第6話 お嫁さん? 拠点1
「・・・お、お嫁さん。」
と、クリスさんが呟いた。その瞬間、中級魔族なんか可愛いくらいの殺気が周囲に立ち込めた。
ビクッ
「・・・みんな、ものすごく濃密な殺気が急に現れた。」
なんでだ?魔族は倒したし、探知魔法にも反応はないのに。
「ミズル。」
ケインが話しかけてきた。
「・・・ケイン。この殺気誰だろう。探知魔法に反応しない。」
どうするべきか。
「ミズル。」
そうだ、勇者パーティーこいつらがいた。
「ケイン。みんなを守って。僕は周囲の探索に行って・・・ふがふが。」
突如口をケインに抑えられ、ゴイルに足を掴まれて持ち上げられた。
「ミズル。殺気の正体を探しに行こう。ここは、スミソリアに守ってもらって。さあ行こう。」
早口で言われ、反論しようにも口をふさがれているため、反論できない。
「待って!私をこの中に置いてかないでぇ〜〜〜!!!」
スミソリアが必死な顔で叫んでいる。そんなスミソリアと顔を青くした生徒を残し僕を担いだままケインとゴイルに運ばれていった。
〜〜水流がいなくなった後〜〜
「・・・お嫁さんってどういうことですか?」
クリスがものすごく低い声と濃・密・な・殺・気・を出しながらアリスに聞いた。まるで、空気が凍りついたかのように息がしづらいようだ。実際生徒やスミソリアは呼吸がしにくくなっていた。
「ふふふ。それはですねぇ。」
そんな凍ってしまったような空気ですら、溶かしてしまいそうな温かい声で答えた。
「私が将来、ミズル様の伴侶となり、ミズル様の子を私が産み、一緒に楽しく愛を育むことですわ。」
その言葉が言い終わる瞬間、爆発的な殺気と大地すら凍りそうな冷気がクリスから放たれた。
「・・・まだ亀谷くんは高校生ですよ。はやいです。」
微笑を顔にくっつけながらクリスが言った。
「こうこうせい?というのがわかりませんが、私達の国では12歳から結婚できるんですよ。だからおーるおーけぃというやつです。」
微笑を剥がすような暖かい声が放たれた。
「・・・か、亀谷くんが、あなたのことを、す、す、好いているかはわからないでしょ。」
震える声がクリスから放たれた。
「男の人はみんな大きい胸が好きということをお母様に教えてもらいました。私の胸なら、十分なはずです。」
そう言って、アリスはHcupはありそうな自身の胸を見る。
クリスも、その豊満な胸を見た後、自身のCcupほどの胸を見た。そして苦し紛れに言った。
「か、亀谷くんは小さい方が好みかもしれないわ!」
震える声で言いながらも、殺気は放ち続けるクリス。そんな彼女を見たアリスは、
「・・・そういうことですか。」
と言った。その瞬間、アリスからも凍えるような気が漏れ出した。
「・・・なにが?」
笑いながら、しかし殺気を放ちながらいうクリス。そんな彼女にアリスは
「ふふふ。それはですねぇ。」
先程も聞いた台詞。しかしその後に続く言葉は違った。
「あ・な・た・が・ミ・ズ・ル・様・の・こ・と・が・好・き・だ・と・い・う・こ・と・で・す・よ・。」
その瞬間、クリスはわかりやすく狼狽した。
「わ、私が、亀谷くんのことが好き!?な、なに言っているの?い、いくらなんでも困っているところを助けられて、その後も何度か助けてもらったからってそう簡単に惚れるような私じゃ」
「なら、私がミズル様と結婚してもいいですわよね?」
余裕の笑みを浮かべるアリス。
わかりやすくうろたえるクリス。
息がしづらく殺気に当てられた生徒たち。
困った顔をしているスミソリア。
「だ、だ、だ」
その後の言葉が続かないクリス。
「だ?だってなんですか?」
分かっているのに、わからないふりをするアリス。
「だ、だ、だって。私は!」
ぐぅ〜〜〜〜〜〜〜〜
突如お腹の音がなり、クリスの言葉が途切れた。
「ご、ごめん。」
音の発生源はスミソリアだった。
「ここ何日か満足に食べてなかったから・・・。うぅ〜〜〜。」
顔を赤くしながら説明して遂に顔を抑えてしゃがんでしまった。
「あれ、スミソリアはどうしたの?」
そこに水流がやってきた。・・・両手でケインとゴインを引きずりながら。
〜〜〜〜〜数十分前の水流たち〜〜〜〜
「ふがふが。・・・【光球フラッシュ】」
遂に耐えきれなくなった僕は魔法を使って脱出することにした。
「うわっ!」
「まぶしっ!」
ドタッ
手を離した二人から落ちた僕は、ゆらりと立ち上がりながら薄緑を取り出して立ち上がった。
「ねぇ、弁解の言葉はある?」
ものすごい怒りの気配で周りの草が揺れる。
「ま、待てっ!ミズル!」
「そ、そうだ。待てミズル。肉食うか。」
プチッ
「いらないよ!」
【炎刀 参の技 火砕流】
広範囲の技で一気に潰しにかかる。
「おいっ!ミズル。」
【拳結界パンチシールド】
僕の技とゴインの繰り出した拳がぶつかり合い、衝撃波が生まれる。
「・・・ミズル。いきなり技を繰り出すのはどうかと思うんだ。」
と、ケインが言ってくるがそれならこちらにも言い分がある。
「それなら、いきなり口を塞いで、持ち上げて運ぶのはどうなんだ?」
僕が自分の言い分を言ったら、ケインは目をそらした。
ピシッ
「ミ、ミズル。いい加減その武器を納めてくれぬか。」
結界にヒビが入ったからか、そのように言うゴイル。・・・仕方ないか。
「はぁ~~。分かった。」
そう言いながら薄緑を納めた。
「た、助かった。」
冷や汗をかきながら地面に腰を下ろすゴイル。さて、なんでここに連れてきたのかを聞かなくちゃね。
「それでケイン。ゴイル。なんでここに連れてきたの?ちゃんとした理由じゃなければたたっ斬るよ。」
ニッコリと笑いながら告げると、二人の顔が青くなっていく。おかしいな?今の僕は天使のほほえみを浮かべているはずなのに。
「そ、そ、それはだな・・・。」
言い淀むゴイル。その言葉を引き継ぐかのようにケインが言い出す。
「あのね、ミズルはアリスのことをどう思っているのかなぁ〜〜。って思ってね。」
そういうことか。
「う〜〜ん。僕はねアリスのことは可愛い妹みたいだと思っているんだよ。ほら、僕の跡を良くついてきてくれたし。」
僕がそういうと、ケインは納得したような顔でうなずいた。
「だから、ミズルは冒険のときもアリスが薄着一枚でも普通に接していたんだね。それにしても妹かぁ。・・・荒れそうだね。」
・・・?どういうことだろう?荒れるって?
「ひ、久しぶりに模擬戦などどうだ?ミズル。本気で戦い合いたい。」
・・・たしかにこれから戦わなくちゃいけないだろうし、勘を取り戻しておくか。
「いいよ。ケインはどうする?」
ケインの戦い方も参考になるからね。
「じゃあ、お願いしようかな。」
よし、じゃあ。
「じゃあ、2対1でいいよ。使って良いのは武器、魔法、体術ね。ただし相手を殺すような攻撃は駄目。いい?」
いつものルールでいう。
「うん、良いよ。・・・お手柔らかにね。」
「俺は本気でいいぞ。」
じゃあ、こっちも本気で行こう。
「それじゃ、・・・行くよ!!!」
【水刀 伍の技 ヤマタノオロチ】
【発勁】
【無限青雷突むげんせいらいつき】
3人の技がぶつかり合い、先程よりもさらに威力が上がったため凄まじい衝撃波が生まれ、それによって土煙が生まれ3人を包み隠し、激しい模擬戦戦いが始まった。
〜〜〜〜数十分後:アリスとクリスの現場に戻る〜〜〜〜
意識を失った、ケインとゴイルを引きずりながら元の場所に戻るとスミソリアが顔を押さえてうずくまっていた。そして、アリスとクリスさんが向かい合っていた。その向こうでは、みんなの顔色が悪かった。
「あれ、スミソリアはどうしたの?」
問いかけると、全員気がついていなかったようで、びっくりして飛び上がった。
「わ、私はべ、別になんとも・・」
ぐぅ〜〜〜〜。
「あ。」
もしかして。
「ち、違います。これは私じゃ・・」
ぐぅ〜〜。ぐぎゅるるるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
「「「「「「「「・・・・・・・。」」」」」」」」
「うぅ〜〜〜。」
全員の無言の圧力によって、また、しゃがみこんでしまった。
そういえばもう5時くらいかな。
「ケイン。ゴイル。アリス。此処梟高校を拠点にするよ。ここならみんなの住むところにできる。」
「分かった。俺たちは何をすれば良い?」
ゴイルが、聞いてきた。
「ゴイルは、周囲の索敵と結界をお願い。ケインはテーブルのセッティングと、壊れたところがないかの確認。アリスは・・・。」
アリスは・・・僕の脳裏に今までの光景が浮かび上がる。魔物の解体のとき、皮を上手に剥げなくて肉を2cmも切り取っていたこと。料理の盛り付けをお願いしたら、何故か魔法を使ってすべてを爆発させたこと。料理をお願いしたら、中からセミの抜け殻とか、魚の頭にゴブリンの耳が出てきたりしたこと。テーブルセッティングをお願いしたら、テーブルクロスが引きちぎれたこと。それらすべてを思い出して・・・結論。
「わ、私は何をしたら良いですか?ミズル様。」
「うん。アリスはみんなと一緒にじっとしていてくれる。」
「なんでですか!」
「え〜と。あ、アリスならみんなとすぐに打ち解けられるでしょ。お願いね。」
「ミズル様からのお願い。・・・はい。わかりました。」
ふぅ〜〜〜。なんとかなった。さてと、
「じゃあ、僕はみんなの料理作るね。」
そう言ったら、みんなから「えっ」て驚かれた。なんでだろう。
「亀谷くん。料理作れるの!っていうか、それだけの材料どこに?」
クラスの子から質問があった。そういう「えっ」か。
「うん。作れるよ。アレルギーある子は言ってね。それと材料は。」
【空間倉庫】
ドシンっ
その瞬間地面に巨大な牛の死骸が現れた。
「これ。今から魔法使って捌いていくの。」
全員絶句だった。
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