第5話 魔物が現れた真実 2   元凶

・・・っていうかなんで地球こっちに来ているの!僕そっちで王家としての役目を果たしてって言ったよね!


{”・・・・・お前は喋りすぎだ。用済みだ。最後にそこで苦しめ。”}


{ヒッ!あ、あのー話すことは話しましたし、そろそろ出していただきませんか。}


{ふがふが}


スミソリアはなにしているんだ?彼女しかあの娘を止められないのに。


{あの〜。出してくれませんかねぇ?}


{ふがふが}


「か、亀谷くん?どうかしたの?」


クリスさんが話しかけてきた。怯えた目で結界を見ている。


「ああ、そのさっきこいつらが話した勇者パーティーの姫様っていうのは・・・」


{い・い・か・げ・ん・に・し・ろ・ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!}


{ふぎゃっ!}


ボリボリ


{こんなもの!}


バチバチ


ピキッ


パリンッ


「あ。」


結界の方を見てみると、魔族がもう一体の口をふさがれていた女の魔族を握りつぶして、食べながら結界を叩き壊した。


「これは・・・。」


{はぁはぁはぁ。}


男の魔族は、元の種族の姿であろうブラックフェンリルに戻っていたが、力は増し、溢れ出る魔力も濃密になり、目が血走っていた。


{ガアアアァッ!!!}


「・・・狂化している。」


「どういうことなの?」


とクリスさん。


クラスのみんなの方を見てみるとまだ一塊になりながら、ガーネとコスモに守られている。これなら大丈夫だろう。ただ、クリスさんと僕の位置からは離れている。クリスさんが走っても追いつかれるかもしれない。なら・・・。


「クリスさん。僕から離れないでね。」


「ッ!分かったわ。」


そう言って、より近づいてきたクリスさん。


「・・・さっきまでは、情報を聞き出すために本気の10分の1以下で戦っていたけど・・・」


そう言いながら薄緑を構え刀身に水をまとわりつかせる。


{うぅ?・・・ガアアアァッ!}


元魔族の獣も口に圧縮した風の魔法を溜め込んでいる。風と水。相性はいまいちだ。だが・・・。


「もう手加減の必要はない。」


【水刀 弐の技 鉄砲水】


{ガアッ!}


ドーーーーーーン!!


互いの技がぶつかり合う。相手もすべての力をこの攻撃に加えているのだろう。一撃だけなら魔王と同じくらいの威力になっている。でも・・・。


「はあっ。」


{ガアッ!?}


徐々に互いの攻撃の接点が元魔族側に寄り、そしてついに・・・


斬ッ


薄緑が元魔族の首を高く、高く切り飛ばした。


ボトッ


テーン


テーン


{ガウ?ギャー。ギャ。ギャ。}


元魔族は血走っていた目が元の色に戻り、徐々に自分の首が切られたことを認識したようだ。


「・・・解けるな。」


{え、なんで俺の首が。・・・お前かぁ!亀谷!殺す殺す。お前は絶対に殺す!}


【召喚 死の大群デス・フェンリルホウスト】


そう唱えられた瞬間元魔族を中心に半径1メートルほどの穴が広がった。そして、その穴に元魔族は吸い込まれていった。それが、元魔族の男の最後だった。


「消、えた?」


とクリスさん。


「いや。これは、自爆魔法の一つ。・・・ガーネ!コスモ!」


「ワン!」


「ニャ!」


「全力でみんなを守って。攻撃はしなくていい。できるだけ長く結界を保って!」


「わん!アオォォン!」


「ニャ!ニャアアァァァァ!」


二匹が叫んだ。するとクラスメイトを守っていた結界は淡く光り目に見えるほど厚くなった。


「「「「「「「「「「「「「「「ッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」


バンバン!


「亀谷くん!クリスさん!」


「これどういうことだ!亀谷くん!」


九沢くんが叫ぶ。他のみんなも結界を叩いたり叫んだりしている。


「・・・これは僕の落ち度だよ。クリスさん。」


「え?」


「もっと最初から全力を出せば。最初から油断しなければ。」


「それは、情報が。」


「それは、本当の理由じゃないの。」


「・・・どういうこと?」


「クリスさんや、九沢くんに矢木さん。みんなを殺そうとしたやつを。先生たちを無惨に殺したやつを。一瞬で終わらせたくなかっただけ。・・・ごめんね。」


「けど!」


「今なら、間に合う。みんなのところに行って結界に入って。」


「・・・亀谷くんは?」


「さっきも言ったようにこれは僕の落ち度だし、結界には魔力がいる。だから少しづつでも駆逐していかないと。」


「そんな!そんなことしたら亀谷くんは!」


「・・・まぁ間違いなく、力に馴染んでないから全力を出せないこの状況じゃあただじゃ済まないね。もしかしたら・・・いや何でもない。早く結界に向かって。後15秒位だから。」


「・・・・」


「クリスさん?」


「いや!亀谷くんも行くの!」


そう言って僕の腕を掴んできた。これじゃあ、戦えない。


「ちょ、離して。これじゃあ戦えない。それにクリスさんも死んじゃう。」


「亀谷くんだけ残していくなんてできない!」


ザパァァ


遂に黒い穴から魔物が現れた。すべてがブラックフェンリルかファントムフェンリルだった。


もう走っても間に合わない。


「もうっ。離れないでよ。」


【広域水流スプリンクラー】


【広域電流】


ビリビリ


ドタドタ


ザパァァ


先に濡れさせて、電気を流して倒したが、使用者を分解してエネルギーを作り出しそのエネルギーで使用者が扱いやすい魔物を人工的に作り出しているこの魔法には意味が薄かった。


「やっぱり、あの穴を壊さないと。」


「壊せないの?」


「・・・あの穴を壊すには聖魔法の中でも一番威力の大きいホーリーハンマーがいいと思うんだけど。」


「けど?」


「僕にはその魔法が使えないんだ。」


【広域電流】


倒しながら言う。


「え。」


「聖魔法は中級以上となると聖騎士や聖魔女にならないと習得できないんだ。」


だから、僕には使えないのだ。本来の聖魔法ならこの程度の敵。一瞬でやっつけるんだろうけど。


「キャッ。」


「!危ない。」


ドシン


どうやら恐怖によって体制を崩し転んでしまったようだ。かばったので怪我はないが。魔法を使う直前だったため、魔物が一気に押し寄せてきた。


まずい、殺られる。




【聖金槌ホーリーハンマー】


突如目の前に白く暖かな光が広がり、魔物も魔物を生み出す穴も消え去った。


「「え?」」


今のは聖魔法。ホーリーハンマー。それに今の声。・・・まさか。


「全く、ミズル様に傷をつけようとするなんて万死に値しますわ。」


「というか、ミズル弱くなってね?」


「有無。やはり筋肉が落ちているのではないか?」


「いや、単にこっちの世界での魔法になれてないだけでしょ。私達は数日前にこっちに来たけど。」


やっぱりこの声は。


突如白い絹のような手が目の前に差し出された。


「お久しぶりです。ミズル様。会いに来ちゃいました。」


「・・・ありがとう。アリス。ケイン。ゴイル。スミソリア。」


そう。目の前に現れたのは異世界にいたときの勇者パーティの仲間たちだった。


















































































































































「それで、弁解の言葉はある?みんな?」


僕は自分でもゾッとするような低い声で言う。


「・・・いいえ。ありません。」


「ないであります。」


「ないわ。」


「・・・・・。」


4人中3人が答えた。答えてないのは・・・。


「アリス?」


「ヒッ。ピエ。・・・あ、あの。わ、私は。」


「うん。私は?」


「わ、私も、この世界に迷惑をかけたことを大変後悔しています。」


「・・・弁解の言葉はある?」


「べ、弁解かはわかりませんが、私はミズル様に会いたくてきたんです。」


「・・・・・。」


「ミ、ミズル様?」


「なんとなく。そんな気がしてた。」


そういうと、アリスの顔が輝いた。


「なら話が早いです。私の気持ちが分かっているのなら、今度は私のすべてを知りましょう。隅々まで知ってください。そして結婚して、永遠に暮らしましょう。子供は何人が良いですか?私は5人くらいが良いですけど、ミズル様が望むのならいくらでも作りますよ。だってミズル様と私の愛の結晶ですから。家はどこが良いですか?ミズル様はお城は好かないと言っていたので、一軒家ですかね。この世界が良いですか?それとも私の世界が良いですか?飼う動物はなににしましょう。ガーネちゃんとコスモちゃんがいますから鳥系のものでしょうか?私どんな生物でもお世話しますよ。ただヌルヌル系はやめてくださいね。後、お弁当の中身はなにが良いですか?おにぎりの具材はなにが良いですか?ミズル様はお肉なら鶏の照り焼き。具材なら梅干しでしたよね。それが良いですか?お夕飯の前はどっちが良いですか?どっちかってもちろん私か私とお風呂の二択ですよ〜。それで、どっちが良いですか?」


勢いよく言われた。


「そうだね。ってそうじゃない。」


危ない危ない混乱するところだった。


「全く、なんで来たのかと思えばそんな理由か。」


「そんな理由って。私はミズル様がいない暮らしなんて考えたくないんです。」


「君、王女としての仕事はどうしたの?婚約者もいなかったけ?」


「ああ、あの塵婚約者ですか。お父様に婚約破棄と言ったら、うるさかったので殴って、壁に埋め込みました。お父様にはミズル様と結婚するまで帰らないと言ってありますので。」


・・・・・ひどかった。想像以上にひどかった。一応第2王女なので、婚約者となると公爵以上か他国の王家になるはずだ。それを殴るって。


「あーーー。ミズル。殴られたのはヘンリー侯爵の息子のコイトだ。俺たちが出てきたときには集中治療室にいた。まぁ、いきているだろう。」


・・・まったくもって慰めにならない内容だった。そんな内容を伝えたゴイルは、収納庫から干し肉を出して齧っていた。


そうこうしていると、クリスさんや開放された他の生徒がやってきた。


「ねえ、亀谷くん。」


「なに?クリスさん?」


「その人達は?」


「あ~~~~紹介してなかったねぇ。じゃあ紹介するよ。


まず、金髪の男はケイン。勇者だよ。このパーティのリーダー。


次に、干し肉齧っているのがゴイル。拳闘士。


次に、緑色の髪の女の人はスミソリア。見て分かる通り、エルフで、精霊魔法使い。


最後に、ドレス着ているのがアリス。第2王女。聖魔法使い。」


そう言い終わると、勇者パーティのみんなが立ち上がって挨拶をし始めた。


「はじめまして。僕はケイン。一応リーダーをやっているよ。」


「俺はゴイル。食べるのと戦うのが好きだな。魔法は使えん。」


「もう、男どもはそんな挨拶しかできないの?私はスミソリア。エルフよ。得意属性は風と土。でも全属性使えるから。」


「わ、私はアリスです。第2王女やっています。将来はミズル様のお嫁さんです。」


瞬間空気が凍りついた。

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