第4話 戦い 魔物が現れた真実1
刀身から雷がパチパチと沸き立つ。魔族の切り飛ばされた首からは雷に焼かれて煙が出ている。胴体は床に倒れ、間違いなく普通の生き物なら生きていなかった。・・・普通の生き物なら。
「・・・いつまで死んだふりをするの。死んだふりするくらいなら、いっそ死んでくれない。本当に。」
と、僕は魔族に話しかけた。
{ハッ!なんで、なんで、お前が向こうの世界の”七刀流”を使えるんだ!}
{悔しい!悔しい!私の首が落とされるなんて!殺す!殺す!絶対に殺す!}
そう言いながら魔族の首は再生していった。切り落とされた首は溶けて消えていき、完全に消えた頃に魔族の首は完全に再生した。
{おい、なんでお前が七刀流を使えるんだ!それに、なんで、俺達の首を切れる!}
{そうよ!私達の身体は鋼より硬いのに!なんで、人間のあんたが私のこの美しい体に傷をつけられるのよ!}
こいつら、回復が早い。この早さは・・・
「中級か。」
{なんでそのことを!まさかお前・・・。異世界人か?}
{!そうなると、七刀流を使えるやつなんて限られているわ。一体何なのあんた!}
中級となると少し厄介だな。しかし聞きたいこともあるし。
なんか喚いていたが気づいていなかった。そしてそれが仇となった。
{無視すんなぁあああああ!!!!【大風たいふう】}
僕に向かって巨大な鳥の形をした風の魔法が襲いかかってきた。
「え!うわ!【サンダーシールド】」
ドオン!
{やったか!}
{殺ったの!?あいつどうする?献上する?それとも・・・}
{喰うに決まってるだろ!俺は頭から、お前は足からだ!}
{心臓は?胃は?}
{先に喰った方のもんだ!!!}
そう言って男の魔族は魔法が着弾したところに駆けていった。
{あ、ずるい!!!}
女の魔族も駆けていった。そしてそこには・・・。
{{!!!}}
{いねえじゃん!}
{あいつは!どこ!}
【魔法付与】
【聖光】
「こ・こ。」
僕は魔族の後ろに立ち、魔法付与した薄緑を手に構えた。
{{!}}
【水刀 弐の技 鉄砲水】
ドカン!!!
{グ!}
{ギャッ!}
技を受けた二人は衝撃を殺しながら後ずさっていく。
「待てっ!」
ガリガリ!
薄緑の剣先が床に傷をつけていく。
{クソが!【闇熱ぷぅ!】}
「言わせない!」
【火刀 参の技 炎車】
今度は薄緑に爆ぜる赤い炎がまとわりつき、威力を上げていく。
{グワッ!}
{アッツイ!あんで私が熱さを感じるの!}
また、後退していく二人を薄緑で床を削りながら追いかける。
それを繰り返すこと3回。ダメージを与えながら移動していく。魔族も反撃しようとしているが中断をして止めているので、こちらに被害はない。
{こんのやろう!ふざけるな!【闇衝撃波!ブラックインパクト!】}
{そうよ!【雷蛇サンダースネーク】}
5回攻撃を加えた後に中断させることが間に合わなくて魔法を使わせてしまった。
「あ!【水刀 参の技 水球】」
薄緑に淡い青色の水がまとわりつき魔法が着弾すると同時に僕を包み込んだ。
どおんんん!
煙が沸き立つ。煙とともに床が焦げた匂いが漂う。
{殺ったか!!!}
男の魔族SIDE
本当にムカつく!こいつ、俺たちは中級なのにギリギリで攻撃できないようにしてやがる。もう5回も攻撃を加えられた!けど、こいつは攻撃を加えた後に1,0秒ほど遅れて追いかけてくる。それを利用すれば。
今だ!
{こんのやろう!ふざけるな!【闇衝撃波!ブラックインパクト!】}
一番発動が早い魔法だ。これを防げるやつは上級にもあまりいない。
{そうよ!【雷蛇サンダースネーク】}
相方も今が好機だと思ったのか、魔法を放った。向こうは急いで防御をしたが俺たちが放った魔法のほうが早い。煙が沸き立ち、焦げた匂いがする。姿は見えないが、気配を感じられない。
{殺ったか!!!}
13HR SIDE(矢木)
凄い・・・。私は戦いを見てそう思った。亀谷くんが学級委員だった二人の首を雷とともに切り落としたと思ったら、今度はその首が再生して魔法?を放たれたけど防いで、何度も攻撃している。正直目で追えないスピード。って、亀谷くん。魔法当たっちゃった。煙が邪魔で見えない。まさか、まさか。
「亀谷くん・・・。」
いやそんな事あるはずない。けど、あの二人がこっちに向かって歩いてきてる。私達を護衛している子達は亀谷くんの従魔?というもので下級魔族というものなら1体でも倒せるみたいだけど・・・。
{カカカカ。あーあいつがいなくなったから、ゆっくりお前らを喰える。}
{ええ、そうね。こいつら、ずーと生真面目で面白みもなかったからどんな反応しながら喰われていくのか楽しみだわ。}
そう言って、一歩踏み出したその時五角形の白い光が床に現れた。
男の魔族SIDE
何だこの光?嫌な感じだ。早いところこの範囲から逃げよう。
{おい、この五角形から出るぞ。}
{分かったわ。じゃあ一気にあの餌13HRのところまで行くわ。}
・・・こいつエサを全部食べないだろうな。
{OKだ。行くぞ。}
「駄目だよ。行かせないし、みんなを食べさせもしない。」
この声は・・・。まさか!
水流SIDE
良かった。予想通りの場所だ。ここで発動させる。
「駄目だよ。行かせないし、みんなを食べさせもしない。」
【聖なる五角形ホーリーペンタゴノ】
戦いの間に仕込んでおいた術が発動して、魔族を聖なる五角形の檻で囲む。これなら逃げられないし、反撃できない。さて・・・。
「みんな終わったよ。大丈夫?」
見てみると、ほとんどの人が顔色が悪く、そしてなにが起こっていたのかわからない顔をしている。
「か、亀谷くん。さっき、攻撃。」
と、矢木さんが震えながら聞いてきた。攻撃とは恐らくわざと受けた同時攻撃のことだろう。
「ああ、あの攻撃ね。もしかしたら怖かった?だったらごめん。彼奴等を油断させるためには一度わざと攻撃を受けなきゃいけなかったから。」
「・・・そう。」
僕の答えを聞き答えてくれた矢木さんだが、声が低い。大丈夫だろうか。
「ねぇ、あの光の壁はなに?」
と九沢君が聞いてきた。若干震えているようだ。
「あれはね、簡易聖域。魔族は生半可な攻撃じゃ壊すことはおろか、傷をつけることもできない。」
「なんでそんなものを?殺すことはできなかったの?」
「できたけど、・・・聞きたいことがあったから。」
「?聞きたいことって?」
「それはね・・・。」
ガンガンガンガン
{おいっ俺達を早くここから出せ!}
{いいかげんにしなさいよ!絶対に殺してやんだから!}
魔族が手から煙を出しながら叩いている。痛くないのかな。
「そこから出したら殺そうとするでしょ。だから出さない。それから質問に答えて。」
そう、僕が魔族を閉じ込めたのは聞きたいことがあったからだ。
{はあ?誰がお前なんかの質問に答えるかよ!}
{そうよ!こんなところ壊してやる!}
そうか・・・。
「そっか。じゃあ痛くなるよ。」
{お前なに言って}
【ホーリースパーク 弱】
ビリビリ
聖域の中を微弱な電気が流れる。普通の人間ならいたずらグッズくらいだけど、魔族用に聖を入れてあるから・・・
{ギャーーーーーーーーーー。}
{いったあああああああい。}
こうなる。
「ね、ねぇ。これ大丈夫なの?」
と矢木さんが聞いてきた。他のみんなも顔色が戻ってきて絶句している。
「大丈夫。彼らは魔族だし、これ弱だから。」
「・・・これで弱なの。」
何故か、震える声で言われてしまった。
「さて、質問に答えてくれる?」
再度の質問だ。
{お。俺たちはこのくらいで負けたりは}
「じゃあ、中にする?それとも大を飛ばして特大?それとも・・・」
{わ。分かった、こ、答える。答えるから。}
うん。素直だね。何故か後ろから怖がられている気がする。
「じゃあ、質問。正直に答えてね。答えなかったら・・・。」
{こ、答えるに決まっているだろう!}
{ちょ、あんたなに言って}
{お・ま・え・は・だ・ま・っ・て・い・ろ。}
{フガフガ。}
{さて何でしょうか?}
何故か丁寧語になった。
「なんで魔族や魔物がこの世界にいるの。」
{それはですね、勇者パーティーの姫様がこちらの世界に来たんですね。}
え?
{それに乗じて魔王様の欠片がこの世界に来て、魔物を生み出して復活しているんですよ。}
衝撃的だった。まさか原因があいつら勇者パーティーのせいだったなんて。
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