浮いてたのは、魔法で浮かべてただけ。さぁ、挨拶をして食べよう。」


そういうと、先程の子は違うそうじゃないといった感じで首を振っていた。どうしたのかな。それよりも、ほとんど全員が手を合わせたので、挨拶をすることにした。


「じゃあ、いただきます。」


そうして食事が始まった。そしてしばらくしてから、至るところで声が上がり騒がしくなった。


































クリスSIDE






亀谷くんが作ってくれたカレーを一口食べると、びっくりするくらいおいしかった。私が選んだのは牛肉カレーだったけど牛肉がしっかりしていながらも柔らかくて噛み切りやすく、じゃがいもをカレーの中に入れると、辛味が押さえられてもっと食べやすかった。千切りは絹糸みたいに細くてキレイだった。トマトは酸味が強くなくて、甘く、飲み物は紅茶を選んだが、口の中がスッキリとして、体も心もホカホカにしてくれた。・・・これが食べ物の魔力というものなんだろうか。


そんな事を考えてたら、亀谷くんがきた。


「クリスさん。料理。どうかな。母親とパーティーの人以外に振る舞ったことがなかったから心配だったんだけど・・・。」


不安げな顔で聞いてきた。そう、あの娘は先に亀谷くんの料理を食べたのか。いいな。けどまずは感想を言わなくちゃね。


「すっごく美味しいよ。もうこんな美味しいもの食べたことない。」


私が本心を言うと亀谷くんは


「よかった。これで少しは気も紛れるかな。」


と、後半部分は独り言のように呟いた。そして、


「デザートはなにが良いかな?りんごとかでいいかな。」


う〜ん。本当は手作りのケーキとかも食べてみたいけど・・・。


「うん。りんごなら、みんな食べれると思うし。それに手間もあまりかからないでしょ。」


「手間はたしかにかからないね。一番かかるデザートなんて、不眠不休で作ったからなぁ。」


なんか恐ろしい言葉が聞こえたような気がする。その意味を聞く前に亀谷くんはりんごを準備しに行ってしまった。


みんなが食べ終えてから数分後、亀谷くんはりんごを白鳥の飾り切りにして持ってきた。・・・手間っていったい何?
















水流SIDE








全員食べ終えて、鍋も釜もなにも残っていない。良かった。


「じゃあ、寝るところを言うよ。この、体育館を女子が、男子は自分の教室や、空いている教室で寝てね。」


女子は、歓喜の声が、男子からは不満の声が。理由は、女子は友達とおしゃべり会ができるから。男子は狭いということらしい。けど


「男子諸君。まず、女子と近い武道場で寝るわけにはいかない。次に、女子をクラス別にしたら一人の子を取り合って険悪になるかもしれない可能性があった。最後に教室にしたのは・・・いや、これは明日の朝もしかしたらわかることかもしれないから言わないでおく。」


そういうと、男子はざわつきなにが起きるのか話し合っている。


「じゃあ、寝袋はこの学校にあったのを使うから。10時には消灯、起床時間は6時半から7時の間だよ。」


そして、全員が寝袋を確保したことを確認してから、男子は移動を始めた。それから、男子は馬鹿騒ぎをした。具体的にいうと枕投げならぬ寝袋投げだ。それがすべての教室で起こったため止めることはやめた。ただし、消灯時刻になって光が消えてもやっているところは、爆音を発生させてやめさせた。


みんなが寝静まったことを確認してから僕は運動場に向かった。


「今夜は満月か。」


こんな日は、水刀の技を練習するかな。


そう思いたち、技を次々と放っていると1人近づいてくるのが分かった。なにしてるんだか。僕じゃなかったら襲われてるかもしれないのに。


「なにしているのクリスさん。」


後ろを振り返ると、月の光に照らされて金色の髪が淡く銀色がかっていた。


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